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第66章 全と個と

――守るべきは、個か、全か。


二階堂ランドの惨劇を前に、NPSO本部もまた、決断を迫られていた。

国家の存亡を盾に冷酷な選択を進めようとする徳川総裁と、なおも人々の未来を信じ、命を懸けて抗おうとするL。


己の信念と歴史の重みを背負いながら、Lは決意する。

「個を捨てて全を守る」という伝統に抗い、全と個、両方を救う道を選び取るために。


彼が背負うのは、かつて乱世を生き抜いた先祖たちの誇り。

そして、今この瞬間、苦しむ仲間たちの命の重みだった――。

――NPSO(国家保安機構)本部・ 執務室


執務室の窓の外では、既に夜の帳が下りていた。

だが、Lの心は、静寂とは程遠い焦燥に包まれていた。


モニターには、二階堂ランド方面へ向かう応援部隊の追跡ログが点滅していた。

その一角に表示されている、UK(恭二)AK(柑奈)のコードネーム。


「……どうか、無事でいてくれ。そして……麻倉博士を……」

Lは手元の通信パネルに手を伸ばし、暗号化通信回線を開く。

「こちらL。現地の状況を報告せよ。UK、AK、応答願う。」


――ザー……ピピッ……ザザザ……


返ってくるのは激しいノイズだけだった。

Lは眉をひそめる。

「……通信障害か?」


そのとき、執務室のドアが勢いよく開かれた。

「L!大規模な通信障害が発生した!」

「あかつき市、二階堂町、白影市を中心として通信がつながらん!」

入ってきたのは、保科と、NPSO総裁・徳川だった。

「足利くん!」

保科が焦燥の面持ちで声を上げた。

「敵がEMPを使用したようだ!一体、何が起きている!?」


徳川はゆっくりと歩みを進めながら、重々しい声で告げる。

「……足利くん。このままでは我々……いや、日本の存亡に関わるぞ?」


Lは即座に立ち上がり、頭を下げる。

「お待ちください、総裁。まだ時間は残されています。UKとAKが、必ず道を切り拓いてくれます!」


だが保科は冷たく言い放った。

「問答無用だ……!」

徳川と保科は背を向け、無言で執務室を後にした。


――ビーッ! ガシャン!

 

静まり返った部屋に、電子音だけが残る。


しばらくして、控えめなノック音が響いた。

「……L?」

ドアの隙間から顔をのぞかせたのは、一人のラボコートを羽織る若い女性だった。

「ドクター鍋島か?」

Lが目を細める。


鍋島は廊下の左右を確認し、静かに扉を閉めた。

「……二人と連絡が取れないのですね?」

「……そうだ。このままでは、徳川総裁は最終手段に踏み切るかもしれん。」


鍋島の目が鋭くなる。

「私が出れば……」

Lは即座に遮った。

「いや、私が行く。総裁に気づかれぬよう、密かに。」


「しかし……!」

鍋島の声に、Lは低く言い聞かせた。

「君は総裁から、“ファウンデーションには関わるな”と命じられているはずだ。」

鍋島は唇をかみしめ、そして静かにうなずいた。

「……わかりました。同志のエージェント数名を同行させます。」


Lの口元に、わずかな微笑が浮かぶ。

「助かる。……私の留守を頼む。」

「……はい、必ず。」


――そして、わずかの時間が過ぎた。


NPSO本部地下の車庫。


Lはコートに身を包み、暗がりの中、待機していた。

ヘッドライトを消した複数の車両が、静かにエンジンを回し、彼の命令を待っている。


Lは心の中で、静かに呟いた。

「義昭公の名にかけて……私は必ず“全”と“個”をつなぐ橋となる……」


――ブロロロロロ……


そして、闇の中へ。

車列は音もなく、東京の静寂を切り裂いていった。

「二階堂ランドへ向かえ!」


―そして、その頃の執務室―

 

鍋島は執務室で一人思いに耽っていた。

「行ったわね……」


少しの沈黙が場を支配した、だがすぐに彼女は言葉を紡ぐ。

「二階堂町でテロとか……許せない!」

そして、決意の言葉で独白した。

「負けられない奴がいるんだから!」

第66章「全と個と」では、物語の縦軸となる「歴史」「信念」「選択」というテーマが明確に浮かび上がりました。

国家を守るべき立場にあるNPSO。

だがその内部でも、命をどう扱うか、個と全をどう天秤にかけるかで、考えは割れています。


Lの行動は、「国家の論理」を超えて、「人の論理」を貫こうとするものです。

彼が過去と未来を背負い、葛藤の中で選んだこの決意は、やがて物語の流れを大きく変える鍵となっていきます。


一方、鍋島もまた、それぞれの立場で静かに、しかし確かに"戦う覚悟"を固めました。

仲間たちの想いが、少しずつ一つに繋がろうとしています。


次章から、いよいよ「個々の命」と「国家」という巨大な枠組みが真っ向から衝突します。

運命の歯車はさらに加速していきますので、ぜひご期待ください!

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