第23章 あかつきの悲喜こもごも(2025年2月8日改稿)
※2025年2月8日に改稿を行いました。
いつもご愛読ありがとうございます!
今回は第23章「あかつきの悲喜こもごも」をお届けします。
こんばんは。サブサンでございます。
本章では、学園の中で交錯する生徒たちの友情や悩み、そして理事長・天美の存在に新たな意味が浮かび上がります。
一方、裏庭ではUKとAKが密かに行動を開始。
物語が少しずつスリリングな展開を迎える中、青春と陰謀が絡み合う瞬間が描かれます。
キャラクターたちがそれぞれの立場で何を選び、どう動いていくのか——ぜひお楽しみください!
昼休みの終わりが迫ろうとしていた。
ひなた、京子、香菜子、亮、大海の五人は校舎へと入っていった。
廊下には他の生徒たちも次の授業に向かって歩いており、少しざわついた空気が漂っていた。
ひなたはふと立ち止まり、校舎内や周囲を見渡しながらぼそりとつぶやいた。
「やっぱり、さっきの二人……見ないわね……」
「これだけ多いとなあ……どこにいるかわからないだろうな」
亮が辺りを見回しながら返す。
京子は腕を組んで考え込むように視線を落とした。
「小河さんも……あれは幻だったのかしら……」
大海は首をかしげながら提案する。
「先生に聞いてみたらどうだ?転校生とか新しく来た職員なら、それでわかるかもしれないし……」
すると、スマホを手に持った香菜子が画面を見つめたまま軽く肩をすくめた。
「目撃情報なし!やっぱ幽霊じゃない?」
その言葉に、四人が一斉に香菜子へ向き直った。
そして一瞬の間が空き、全員が声を上げた。
「そんなわけあるか!」
香菜子は思わず目を丸くし、「え、でも……」と口を開いたが、周りの視線に気づいて小さく笑った。
一同の軽いやりとりが、少し緊張していた空気を和らげ、再び歩き出した。
―その頃、あかつき学園の図書館にて―
図書館の静けさの中、真緒はのぞみに向けて英語の文章を丁寧に説明していた。
「ここはね……」
真緒が指差しながら、難解な部分を簡潔に解説する。
のぞみは感心したように目を輝かせた。
そして、嬉しそうに声を上げる。
「さすが真緒や!ありがとう!これで今度の抜き打ちテストもバッチリやで!」
真緒は微笑み、控えめに応じた。
「どういたしまして」
突然、のぞみが何かを思い出したように、興奮気味に話しかけた。
「そや!今度の日曜日に映画行かへん?『ミッション・インクルージョン3』の公開日やねん!ティム様のアクション、最高やで!」
しかし、真緒は少し遠慮がちに首をかしげる。
「私は『君と時空の海へ』の方が……金森葵さん主演ですし」
のぞみは驚いた表情でペットボトルを取り出し、飲み物を一口飲んだ。
そして、そのペットボトルに目をやりながら、真緒に告げた。
「あの子、私たちと同い年の女優やろ?スポーツドリンクのCMにも出とったがな!ほら……これやで!」
そのラベルには、爽やかな笑顔の金森葵の写真が印刷されていた。
真緒は少し微笑んで、静かに答える。
「作品鑑賞は、やっぱり共感が大事ですから……」
その時、昼休みを終えるチャイムが図書館に響いた。
「あ、行かんと!」
のぞみが慌てて立ち上がる。
「いきましょう」
真緒も軽くうなずき、二人は並んで図書館を後にした。
廊下を歩く真緒とのぞみの周囲では、次の授業に急ぐ生徒たちが足早に行き交っていた。
「次の授業、乾先生だっけ?」
「体育館へ急げ!」
「教科書貸して!忘れたんだ!」
「マキ?カナから、変なメッセージきたよ?」
「レナも?幽霊と怪しい二人だって」
「あれ?ナナは今どこ?」
「サボってるって……授業ウザいってさ……」
ざわざわとした話し声が飛び交う中、真緒がのぞみに向き直り、別れを告げようとした。
「では……ここで……」
「ほな後でな、真緒」
のぞみも別れの挨拶をしようとしたその時、二人の前方から一人の女性が優雅に歩いてくるのが見えた。
品のある微笑みを浮かべ、堂々とした姿で歩くその人物は、学園理事長の天美だった。
天美はすれ違う生徒たちににこやかに声をかけながら、柔らかな表情で言葉を投げかける。
「生徒の皆さん、授業が始まりますよ。お急ぎなさいね」
天美の姿を見た生徒たちがざわざざと話し始める。
「理事長先生だ!」
「校舎を見回るなんて珍しいね」
「行事の時くらいしか見かけないのに」
「インパクトあるよな。帽子を取らないし」
「なんか、金持ちらしいよ?この学園を数年前に買い取ったらしいけど」
「へえ……そうなんだ」
そんな生徒たちのつぶやきを耳にしながら、真緒はじっと天美を見つめていた。
すると、天美はかけているメガネをそっと直した。
「あの動き……」
真緒はそれを見て、小さく呟いた。
「えっ?」
不思議そうにのぞみが真緒に問いかける。
天美が二人に気づき、にこやかに微笑みながら声をかけた。
「あら?我が校の誇り、麻倉さんと延藤さんですね。お二人とも頑張ってくださいね」
真緒とのぞみが反応する。
「ありがとうございます……」
「頑張りますっ!」
そして、優雅に視線を逸らすと、その場を去っていく天美。生徒たちは理事長の姿を目で追いながらも、次々と教室へと散っていった。
天美が去った後、真緒は再び静かに呟いた。
「やはり……叔母さま……だわ」
驚いた様子でのぞみが声を上げる。
「えっ!?理事長先生が……?どないな意味や?行方不明なんちゃうん?」
答える間もなく、授業開始を知らせるチャイムが再び鳴り響いた。
「アカン!急がな!」
のぞみが慌てて言うと、真緒も頷きながら足早に歩き出す。
「ええ……行きましょう」
授業を受けながら、真緒は思惑を巡らせていた。
「確信はありませんわ……けど……」
その瞬間、彼女の視線が遠くに霞み、胸の奥に一つの結論が浮かび上がった。
天美理事長が授業前に見せた、メガネをそっと直すあの動作。
どこか似通った仕草が、真緒の記憶に残る行方不明の叔母・麻倉妙子の姿と重なる。
「やっぱり……あの方は叔母さま……麻倉妙子に違いない……」
教室のざわめきや授業の声が遠のく中、真緒の心には一つの確信が深く刻まれていた。
彼女は理事長に関する真実を知るため、心を決めたのであった。
―静寂が戻った校舎の裏庭―
裏庭の周囲には人影がなく、静寂が広がっていた。
そこにはUKとAKが立っていた。
AKは辺りを見回し、小声で言う。
「誰もいなくなったわね」
「調査開始だ」
UKは短く返した。
AKは表情を引き締めるが、すぐ笑顔に変わる。
「私は校舎内を探るわ。制服似合う?」
スカートを軽くはためかせながら言った。
それに対してUKが、少し皮肉混じりに口を開いた。
「清掃員の俺は?」
AKは微笑みながら肩をすくめ、軽く答えた。
「トイレ掃除でもすれば?」
UKは苦々しげに顔をしかめてつぶやく。
「そうなるよな……はあ……」
最後には諦めたようにため息をついた。
そして、ふと表情を引き締め、AKに視線を向ける。
「だが、お前も気をつけろよ。」
AKは少しだけ驚いた表情を見せ、聞き返す。
「何が?」
UKは冗談混じりに言った。
「オンラインゲームはするな」
AKは即座に呆れた顔で返す。
「学校でする訳ないでしょ?おじさん?」
しかし、彼女はどこか余裕のある表情で微笑んでいる。
第23章では、生徒たちの日常に潜む謎が少しずつ顔を見せ始めました。
理事長・天美の仕草や、真緒が抱く疑念が物語をさらに深め、緊張感を増しています。
また、裏庭でのUKとAKの密かな調査も、今後の展開を予感させるものとなっています。
一方で、キャラクター同士の軽妙なやり取りや、友情が描かれる場面では、青春ならではの温かさや笑いも感じていただけたのではないでしょうか。
感想やご意見をいただけると、次回以降の執筆の励みになりますので、ぜひお寄せください!
次回もどうぞお楽しみに!




