灰色の夢
あたしは海岸に立っていました。
薄曇に空を覆われた海は閑寂としています。
寄せては返すさざ波は音さえ聞こえません。
灰色の空。
灰色の海。
灰色の世界。
生き物の気配もないその場所はただただ静かに、ある種の神聖さも湛え、まるで一枚の絵画のように目の前にありました。
あたしは砂浜を歩きました。海岸を挟んだ海は凪いでいます。その先の景色は見えません。
しばらく歩くと砂浜に何か物が打ちあげられているのが見えてきました。
破片。
五十センチほどの金属でできた黒い破片が引き千切られたように三角形にゆがんでいます。その他にも何かのチューブやガラス片のようなものもあります。
そこから先へと目を向けると、段々その数は増え、進むにつれ大きくなっていきます。
それらの破片がまるでオブジェか何かのようにも見えました。
乱立する破片の中にぽつんと立つ女性の姿がありました。
そのひとは海の方をただじっと見つめています。
その視線の先を追うと船が見えました。
しかし、船は浮かんでいません。
船体を水面下に沈めて舳先だけを天に向けています。
プロペラが二つあるヘリがその上を旋回しながら飛んでいました。
次の瞬間、ヘリからワイヤーを伝って人が海に下りたのが見えました。
いけない。行ってはいけない。
何故そう思ったのか。あたしは叫んだのですが、声は出ません。
海岸の女性が一歩だけ前に進みました。
泣いていました。
そして、彼女は両手で顔を覆って崩れ落ちたのです。




