牧場主、レーヴェン
ある日の何処かの牧場。
1人の男性が呪われ、限られた命の運命を告げられる。
平原の緑一面が広がる牧場、グローン牧場。
私の名はレーヴェン・ジーナ、この牧場の跡を継いでいる私は今日も羊の毛を刈ったり、馬や牛、鶏、さっき言った羊が過ごしてる小屋の掃除などの仕事をしていた。
妻のへロン・ジーナと何ヶ月か前に結婚し、2人でこの牧場の維持をしている。
子供はまだ出来てないが、ヘロンは「いつか欲しいわね」とフフッ笑っており、私も子供の顔を見たいので、「だな」といつか作ろうと思っていた。
平原で今羊の毛を刈り終えると、丁度ヘロンが
「こちらも終わったわよ〜」
と牛小屋から右手をこちらへ振って元気に出てきた。
ヘロンは私と同時進行で牛から乳牛を搾り取っていた。
今本当に頼れる妻だ。
たった6ヶ月でここまで出来るようになるとは思えなく驚いていた。
そう6ヶ月前の事を思い出し、少し笑っているとヘロンは何か察して、「何笑ってんの〜?」といつの間に私の方へ来ており、少し怖い感じの笑顔を向けていた。
流石に恐ろしかったので、私は「な…なんでもない」と誤魔化した。
ヘロンは私の隣に座り、
「…ほんとここは平和ね」
と言い、その薄い茶髪の長い後ろ髪が少し風に煽られる。
微かに良い匂いが私の鼻に入り、ドキッとするが平静を保つ。
「…うん、私はこの牧場の平和が一番好きで跡を継いだんだ」
と私はこの牧場の跡を継いだ理由を話す。
それにはヘロンは
「分かっているわよ。何度も聞いたわ」
と言ってくる。
まさか跡を継いだ理由を何度も言ったことに私は驚き、「え!?何度も言ってたのか私!?」と驚いてしまった。
そんな驚いた私の顔をヘロンは面白がり、
「結構言ってたわよ〜だけど、その分この牧場が大事なの伝わるわよ」
と微笑んでいた。
ヘロンにそう言われた私は恥ずかしくなり、顔を逸らす。
そんな私の反応をヘロンは可愛いと思ったのか笑っていた。
そんなやり取りの中、牧場の近くを通っている住人の話し声が聞こえ、自然に耳に入る。
「魔獣がこの村の森によく出没するのは本当か!?」
「ああ、たまに2〜3匹が入ってくる事あったが、何故か日に日に村へ入ってくるのが増えてきてるんだ。だから村長はこの近くの森にいる魔獣の一掃を王国へ向けて、討伐隊の要請をしたんだって話だ。」
「それは早く来てほしいだな」
と2人の男性のやり取りが聞こえた。
その話にヘロンは怖くなり、「…大丈夫よね」と不安そうな顔をしていた。
不安そうな顔をさせたくないので私は「大丈夫だよ」と言い、安心させる。
この牧場はワルズ村という名の村と接しており、平原の下にはすぐに村があり、2〜3匹の魔獣なら討伐出来る程の実力がある村だ。
そんな自衛が出来る村なので、こうして牧場の仕事を集中して挑めるから安心出来ている。
ただつい最近、魔獣がこの森でかなり多く発生している事は良く聞いてたので、流石に不安な気持ちもあるが、早く討伐隊が来てくれる事を祈っていた。
気付いたら村の2人の男性は話し終えると戻っていた。
こちらも十分休んだからまた働こうとした。
そんな時に牧場の一匹の馬がヒヒン!!という悲鳴みたいな鳴き声が聞こえた。
それには私とヘロンは驚いてその馬の方へ視線を向けると、ある一匹の魔獣が馬を襲おうとして、馬は必死に逃げていた。
あの血が被ったような毛色、普通の狼よりも鋭い爪、間違いない。
「ブラットウルフ」だ。
彼らは集団で狩りをする魔獣だが、何故か一匹で馬を襲っていたのは気になるが、私は馬を助けようと、地面に丁度いい大きさの小石を持ち、それを投擲する。
投げた小石は見事にブラットウルフの頭へと当たり、キャンという鳴き声をあげ、こちらへ視線を向けてきた。
私はすぐにヘロンへ
「私が惹きつけるからヘロンは早く馬を助けろ!!」
といつもの丁寧口調が忘れる程な指示をする。
それにヘロンは私の事を心配したが、まず馬を助けようと思い、「分かったわ!」と動いてくれた。
こうして惹きつける事が出来たものの、流石の魔獣相手に逃げ切れるか分からない、だけどやるしかない。
私はヘロンとは逆の左側へ走り出し、ブラットウルフを惹きつける。
だが、私が全力で走っても相手は魔獣、あっという間に追いつかれ飛びつかれた。
飛びつかれた勢いで背中を地面に大きく打ち、目の前には私に噛み付こうとするブラットウルフ、不味い!!と私は感じ、左腕をブラットウルフの口へ押し込んだ。
押し込まれた事でブラットウルフは左腕を噛み付く。
「ああああああ!!」
噛み付かれた左腕から血が流れ、魔獣の牙が左腕を貫く激痛を感じる。
それ以外にブラットウルフの牙から何かしら流れ込んでくる不快感も襲ってくる。
そんな苦しみから逃れようと噛み付かれてない右手で使える物を探し、右手全体に収まる石が丁度見つけ、咄嗟に私は右手でその石を掴み、ブラットウルフの左目へ向けて思いっきりぶつける。
左目を潰されたブラットウルフはその痛みにキャンと鳴き、噛み付いていた右腕を解放した。
その隙に今度は私がブラットウルフの上に乗り、その顔面に向け、両手で石を持ちながら叩きつけた。
やらなければやられる!と私は感じて、何度も叩きつけると、ブラットウルフはやがて痙攣し、そのまま動かなくなった。
私は初めて魔獣を倒したとはいえ、生きるか死ぬかの戦いで身体全体は震え上がっていた。
「レーヴェン!!」
と後ろからヘロンが私を呼ぶ声が聞こえ、近づいてくるのを感じた。
それに私は振り向うとするが、左腕から激痛が走り、息をするのが難しくなり、そのまま地面へと倒れ込んだ。
遠退く意識の中、ヘロンが私の名を必死に呼んで、身体を揺らしている。
今身体を動かす事が出来ない私は、ヘロンに余計な心配をかけてしまったなと思い、目を閉じた。
「登場人物紹介」
レーヴェン・ジーナ
この作品の主人公、父から牧場を引き継いで、しっかりと牧場の仕事をしていた。
ある日、一匹の魔獣の噛みつきで左腕を負傷、負傷だけでよかったが、後なら悲惨な出来事に遭う。
26歳の男性で、細身だがしっかりと筋肉がついており、髪型はウルフカットの少し黒味がかった赤色である。
ヘロンとは村から良く牧場へ来てくれた女性で、そこから会話を重ねて仲良くなり結婚した。
ヘロン・ジーナ
23歳の薄い茶髪長髪の女性。
レーヴェンと結婚する前は村の娘だった。
最初の出会いはヘロンが牧場へ興味を持って向かい、レーヴェンと知り合った。
そこからやり取りをし、レーヴェンと結婚する。
明るい女性であり、その明るさにレーヴェンは惹かれた。