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第47章 対峙と邂逅

いつも「私立あかつき学園 命と絆の奏で」をお読みいただき、ありがとうございます!

すっかり寒くなりましたが、読者の皆様がいかがでしょうか?


今回は、第47章「対峙と邂逅」では、ひなたたちとUK、AKの対立がついに正面から描かれます。

失踪した小河佑梨の謎を追う中で浮かび上がる数々の手がかりと、新たに明かされる因縁。

京子とUK、AKとの関係にも衝撃的な繋がりが示唆され、物語はさらなる深みへと進みます。

それぞれの思いが交錯する瞬間を、ぜひ見届けてください!

木々が風に揺れる音だけが響く裏庭。どこからともなく生ぬるい風が吹き抜け、二つのグループが向き合う。静寂が場を支配し、一瞬の間が生まれた。


ひなたが一歩前に出て、意を決したように言葉を切り出す。

「私は……一人の女の子を探しています。」


その言葉に、UKが僅かに眉をひそめた。

「それは……数日前、校庭で言っていたことだな。」


AKが冷淡な口調で続ける。

「それで?その子を探して、ここに来たってこと?」


ひなたの隣に立つ京子が、拳を握りしめ、震える声で言った。

「私とひなたは……小河さんの奏でるバイオリンに感銘を受けたの。でも……彼女は死んでしまった……。」


その言葉に、真緒が静かに頷き、重々しい声で答える。

「存じ上げておりますわ……。霧島橋でひき逃げ事故に遭われた……とても悲しい出来事でしたね。」


のぞみが少し眉をひそめ、低い声で付け加えた。

「亡くなったって……校内放送でも言ってたわね……。」


UKは冷たい視線をひなたたちに投げかけながら、肩をすくめた。

「死んだ人間を探しているのか?悪いが、それじゃ話にならない。」


AKが皮肉めいた笑みを浮かべ、軽く首を振る。

「本当にバカバカしい話ね……。」


京子が鋭く反応し、一歩前に出た。

「でも、見たんです!この裏庭で……小河さんが歩いているのを!」


その言葉に、UK、AK、真緒、のぞみが目を見開き、驚きの表情を浮かべる。


「死んだ人間が……歩いていた?」

UKが低く押し殺した声で問いかける。


「そんなこと……ありえないでしょ?」

AKが舌打ちしながら呟くが、その声にもわずかな動揺が滲んでいた。


ひなたが目を伏せながら静かに語り出す。

「まだ、確信はありません。でも、それを確かめに来たんです。そして……あなたたちが、ここにいる。」


真緒が一歩前に出て、冷静な声で問いかける。

「つまり……私たちが何かを知っている……と?」


京子が真っ直ぐな視線で真緒を見据え、即答する。

「そうです。」


その瞬間、亮がUKとAKを鋭い目で睨みつけた。

「そもそも、二人は何者だ?どうして裏庭にいる?それに……学園の関係者とも思えない……どんな関係なんだ?」


冴姫が冷静な口調で、短く切り出す。

「小河さんのひき逃げには……私の父の会社から盗まれた車が使われたの。」


それを受け、大海が真剣な表情で言う。

「しかも、犯人はまだ捕まってないんだよな。」


香菜子も大海に続き、口を開いた。

「それだけじゃないよね。渡瀬先生の突然の休職……あれも、何か関係があるんじゃない?」


冴姫の顔に影が差した。

表情が躊躇いに変わる。

「……私……。」


しかし、迷いを否定するかのように、大海と香菜子が冴姫に視線を向ける。

「冴姫…………お前のせいじゃない。」

「サキ姉!」


冴姫はわずかに微笑んで答えた。

「大丈夫よ。大海、カナ。私はお父さんを助けたい……それだけだから。」

大海と香菜子はうなづいた。


そして、ひなたが強い声でその場に響くように言った。

「渡瀬先生は、小河さんの音楽を大切にしていました。この一連の事件……全部が繋がっている気がするんです!私は、それを確かめたい!」


京子が補足するように力強く言葉を続ける。

「確証はありません……でも、だからこそ調べる必要があるんです。」


裏庭に生ぬるい風が吹き抜けた。春とは思えないその風が、一同の間に張り詰めた空気をさらに際立たせる。


真緒が少し考え込むように視線を巡らせ、静かに呟いた。

「……なるほど。これは……何かが繋がっている可能性がありますわね。」


のぞみが真緒の言葉に驚いた表情で反応する。

「真緒?どういうことやねん?」


UKは少し目を伏せ、内心で焦りを押し隠しながら考え込む。

(死んだ人間が……?それに人工衛星……まさか……。)


ひなたも、自分の中で浮かび上がるいくつもの出来事を繋ぎ合わせようとしていた。

(小河さんの事件……渡瀬先生……冴姫さんのお父さんの会社から盗まれた自動車……。)


その瞬間、ひなたとUKの内なる声が同時に響いた。


(なにがあるっていうの……?この学園で……何が……!)


(麻倉妙子……ファウンデーション……全てが繋がっているのか……?)


二人の視線が交差し、一瞬の静寂が再び場を支配した。

葉擦れの音だけが、どこか遠くから響く。

緊張感はますます高まっていくばかりだった。


沈黙の中、ひなたが真っ直ぐにUKとAKを見つめ、静かに問いかける。

「あなたたちは……何者なんですか?」

 

そして、しばらくして真緒に視線を向ける。

「麻倉さん?この二人は?」


真緒はにこやかに応じる。

「ええ……。私とのぞみは……。」

のぞみが少し焦りを見せたが、一歩踏み出して言う。

「協力しとんねん!そういうこっちゃで……!」


UKは少し視線を伏せ、重い口調で答えた。

「だが……君たちに話せることは限られている。」


「限られている?」

京子が食い下がるように問い返す。

その瞳には揺るがない意思が宿っていた。


AKが少し視線を泳がせ、苦笑交じりに補足した。

「企業秘密なの。だから詳細は……」


ひなたは迷いのない瞳で問いかけた。

「それは……小河さんや渡瀬先生、霧島橋での事件に関係しているんですか?警察?それとも探偵さんか何かなんですか?」


一瞬の沈黙が場を支配した。UKの瞳にかすかな動揺が浮かぶ。

(この娘たち……もしかして……俺たちの求めているものに……)


UKは僅かに表情を曇らせる。そして、少しの間を置いて、重々しい声で答えた。

「お嬢さんの言う通りだ。俺は探偵だ。名は土師恭二(はぜ きょうじ)……。」


その短い言葉に、ひなたたちの表情が動く。

 

「本当に探偵?」

京子が怪訝な顔で問い返すと、AKが微妙に困ったような笑みを浮かべながら付け加えた。

「本当よ。私は柚希柑奈(ゆずき かんな)。学校周辺の調査をしている……アルバイト探偵ってとこかな。」


その説明を聞いても、亮は納得のいかない表情を浮かべ、視線を鋭くする。

「本当に……それだけなのか?探偵がこんな場所で何を調べているんだ?」


冴姫も冷静な視線を向ける。

「……裏庭で探偵が仕事をする理由なんて、普通は考えられないけど。」


ひなたは柑奈に目を向け、疑問を投げかける。

「柚希さんはアルバイトって言いましたけど……探偵のアルバイトなんて、そんな簡単にできるものなんですか?」


柑奈は一瞬口ごもり、少し視線を泳がせたが、すぐに冷静さを取り戻したように答える。

「それは……特別なルートがあるのよ。」


「特別なルート?」

香菜子が少し首を傾げて問いかけた。


柑奈は視線を鋭く戻しながら言い切った。

「探偵には探偵の世界があるの。あなたたちには分からないわ。」


恭二も鋭い視線を一同に向ける。

「俺たちは特定の調査対象を追っているだけだ。それ以上は言えない。」 


その言葉に、一同の間に再び緊張が走る。京子が少し唇を噛みながら口を開いた。

「でも……探偵っていうわりには、二人ともあまりに親しそうですよね。どんな関係なんですか?」


その問いに、UKの表情が一瞬曇る。

そして、彼は視線を外しながら答えた。

「……お前たちが知る必要はない。」


ひなたが一瞬後に強く叫んだ。

「それは、私たちが決める事です!」


その言葉が鋭く響き、UKがわずかに視線を逸らす。

柑奈も一瞬言葉に詰まったようだった。


「……俺たちは……。」

恭二が言葉を紡ごうとした瞬間、ひなたが彼の顔をじっと見つめながら静かに言った。

「土に師の土師さん……ですよね?」


その言葉にUKが驚いたように顔を上げた。

「そうだが……それがどうした?」


ひなたが微笑みを浮かべながら京子に視線を向けた。

「京子も土師なんです!」


その言葉に柑奈が一瞬硬直し、恭二の表情も驚きで強張る。


「なんだと……?」

恭二の声が僅かに震えているのを、ひなたは見逃さなかった。

「なにか?」

京子は少し驚いた表情を見せながらも、静かに言葉を続けた。

「珍しい名字ですけど……偶然ですね。」


その場に漂う空気がさらに重くなる中、京子が小さく呟くように言った。

「……でも、私……両親はいないんです。ずっと孤児院で育ったから……もしかしてって思うけど……そんな偶然、あり得ないですよね……」


その言葉に、恭二と柑奈の表情が一気に曇る。

京子が神妙な顔で、頭の髪飾りに触れながら言葉を続ける。

「この髪飾りだけが、私の唯一の手がかりなんです……。「両親が残したものだ」って……牧師様が……。」

 

恭二と柑奈は無意識にお互いを見つめ合った。


(……まさか……本当に……?)

恭二の心に湧き上がる後悔と焦燥が渦巻く。


(この子が……私の……おじさんの……?)

柑奈もまた、言葉を失ったように固まっていた。


その様子を見たひなたは、二人の態度に疑問を抱きながらも静かに問いかける。

「柚希さん、土師さん……やっぱり、何か隠しているんじゃありませんか?」


その問いに恭二は視線をひなたに戻し、少しの沈黙の後、重い声で言った。

「……俺たちがここにいる理由は……お前たちには関係ない。」


「関係ない?」

京子が目を見開き、鋭い声で問い返す。


「君たちは高校生だろう?俺たちが調査していることに首を突っ込むべきじゃない。」

恭二が冷静さを保とうとしながら続けた。


柑奈も口を開き、表情を作り直すように言葉を紡ぐ。

「そうよ。危険なことに巻き込まれる必要はないわ。」


しかし、京子は怯むことなく二人を見つめ、冷静に切り返した。

「でも……あなたたちには隠していることがある。そう感じます。」


ひなたが京子の肩に手を置き、頷く。

「私たちには確かめるべきことがあるんです。それを無視するわけにはいかない……。」


再び生ぬるい風が吹き抜け、葉擦れの音だけが場に響く。恭二と柑奈は無言のままひなたたちを見つめていた。


その瞬間、京子の髪飾りから放たれるかすかな閃光が、恭二と柑奈の視界をよぎる。

それは、二人だけが知る特別な意味を持つものだった。


(京子……やっぱり……!)

恭二の心に確信が生まれる。


(この子が……私の……)

柑奈は顔を伏せながら、心の中で何かに葛藤していた。


ひなたがもう一歩前に進む。

「私たちは確かめなきゃいけないんです。この一連の出来事が何に繋がっているのかを……」


言葉が裏庭に響く。恭二はひなたを見つめ返しながら、内心で思案していた。

(……話すべきか?だが……いや、まだ早い。だが、このまま隠し通せるとは……)


生ぬるい風が再び吹き抜け、葉擦れの音だけが遠くから聞こえてくる。

恭二は顔を上げ、ひなたの瞳を真っ直ぐに見据えた――。

第47章「対峙と邂逅」をお読みいただき、ありがとうございました!

今回の章では、ひなたたちの決意と、UK・AKとの緊迫したやり取りを中心に描きました。

京子の出生にまつわる伏線が浮上し、UKの動揺から過去に秘められた事実がうかがえます。

次章では、さらに核心に迫る展開となる予定ですので、ぜひ引き続きご覧ください!

皆様の感想やコメントもお待ちしています!

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