第3章 東京にて(2025年4月12日再改稿)
※2025年4月12日に再改稿を行いました。
※2025年3月24日に改稿を行いました。
今回の章は、物語の舞台があかつき学園を超えて、世界規模の陰謀に触れ始めます。
東京の高層ビル群に佇む国家公安機構(NPSO)の一室で繰り広げられる、人工衛星の謎の故障やテロ組織「ファウンデーション」への対策会議。
NPSOのエージェントUKとAKが、任務のためにあかつき学園へ向かうことを決意します。彼らの背後にある緊張感と秘密の繋がりが、この物語に新たな展開を迎えます。
東京の高層ビルが立ち並ぶオフィス街。とあるビルにある一室。扉にはエンブレムがかけられており、そこにはNational public safety organizetionの文字がある。
扉の向こうの執務室には緊張感が漂っていた。大画面のモニターには、世界各地で発生している人工衛星の故障状況がリアルタイムで映し出されている。
モニターの青白い光が3人の顔を冷たく照らし出していた。
そんな執務室にも人間臭いものが存在した。壁にひっそりとかけられたエンブレム……いや家紋だ。
「丸に二つ引両紋」
歴史ある足利家のものだ。
白髪混じりの男は椅子に座りながら、家紋を見つめていた。
「応仁の乱……我が祖先……」
しばらくして視線を2人に向けると、冷静な声で報告を始めた。
「現在、世界中で人工衛星の故障が相次いでいる。公式には原因が明らかにされていないが、我々の分析ではハッキングの可能性が高いと見ている。一部の人工衛星は、意図的にコントロールを奪われた痕跡も見られる。」
もう一人、サングラスをかけた男は眉をひそめ、質問を投げかけた。
「目的は何だと思う?今のところ、犯行声明もないし、狙いも不明だ。」
その時、茶髪のポニーテールの少女がパソコンの前に座り、キーボードを素早く叩いた。画面には複雑なデータが映し出されている。
「L、UK、こちらをご覧ください。人工衛星がハッキングされた際に、我らが、国家公安機構……NPSOの秘密衛星が不審な信号を感知しました。」
UKと呼ばれたサングラスの男は興味深そうにスクリーンを覗き込んだ。
「AK。その信号について、詳しく教えてくれ」
AKと呼ばれたポニーテールの少女はデータを整理しながら説明を続けた。
「信号は非常に高度な暗号化が……解析には一週間を要しました。しかし、発信元の特定には成功しました。ただし、犯人の正体や目的まではまだ解明できていません。」
Lと呼ばれた白髪混じりの男は真剣な表情で尋ねた。
「その発信元は?」
AKは一瞬躊躇したが、続けて答えた。
「日本です。郡真県のあかつき市からの信号です。信じられませんが……。」
UKは驚きの声を上げた。
「何を…?」
AKは静かに答えた。
「具体的な発信元は、私立あかつき学園からです。間違いありません。」
LとUKは互いにいぶかしげな表情を浮かべた。学園という特定の場所が発信元となっていることに、彼らは強い疑念を抱いた。
「ただの高校が?!」
「L、これが事実ならば、あかつき学園に何か重大な問題がある可能性が高い。調査の必要があると俺は思うが?」と、UKは決意を込めて言った。
Lは頷き、指示を出した。
「了解。あかつき学園の調査チームを編成し、直ちに現地へ向かえ。UK、AK、出動準備だ。」
AKは深呼吸をし、準備を整えた。
「了解しました。必要なデータはすでにダウンロード済みです。現地での連絡手段も確保しています。」
UKもサングラスを右手でかけ直しながら言う。
「頼もしいな。AK」
AKが笑って言う。
「また、そのクセ……。不安なの?」
「武者震いのようなものだ。」
AKは笑顔でうなづき、言葉を続けた。
「まっ……荒事は、おじさんが担当だしね。はい、これどうぞ。」
AKはUKに拳銃を手渡す。
「マルサーP99か……それに戦闘用ナイフ……」
AKは傍のドローンを手で触りながら言う。
「9㎜弾の16連発よ。マガジンも忘れずにね。」
「他のガジェットは?」
「現地で渡すわ。必要な時にね」
UKの表情が引き締まる。
「そうか……それと……」
「何?」
「おじさんはやめろ、任務だ。」
「はーい。」
AKは軽く答えた。
そして、腕時計のベゼルを回してうなづくと、もう一つあった腕時計をUKに渡す。
「ま、役に立つと良いがな……」
「立たない方がいいけどね……」
そう言いながら、バックにノートパソコンをしまいこんだ。
そして、AKはUKに視線を向ける。
その表情には何かの疑問が浮かんでいるようだった。
「この作戦に……ドクター鍋島は?」
UKが静かに応える。
「あくまでアンバサダーとして参加するってことだ。」
「ドローンと腕時計だけで?」
「後、スポーツカーは1台用意されている。どんな装備があるのかは説明は無しだ。」
「実戦で使って理解しろ……ってことね。」
「彼女らしいがな……」
Lはもう一度全員に目を向けた。
「二人とも、もういいか?ドクター鍋島の件は徳川総裁からの命令なのだ。」
目には追い詰められている焦りが見て取れた。
そして、矢継ぎ早に言葉を繋げる。
「UK、AK。この任務は非常に重要だ。迅速かつ確実に調査を進めろ。失敗すれば……。」
UKが訝しげな表情をLに向ける。
「失敗できないんだろう?他に応援は?」
Lの顔の焦りの色が増した。
「度重なるファウンデーションへの失策で、予算に圧力がかかったのだ。すまない。エージェントも何人か殉職している。」
そう言うと、沈痛な面持ちで、力無く視線を落とした。
AKがイタズラっぽく言う。
「なるほどねえ……徳川総裁からかしら?あのケチんぼ様……」
UKが言葉を続ける。
「失敗すれば、ケチんぼに更に予算を削りにかかられる訳か……まあ、俺たちだけでやるしかないな……」
Lが神妙な面持ちで告げる。
「ファウンデーションを何とかしないと、我々の存在が危うい。世界的なテロ組織だからな。誘拐や爆破テロに、経済操作……徳川総裁も問題視してるのだ。」
AKが皮肉をこめて言う。
「対処は丸投げ、手柄はケチんぼ様ね」
UKが静かにつぶやく。
「我らがケチんぼ様は暴君だな……」
Lは二人を見つめながら、NPSOの存在価値に思案を巡らせる。
「これ以上……失敗できない。下手すれば解散か……組織改変は免れん……」
Lが言葉を続ける。
「奴らはルーブル美術館での爆破テロと強奪。アフリカでは多数の傭兵を雇い入れている。それに、ランティア共和国での研究所襲撃。変わったところでは、数人の演奏家が誘拐されている。誰も帰ってこなかったが……。」
AKが目を見開く。
「なんでもござれね。まるでテロの百貨店。」
UKも皮肉をめいて言う。
「バーゲンセールでもしてるのか?」
AKの視線が再びモニターに向かう。
「奪われた人工衛星は、9台。オーディン、トール……これってコードネームですよね?」
UKが言葉をつなぐ。
「全世界を高速通信でつなぐ、世界樹計画。そのために作られた人工衛星たちだ。」
AKはうなづき、相槌を打つ。
「そうなのね。けど、実現はされなかったと?」
Lがうなづいて言う。
「運用コストが見合わなかったのだ。人工衛星同士から通信派をリレーさせるのには……」
「現在はどうなってるんですか?」
「通常の通信衛星として、運用されている。残る衛星は後一台……。」
「ラグナロク……ということですね。10台目の人工衛星……」
「その通りだ。」
執務室に少しの沈黙が流れた。
そして、Lがため息をつく。
「それよりも、今は早急に事件に対処するんだ。UKの戦闘力。AKのデータ解析。少数精鋭で行くしかない。」
UKが少し懐かしそうな顔をして言う。
「次郎なら……どうするかな……」
AKが顔をしかめる。
「次郎?誰?」
Lも何かを振り返る様に言う
「UKの元相棒だ。コードネームはgrandpa」暗殺が専門だった。退職したがな……」
UKが付け加える。
「俺の元相棒だ。幾人のターゲットを葬った。俺以上だ。今は牧師になってる。それからは会っていない……」
AKが感心しながら言葉を漏らす。
「元暗殺者で牧師……こわい……知らない人だわ……」
「AKが入職する前だからな……だが、恵美子の事は知ってるぞ」
「亡くなった叔母さんの?」
UKの表情が少し悲しげを帯びた。
「俺と恵美子の結婚式にな……次郎は……Lもな……」
Lはうなづいて、目を閉じる。
AKは神妙な面持ちを浮かべた。
「恵美子叔母さんと……おじさんの……」
そして、3人は沈黙する。
UKとAKは力強くうなづき合う。
そして、少しの間の後、Lが緊張の面持ちで言う。
「出動だ!」
UKとAKが声を揃えた。
「了解。至急向かいます」
UKとAKはその場を後にし、あかつき学園への調査に向けて出発した。彼らの決意は固く、新たな展開が始まろうとしていた。
NPSOの要請を受け、あかつき学園の秘密に挑むUKとAK。
彼らを取り巻く謎や使命に、過去の記憶や個人的な絆も浮かび上がり、単なる任務では終わらないことが予感されます。
次章では、彼らがあかつき学園でどのような真実に迫り、何を見つけ出すのか、物語はさらに加速していきます。
感想やコメントなどいただけると嬉しく思います。今後ともよろしくお願いいたします。




