表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/79

第17章 天翔ける監視と密談(2025年2月8日改稿)

※2025年2月8日に改稿を行いました。


こんばんは、サブサンです。

今回は第17章「天翔ける監視と密談」をお読みいただきありがとうございます。

本章では、物語がさらに緊張感を増していきます。

霧島山からあかつき学園を監視するUKとAK、そして理事長室で繰り広げられる天美妙子と志牟螺の密談が、陰謀の深まりを描きます。

謎めいた過去や新たに明かされる敵の目的が、読者の皆さまにさらなる興奮と期待感をお届けできればと思います。

霧島山の中腹、木々の影に隠れるようにして、UKが静かに双眼鏡を構えていた。

彼の隣では、AKがノートパソコンを開き、モニターに映し出される映像に集中している。小さな画面に映された画像は遠く、音声も途切れがちだった。


「もっと近づけないか?」

UKが眉間に皺を寄せ、サングラスから双眼鏡越しに校庭をじっと見つめる。

ドローンが空を滑るように飛んでいるのが見えるが、これ以上は接近しづらいようだった。


AKがキーボードを叩きながら、少し面倒そうに返事をした。

「勘付かれるわ。この距離が限界よ」


ノートパソコンの画面には、校庭で言い争いをしている冴姫と、香坂の姿が映し出されていた。

しかし、距離が遠くて詳細までは確認できない。


UKは小さく息を吐き、双眼鏡から目を離す。

「なるほどな…ただの部活の口論か、それとも…」


AKは画面から目を離さず、少しだけ表情を緩めた。

「もし学校が関わっているなら、表向きの行動でも気を抜かないはず。引き続き監視するわ」


UKはAKの言葉に頷き、再び双眼鏡を構え直した。

「しかし、遠いな……」

「老眼が進んでる?おじさん?」

「最近は狙撃にも苦労する……って……任務中だぞ?」

「はいはい」


霧島山中腹の木々に身を潜めながら、UKとAKは次の手を考えていた。

眼下に広がるあかつき学園の校庭を見つめる。

「建物から何かわかるかと思ったけど……普通の学校だわ……地形は特殊だけど……。」

「人工衛星のアンテナくらいありそうなものだが……。」

やはり遠距離からの監視には限界がある。

ドローンで得た映像も、重要な情報を引き出すには不十分だった。


突然、AKのノートパソコンの画面が切り替わり、通信画面が立ち上がった。

画面に映し出されたのは白髪混じりのLの顔だ。


「Lだ。状況は?」

男の低い声が響く。背景には執務室が映っている。


AKは即座に応答する。

「AKです。UKと共に霧島山から学園を監視中です。現状の映像を送ります」


AKが映像を転送すると、しばらくの間、Lが画面の中で無言で見つめた。


「……確かに、これでは何もわからんな。山手から霧島川……出入りは霧島橋一つ……後は山からしかない……」

少し苛立ちを滲ませた声でLが言う。

 

AKが訝しげな顔をして言う。

「まるで自然の要塞ね。」


UKが重い口調で尋ねた。

「山からは遠くてはっきり見えない。どうする?」

Lは一瞬、画面越しに思案するかのような沈黙を置いてから、断言した。

「直接潜入するしかないな。この事件も麻倉博士の仕業かもしれない。」


その言葉に、UKの眉が一瞬だけ動いた。

「……もう10年以上か……」


AKはその言葉に反応し、画面の向こうのLに視線を向けた。

「10年?それは……」

Lの表情が険しくなり、静かに答えた。

「組織の裏切り者……麻倉妙子だ」


AKは驚きを押し殺し、目を細めて画面を見つめた。

「今回の事件も?」


「確信はない。しかし、ファウンデーションの動きについても上層部から詰められている。外交にも影響が出かねないそうだ」


「各地にエージェントを派遣していますが、行方はわからないみたいですしね」


「その通りだ」

UKはLとAKに割り込み、淡々とした言葉を投げる。

「麻倉妙子の家族は?」

Lも淡々と答える

「調査済みだ。実家は家族経営の呉服屋だが、不仲で一緒に暮らしてはいない。そもそもな…」

 AKが画面を見ながらつぶやく

「麻倉和装…あかつき市ですね。創業者で会長の清の次女…」

「姪も1人。創業者の孫だ。唯一仲は良かったそうだが、何分姪が子供の頃だ」

 UKが結論づける。

「覚えている訳ないか…」


Lが執務室から端末を操作した。

「詳しくはデータを確認してくれ。」

AKノートパソコンに麻倉妙子のデータが表示される。

UKとAKはそれを見てつぶやく。

「元、エネルギー工学……科学者……なのね?UK?」

「開発部所属だった女だ。研究だけでなく、あらゆるノウハウも盗んでいった。ネットワークや戦闘術もな。」

「エージェントの家族を殺害?これって……」

「AK……そうだ……恵美子を……。」

「……。」

「それが……ファウンデーション首領……。」


「メンバーにはもう一人重要人物がいる……こいつも裏切り者だ。」

Lはもう一つデータを送信する。

ノートパソコンにもう一人の人物が表示された。

UKが訝しげな顔をする。

志牟螺(しむら)だ……志牟螺達郎(しむらたつろう)……こいつも元開発部。」

「知ってるの?UK?」

「警視庁の元法医学者だ。危険な研究に手を染めていた。証拠隠滅のプロでもある……」

「それが、ファウンデーションの……No.2……」


張り詰めた静寂が霧島山の山中に広がり、再び冷たい風が二人の間を吹き抜けていく。


「直接潜入しかないようだな。」

Lの低く落ち着いた声が通信画面から響く。


「そのようだな。」

UKが冷静に応じると、AKが画面に目をやりながら軽く肩をすくめた。


「じゃ、行きますか?」


Lは二人に目を向け、厳しい視線を送りながら静かに頷いた。

「慎重にな。健闘を祈る。」


通信が切れると、「通信終了」の文字とともに、NPSOと書かれたエンブレムが画面に映し出され、静かに消えた。


UKが双眼鏡をゆっくりと下ろし、AKに視線を向ける。

「準備はしてるか?」


AKは片手でノートパソコンを閉じ、もう片手で背中のバッグにしまいながら、微笑を浮かべた。

「バッチリよ、おじさん。」


UKは一瞬、ため息まじりに微かに笑みを浮かべ、サングラスを直した。そして、あえて冷静な声で返した。

「だから……任務中だぞ?」


「了解、了解。」

AKは淡々と答え、装備を整えながら再び周囲の状況を確認した。


冷たい風が二人の頬をかすめ、次の任務に向けた決意がその場の空気を張り詰めさせていく。


―時を同じくして、あかつき学園の理事長室。―


静まり返った部屋に響くチャイムの音が、緊迫した空気を一瞬揺るがせた。

部屋の中央には、理事長である天美妙子と、その部下である志牟螺が立っていた。

志牟螺は鋭い目で妙子を見つめながら、問いかけるように低い声で尋ねた。


「ボス?素体を確認したいのですが?」


天美は落ち着いた様子で、上着のポケットに手を伸ばすと、一枚のハンカチを取り出した。そして、そのハンカチをゆっくりと広げる。

「これだ……。」


広げられたハンカチの中には、数本の黒髪が丁寧に包まれていた。

「手に入れた。」


その一言に、志牟螺は安堵の色を見せるとともに、わずかに目を輝かせた。

「おお……これで……」


天美は冷ややかな視線を彼に向けながら、確信に満ちた口調で言い放った。

「取り戻せるわ……Dをね……」


「今すぐに?」

志牟螺は一瞬ためらい、問いかけるような視線を向けた。


妙子は力強く頷いた。

「そうだ。今すぐだ。お前の専門は?」


志牟螺は一瞬目を伏せ、少し緊張した声で答えた。

「……遺伝子工学です」


一瞬の沈黙の後、志牟螺は言葉を繋ぐ。

「ボス?これが完成すれば、特殊音階と?」


天美は冷たい笑みを浮かべながら、彼に告げた。

「AとBとC……3つについては、データ統合が終わっている。」


天美は押す様に付け足した。

「わかっているな?失敗は許さんぞ?部隊長と同様に……」


志牟螺は深く頷き、静かに口を開いた。

「わかりました。ボス」


理事長室の静寂が再び二人を包む中、天美妙子の目には冷酷な光が宿っていた。

最後までお読みいただきありがとうございました!

第17章では、UKとAKが霧島山から監視を行いながらも、直接潜入を決意するまでの緊迫したやり取りを描きました。一方で、理事長室での天美妙子と志牟螺の会話は、新たなキャラクターの秘密や敵側の企てを垣間見せる内容となっています。

次章では、学園生活への潜入ミッションがスタートし、物語が大きな展開を迎える予定です。

UKとAKの活躍、そして敵の計画がどのように絡み合っていくのか、引き続きお楽しみください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ