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朝(中編)

「……分かりました。そういうことなら、お願いします。でも、無理はしないでくださいね」


ナディアは穏やかに見えて、意外と頑固な人かもしれない。そんなことを考えながら、ソフィアは彼女に向かって頭を下げた。彼女は困ったような顔をしていた。


「ソフィア様。私は貴女の世話係です。これも仕事の内ですので、あまり気になさらないでくださいませ」


そう言い残して、彼女は部屋を出ていった。残されたソフィアは、床を見つめてため息をついた。


「……そうよね。世話係って、お友達じゃないものね。やっぱり慣れないわ、こういうの……」


オルグレンでは、王家と民との距離が近い。使用人も居ないわけではなかったが、お互いに何でも言い合える仲だった。だからだろうか。ソフィアは新しく付く世話係とも、そういう関係になりたいと思っている。


(ナディアさんが戻ってきたら、お願いしてみようかしら)


彼女はそんなことを考えながら、窓に近づいた。窓に掛けられた布を外して、日の光を室内に取り入れる。格子がはめられた木枠の向こうに、広い中庭が見えた。庭には緑の木々が生い茂り、色とりどりの花が咲いている。


(……ジルは、護衛の人がいれば街に出ても良いって言ったけど……。王宮の庭に出るだけなら、護衛なんていらないんじゃない?)


ソフィアは眼下に広がる庭を見ながら、そんなことを考えていた。背後で扉が開く音が聞こえる。彼女はその音に反応して、後ろを見た。


「ソフィア様。お食事をお持ちしました」


「ありがとうございます、ナディアさん」


ナディアが滑車(かっしゃ)付きの台を押して、部屋の中に入ってくる。台の上には、豪華な料理が乗せられていた。彼女は机の近くに台を置いて、料理を机に並べ始める。ソフィアは窓際から移動して、席に着いた。


「……ええと、これが朝食なんですか? これ全部?」


「はい。食べられなければ、残してしまっても構いませんよ」


「そんな勿体ないことはしませんけど……あの、ナディアさん。もしよろしければ、一緒に食べてくれませんか?」


ソフィアが意を決して口を開く。ナディアは首を傾げて言った。


「毒味をしてほしいということでしょうか?」


「いえ、そんなことは思ってません! ……でも、ここではそういう事になるんでしょうか」


ソフィアは慌てて否定した。そしてその後に、不安そうな顔で呟く。ナディアが困り顔で彼女を見つめた。


「私はどうしても、そのように捉えてしまいます。ですが、ソフィア様にはそんなつもりはないのでしょう?」


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