No.1 ひのきのぼう
女神さまー。ご報告です。
「どうしましたか?」
試行文明95ナーロッパ08で問題が出ています。
「ほー、どんな問題ですか?」
先日のパッチで異世界転生者全員にヒノキの棒スキルを付与しましたよね。
そのスキルで問題が出ています。
「ヒノキの棒を無制限に出したり消せるスキルですね。それが何か?」
まず、経済に問題が出ています。
転生者全員が無制限でヒノキの棒を出せるようになったので
ヒノキの棒の価格が著しく低下し、タダ同然となっています。
「そこは想定内ですね。あまり問題ではない様に思われますが。」
はい。燃料の価格もかなり下落していますが、致命的な問題ではないとは思われます。
ただ、もし直されるのでしたら、一日に出せる本数を制限されたほうがよいかと。
「なるほど、本数制限はありかもしれませんね。」
「はて。概ね意図通りですね。異世界転生者に燃料と武器に困らなくなるというのは良いと思うのですが。」
はい。それで発生している致命的な問題は、世界のパワーバランスが取れなくなっていることです。
「ほう。どういうことでしょうか?」
こちらのグラフを御覧ください。
「ほー、魔王死亡。魔王軍ほぼ壊滅。魔物もほぼ全滅。戦争、人対人の殺人件数の増加。」
「一週間で!?元の世界から見る影もありませんね。なぜそうなったのでしょうか?」
結論から申しあげますと、ヒノキの棒スキルの殺傷能力が高すぎるからです。
「ほう?あれは攻撃に使えたのですか?」
はい。女神様。ヒノキの棒を生成する際の仕様はどうされましたか?
「特に設定していないですね。使用者が指定した空間に対して、
無条件でひのきのぼうを生成するようにしています。」
無条件というのは良くなかったかもしれません。こちらを御覧ください。
「転生者と魔王の戦いですかね。ほうほう」
・・・戦いといいますか、一方的な暗殺という表現が正確かと思われます。
転生者が千里眼の薬を飲んでいる様子が画面に映る。
「ほー千里眼の薬で魔王城を遠く離れたところから透視して・・?」
次の瞬間、魔王の体全身を無数のひのきの棒が貫き、すぐに消失した。
「え、ひのきの棒が・・?魔王から生えてきた?」
はい。このスキルは、指定した場所にある物を無条件で消し飛ばします。
その後、消し飛ばした空間にひのきの棒が出現します。
ですので、ガード不可かつ無条件の貫通攻撃となります。
「えぇ・・・・・」
「じゃあ千里眼の薬飲んだら、転生者なら誰でもガード不能の貫通攻撃を超長距離から出せるってこと?」
左様でございます。
魔王は粉々になり、消失した。
側近は何が起こったのか微塵も理解出来ておらず、狼狽えている。
「うーん・・駄目だねこれは。転生者が強すぎますなぁ。」
「ちなみに絶対防御魔法と判定がカチ合ったらどうなるのでしょう?」
絶対防御魔法ごと殺傷されます。
「えー絶対防御魔法じゃないじゃん」
絶対防御魔法が付与されている空間ごと消失判定がなされるので、防御魔法も無意味と思われます。
「やっちゃったー・・・ごめんなさい・・。設計ミスですね・・。」
いえ。今後どうされますか?
「一旦このパッチを当てる前の世界に戻しましょう」
ロールバックですね。ひのきの棒パッチはどうされますか?
「ひのきの棒は使用者の50cm以内に出現、無条件出現ではなく、
指定の場所に物体がある場合出現できないようにします。」
「えーと、あと本数は一日5本にします。」
承知いたしました。