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第36章 非日常へ(2025年2月8日改稿)

※2025年2月8日に改稿を行いました。


こんばんは。サブサンでございます。

今回もお読みいただきありがとうございます!

この章では、物語がいよいよ非日常へと足を踏み入れました。日常から少しずつ外れていく仲間たちと、それを見守る渡瀬先生の戸惑いが描かれています。

謎が謎を呼び、物語はますます混迷を深めていきますが、ひなたたちの絆がこの困難をどう乗り越えていくのか、ぜひ注目してください。


また、これまで以上に皆さんのご意見やご感想をいただけると嬉しいです!読んでくださっている皆さんの声が、この物語をより良いものにしてくれると信じています。

夕方のあかつき学園も、そろそろ終わりの時を迎えようとしていた。

校内放送が生徒たちに帰宅を促し、徐々に賑わいも静まり返りつつあった。

「帰ろーぜ!」

「金森葵の映画見なきゃ!」

「あれ?メッセ届かないぜ?」

「こっちもだ!動画が止まるなあ……」


生徒たちは次々と帰路に就き、校舎内は少しずつ静寂に包まれていく。そんな中、一人の男が焦燥の表情を浮かべ、急ぎ足で校内を駆け抜けていた。

その男、UKは、無線機を握りしめながらeスポーツ部室へと向かっている。


「AK!AK!応答しろ!」

無線での呼びかけにもかかわらず、応答は返ってこない。UKは苛立ちを抑えきれず、舌打ちをする。

「くそっ!」


―その頃、あかつき学園のとある廊下にて―


廊下には、見回りをしている渡瀬が、帰宅する生徒たちがきちんといなくなったかを確認している。


「さて……生徒たちは皆帰ったかな……」


その声が微かに響く廊下から少し離れたeスポーツ部の部室内では、焦った表情のAKがパソコン画面とにらめっこしていた。

「ログアウト……ログアウト……誰か来ちゃうよ……」

画面の進行バーは40%から一向に進まない。

AKの手元で無線機の着信バイブレーションがしきりにジャケットの襟を震わせているが、必死の操作に集中するあまり、それに気づく余裕もない。


「なんで、こんなに遅いの?!通信障害?!」


AKの手は汗ばみ、少しでも早くこの場所から去りたいと切実に思いながらも、動かないログアウト画面に焦燥感が募っていくばかりだった。


―渡瀬が学園に向かう―


校内の別の場所では、帰宅を促す校内放送が響く中、渡瀬は見回りの一環として学生食堂に足を運んでいた。

そこには、冴姫を囲むようにして、ひなた、京子、亮、香菜子、大海が集まっていた。ふと冴姫の瞳には涙が浮かんでいるのが目に入った。


渡瀬が優しく声をかける。

「どうしたの?何かあったの?」


京子が振り返り、少し緊張した表情で答える。

「渡瀬先生……」


ひなたもその場に割って入る。

「先生!大丈夫なんですか?さっき……音楽室に……」


渡瀬は少し疲れ気味の微笑みを浮かべる。

「ええ……けど、これは……?」


香菜子が慌てて手を振りながら続ける。

「いじめとかじゃないんです!サキ姉がちょっと悩んでて……」


亮が穏やかに言葉を補った。

「先生、今日は見回りですよね?すぐ帰りますから」


しかし、大海は少し思案するような顔をして言った。

「いや、先生にも聞いてもらおうぜ」


京子は不安げに言葉を漏らす。

「信じてもらえるかどうか……」


ひなたがそっと京子の肩に手を置き、力強くうなずく。「私もいるよ!大丈夫だから」


渡瀬は一同の様子を見つめ、不安げに眉をひそめた。

「一体、何が……」


ひなたが深呼吸をし、覚悟を決めたように口を開いた。

「先生、私たち、いくつか聞きたいことがあります」


その場に張り詰めた緊張感が漂い、一瞬の静寂が訪れる。

みんなが息を呑むように渡瀬を見つめる中、ひなたは少しずつ言葉を紡いだ。


「小河さんが、生きてるんです。京子が見ました」


渡瀬は一瞬驚いたように目を見開き、信じがたいという表情を浮かべた。

「えっ!?」

一同の視線が渡瀬に集中する。

渡瀬は一同の切迫した表情を見つめながら、話を整理しようと努めていた。


「けど、小河さんの事故は……」

渡瀬が困惑した声で言葉を発した。


ひなたが、真剣な眼差しで渡瀬を見つめて言葉を続けた。「確かに見ました、先生……間違いなく……」


京子が静かに力を込めるように続ける。

「でも、見たんです。教室の窓から……小河さんを」


渡瀬は信じがたいという表情で一瞬言葉を失った後、首を振った。

「……信じられない……見間違いじゃ……」


大海が落ち着いた様子で話をつなぐ。

「それと、先生。もう一つ質問が。最近、転校生とか新しい職員とか、来たことってあるのかな?」


渡瀬が眉をひそめて問い返した。

「知らないわ……どうして?」


亮が少し前に体を乗り出し、真剣な表情で説明した。

「俺とひなた、それから京子さんとで、ポニーテールの女の子と会ったんです。そして、清掃員のおじさんと、妙に親しげで……」


ひなたも渡瀬の目を見つめて静かに尋ねる。

「何かご存じありませんか?」


すると、香菜子がスマホを取り出し、渡瀬の前に差し出した。

「ほらっ!これも!」


スマホの画面には、小河佑梨と思しき後ろ姿の画像が映っていた。

背景には学園の裏庭の風景が広がっている。


渡瀬はその画像を見て、驚きと戸惑いが入り混じった表情を浮かべた。

画像を見ながらも視線があちこちに泳ぐ。

「小河さん……これだけじゃ確信は持てないけど……でも、確かに似てるわ……後ろ姿だけど……」


ひなたがさらに言葉を重ねた。

「どう思われますか、先生?」


渡瀬は頭を押さえ、困惑したように首を振った。

「頭が混乱してきたわ……何もかも……でも、小河さんに瓜二つよ……後ろ姿ではあるけれど……」


その時、涙の跡が残る冴姫が、震える声で渡瀬に告げた。「先生、それに……小河さんの事故に使われた車は、私の父の会社から盗まれたものなんです」


渡瀬は言葉を失い、ただ驚きに目を見開いた。

「なんですって!もうわからなくなってきたわ!」


一同の間に深い沈黙が流れ、謎がますます深まっていく中で、渡瀬は混乱しながらも、彼らの話が無視できないものであると感じ始めていた。


校内放送が流れる。

「下校時間です。まもなく閉門します。生徒の皆さんは早急に帰宅を…これから教職員が各教室を巡回…」


渡瀬が困惑の表情のまま言う。

「ごめんなさい……当番……だから……。」

渡瀬は席を立ち、再び校内へ歩みを進めた。


渡瀬の後ろ姿を見送り、その姿が校内に消えた時、一同は目を合わせた。ひなたが言う。

「みんな、もう帰ろう」

「また、明日だな」

「アカチャちょうだいね」

ひなたたちは、夕闇が始まる学園を後にし、霧島橋を渡って帰路についた。


―学園内。見回りを続ける渡瀬―


校舎内を見回る渡瀬。

困惑の中、佑梨の顔を思い浮かべていた。

「私の……希望……」

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

今回の章では、渡瀬先生とひなたたちの会話を通じて、物語の核心に迫る要素を少しずつ明らかにしました。一方で、明かされた事実がさらに大きな謎を呼び、新たな展開へとつながっていきます。


これから物語は、日常と非日常の境界線をさらに超えていき、読者の皆さんを驚かせるような展開を用意しています。次回以降もぜひお楽しみに!


感想・ご質問・ご意見、何でもお待ちしています!あなたの声が、この作品を育てる大切な要素ですので、気軽にコメントしてくださいね。

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