第49章 青春と陰謀の交差点
こんにちは。休日をいかがお過ごしでしょうか?
作者のサブサンでございます。
いつも「私立あかつき学園 命と絆の奏で」をお読みいただき、ありがとうございます!
第49章「青春と陰謀の交差点」では、ついにひなたたちとUK、AK、真緒、のぞみの対峙が本格化します。
互いの思惑が絡み合う中で、明らかになるのは探偵と名乗る二人の"秘密"、そして小河佑梨を巡る謎……。
しかし、そんな緊迫した状況の中、羽柴兄妹の突飛な発想が事態を予想外の方向へと導いていきます!
「遊園地で親睦を深める」という唐突な展開に、一同はどう対応するのか?
陰謀と青春が交差する、まさに異色の回となっています。ぜひお楽しみください!
静かな裏庭。昼間の喧騒が嘘のように、木々の葉擦れの音と微かな風の気配だけが漂っていた。
ひなたたちとUK、AK、真緒、のぞみの一団が向き合い、張り詰めた空気がその場を支配していた。
ひなたが鋭い視線を向けながら一歩前に出る。
「さっきから小声で何を話してるの?」
その言葉にUKは肩をすくめ、落ち着いた様子で答える。
「企業秘密だ。」
ひなたは納得がいかない表情でさらに詰め寄る。
「企業秘密って、探偵が使う言葉じゃないよね?」
その指摘にAKが一瞬だけ口を歪ませるが、すぐに微笑んで応じる。
「探偵の仁義って奴ね。大事な依頼内容は誰にも話せない……。」
最後の部分は小声で呟き、ひなたたちに聞こえないようにする。
「……本当は違うんだけどね……。」
京子が不審な目を向けながら問い詰める。
「探偵って言うけど、何を探してるの?それとも、探してるふりをしてるだけじゃないの?」
その言葉にUKは少し表情を曇らせたが、何事もなかったように答える。
「君たちが知る必要はない。」
「必要はない……ね……」
京子も反論しようとする。
しかし、ひなたが手で静止する。
「私たちは確かめたいことがあってここに来たんです。小河さんが何かから逃げていた理由……それを知りたいんです!」
ひなたの言葉には揺るぎない決意が込められていた。
UKとAKは無言で視線を交わす。
二人の間で、何か見えないやり取りが行われているようだった。
UKが小さな声でAKに囁く。
「悟られてはいけない。このまま探偵で押し通すぞ。柑奈!」
AKは少し眉をひそめながら、諦めたように返事をする。
「仕方ないわね……。コードネームは無しね……。恭二おじさん。」
京子が鋭い視線を向けながら問い詰める。
「今、何を話してるの?」
「だから言ったろう。企業秘密だ。」
恭二は冷静な声で言い切り、ひなたたちに一歩近づく。
ひなたは少し後ずさりしながら、強い声で食い下がる。
「それでも私たちは知る必要があると思う!渡瀬先生も、理事長も、全てが繋がっている気がするの!」
「おいおい……俺たちの事情にまで首を突っ込むつもりか?」
恭二はため息交じりに肩をすくめる。
「それじゃあ、こっちの言い分を聞いてくれる気はなさそうだな。」
柑奈が恭二に目配せをする。
「こんなところで話し込んでても仕方ないんじゃない?あたしたちはあたしたちでやることがあるんだから。」
その言葉に京子が声を上げる。
「何を調べてるの?それくらい教えてもいいでしょ?」
柑奈は少し思案するように腕を組み、恭二を見上げた後、諦めたように口を開いた。
「大事なものを探してる。それだけ。」
「大事なもの?」
京子が食い下がるように問い返すと、柑奈はそれ以上何も言わずに視線をそらした。
ひなたがさらに食い下がる。
「麻倉さん!延藤さん!このお二人との関係は?」
一同の自然が真緒とのぞみに集中する。
真緒は冷静な顔のまま返す。
「事件が……何かにつながっているのは、わかりましたわ。」
のぞみも続ける。
「まあ……今は話されへんわな。」
柑奈が両手を広げて、したり顔で言う。
「そういうこと……話せないわ。」
恭二が鋭い視線をひなたに向ける。
「そういうことだ……。」
一同は沈黙する。風が木々を揺らす音だけが、静かにこだまする。
そこで一番に口を開いたのは……香菜子だった。
「カナは難しいことわかんないけどさ。仲良くなればいいんじゃない?」
一同は呆気に取られ、香菜子を見る。
大海はうなづき、香菜子から視線を変わるがわる一同に向ける。
「そうだよな、俺たちが追ってるものは、つながりがあるみたいだし……。」
亮が驚きの表情で言う。
「おい、大海。お前何を……。」
冴姫も驚きを隠せない。
「大海……カナ……。こんな時に?」
他の一同も、突然の提案に驚きを隠せなかった。
「……」
そこで、ひなたが口を開く。
「って……どうやって?」
香菜子が笑顔で言う。
「お互いを知るには、本音を出し合う事!ねっ?お兄ちゃん?」
大海が軽妙な笑顔で続ける。
「難しいことばっかり考えても、解決しないぜ?ここはお互いを知るって事から始めない?」
恭二は大海と香菜子に視線を移しながら、内心で困惑していた。
「いや……こいつら、バカなのか?」
柑奈も呆気に取られ、目を白黒させる。
「言ってる事は一理あるけど……。」
京子はため息をつき、つぶやいた。
「やっぱり、チャラ兄妹ね……」
大海と香菜子が声を揃えた。
「羽柴だよ!」
一同の間に微かな笑いが漏れる。
ひなたと恭二が同時に口を開いた。
「どうするの?」
「で……どうやるんだ?」
大海は笑顔でうなづく。
「リラックスしようぜ!」
香菜子も無邪気に言う。
「遊園地行こ!みんなで!」
一同は驚愕する。
「はぁーっ!?」
ひなたとのぞみが呆れながら大海と香菜子に問いかける。
「なんで、そうなるの?」
「あんたら……アホちゃうか?」
香菜子は二人の問いかけに笑顔で反応する。
「カナね。小さい頃、ダチたちとコーヒーカップに乗った時、みんな仲良くなったんだよね!それから、ナナやレナ、マキたちとマブダチなんだよねーっ!」
大海は少し呆れた表情に変わる。
「カナ。そんな単純な話で……まぁいいけどよ。」
恭二も驚きを隠せない。
「俺たちはそんな暇じゃないんだ。そもそも、遊園地に行くなんて調査の目的から外れてるだろ。」
柑奈もうなづく。
「意外過ぎて、ビックリだわ……。」
亮と冴姫も顔を見合わせる。
「おい、明智さん。この二人はずっとこの調子か?」
「……まあ、長い付き合いだしね……けど、今回は私もビックリだわ……。」
のぞみは呆気に取られながらも、真緒に振り返る。
「真緒?どないする?」
「……面白そうですわね。お互いを知る事で、新しい発見があるかも知れませんわ。映画より面白そうですわ。」
「真緒まで!ミッションインクルージョン3はどないすんねん!」
ひなたは疑問の表情を崩さず京子に話しかける。
「……遊園地……それで本当に解決するの?」
「解決するわけないと思うよ……けど……行くしかないのかな……手詰まりだし……。」
恭二の視線が、京子に向けられる。
「この娘が……本当に……」
柑奈が耳打ちする。
「だったら……乗ってみるのも一策かもね……。」
恭二は少し考え、一同に言う。
「少し待ってくれ……上司に許可を取る。」
そして、スマートフォンを取り出し、どこかへ連絡を取り始めた。
柑奈は小さくつぶやく。
「L……ね。」
香菜子が無邪気に言う。
「なんとでもなるじゃん!みんなで楽しもーっ!」
大海も半ば呆れながらも、同意する。
「ま……何かヒントが得られるかもしれないしな……。」
また、風が吹き抜けた。
一同はお互いの顔を見合わせ、恭二の返答を待っているのだった。
恭二は通話先に話し始める。
「もしもし?恭二だ……。土師恭二……。学生たちと接触しました……事件の……。」
一方、香菜子は素早くスマホを取り出し、素早く操作を始める。
「お兄ちゃん。二階堂ランドで良い?」
大海が心配そうに返す。
「いいね。けど、これだけの人数……チケット取れそう?」
「ナナがニカランの社長令嬢だしさ……大丈夫だよ。」
亮と冴姫は顔を合わせ、困惑を強くする。
「大海とカナちゃん……機動力高いな……」
「ストライカーの亮さんもビックリね。」
「明智さんも、得意はラリーだろ?」
真緒とのぞみも顔を合わせる。
真緒は笑顔で言う。
「二階堂ランド……子供の時以来ですわ。今の私なら……。」
「真緒!なんで乗り気なん?よーいわんわ!」
ひなたと京子は顔を見合わせ、目を白黒させる。
「やっぱり行く?京子?二階堂ランド?」
「まあ……最近、緊張しっぱなしだしね……ニカラン……私は初めてだけど……。」
そこで香菜子がスマホを掲げて高らかに宣言する。
「チケット取れたよーっ!ゲット!」
一瞬の間が空き、恭二も静かに口を開く。
「上司の許可が取れた……付き合おう……。」
一同が驚く中、ひなたがつぶやく。
「決まっちゃった……。まあ……息抜きも良いか……。」
第49章「青春と陰謀の交差点」をお読みいただき、ありがとうございました!
今回の章では、探り合いの緊迫した空気の中で、羽柴兄妹が独自の視点で事態を打開しようとする様子が描かれました。
一見すると無謀とも思える遊園地での交流ですが、果たしてこれが何らかのヒントに繋がるのでしょうか?
また、UK(恭二)とAK(柑奈)がひなたたちと関わることで、彼ら自身の秘密にも変化が訪れるかもしれません。
物語が動き出すこのタイミングでの"息抜き"が、どのような影響を及ぼすのか?
次回もぜひ、お楽しみに!




