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夏の夜のクリスタルレイン  作者: イリ―


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情報をもたらした者

 わたしは昨夜出会った島野さんとの会話を反芻(はんすう)して朝を迎えた。

 彼女が口にした言葉


『臆病者の理屈』

 そのことは考えればまだ分からなくはなかったが、『(ゆが)んでいる』というその意味はどれだけ考えても分からなかった。(むし)ろわたしは多くの意見を採り入れ、その中にある正しい回答を目指し生きてきた自負がある。そのどこに歪みがあるというのか、どれだけ考えても思い至ることはできなかった。

 そして、彼女の言葉で何よりも気になる言葉があった。


 兄が生きている。

 そう彼女は言った。


 あの時、彼女はわざと沙耶(さや)ちゃんになりきって演技をしていたから信憑性はどれほどか定かではない。口から出任せを言ったに過ぎないのかもしれない。しかし、そうだとしても腑に落ちない。なぜ彼女は沙耶ちゃんについての情報を持っていたのだ?


「私は沙耶なんてひとは知らない」島野さんはあのときそう言った。

 嘘だ。

 彼女は嘘を吐いている。

 一体どこでその情報を得た?


 村人から聞いたというのはあり得ないだろう。もしそうなら彼女と接触した村人がいるはずだし、もし接触していたのならこの小さな村で話題にならないはずが無い。それほど沙耶ちゃんと島野さんは似ている。彼女と沙耶ちゃんの幽霊と結びつける者はいるだろうし、そうなれば、そもそも沙耶ちゃんの幽霊などという噂が生じるはずは無いのだ。変装か何かで自分で調べた線もあるが、そんな事をすればかえって目立つ。

 だとすれば、現実的なのは第三者が沙耶ちゃんの情報を与えたケースだろう。

 考えてみればあの時、島野さんは前にも同じ反応をされたというようなことを言っていた。わたしはてっきり村人が島野さんの姿を見て同様の反応をしたものだと思ったのだが、それでは先の理屈と矛盾する。

 村人は彼女を島野さんだと()()()()()()()()()のだ。

 ならばわたしと同じような反応をした第三者がいたことになる。

 例えば、それが村から出て働いている誰かだったとしても疑問が残る。

 村の人間のつながりは思いの他強い。各所に散った村民のつなぎ役のような役割を買って出ている章正(あきまさ)の存在も大きい。村の小さな噂でさえも都心部にいる私のところまで届いているほどだ。ならば、もし外部で島野さんに会った者がいたとしてそれが全く伝わらないのも()に落ちない話だ。

 だが、もしも、その第三者が章正やその他の誰とも一切の関わりを持たずに生活を送り、それでいて沙耶ちゃんの情報を持っているのだとしたらどうだろうか。


 それがもし兄だったとしたなら。


 考えすぎなのかもしれない。

 だが、(いず)れにしても、わたしはもう一度彼女、島野真奈に会わなければならないと感じていた。



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