表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/226

朝(前編)

翌日。早朝に、ジルヴェストは目を覚ました。


「……もう朝か。王宮に戻る時間だな」


眠るソフィアの(ひたい)に口づけて、彼は彼女を置いてベッドから出た。


「行ってくる」


その言葉を残して、彼は部屋を出ていった。扉の外で待機していた老メイド……ナディアが黙って頭を下げる。彼女は彼が立ち去るのを見届けてから、扉を開けて室内を見た。ソフィアがベッドに横になった状態で、寝返りを打つ。そしてゆっくりと目を開けた。


「……あれ?」


ジルヴェストがいない。その事に気づいて、彼女は首を傾げた。ナディアが入り口から声をかける。


「おはようございます、ソフィア様。お疲れではありませんか? もう少し、お眠りになっていてもよろしいかと」


「い、いえ! 大丈夫です」


ソフィアは慌てて起き上がろうとした。ナディアが彼女の(もと)に歩み寄って、その体を押さえる。


「陛下と同衾(どうきん)なされた後です。お体は(いたわ)らなければなりませんよ」


ソフィアは顔を真っ赤にして、口をパクパクとさせた。


「そ、そ、そんな――」


ナディアが不思議そうな顔をする。ソフィアは勢いに任せて叫んだ。


「ち、違います! 私と陛下は、ただお話をしていただけで! そ、その、そういうことはしていません!!」


「まあ」


ナディアが目を丸くする。彼女はソフィアの体を押さえていた手を離して、深々と頭を下げた。


「それは申し訳ありません。勘違いで、失礼なことを言ってしまいました」


「い、いえ。そう思われるのは、当然ですよね。ただ、その……ジルは私のことを気遣って、何もしないでくれたんです。流石というか、何というか……」


頬を赤らめて、ソフィアが話す。ナディアは穏やかな笑みを崩さずに、彼女の話を聞いていた。


「ええ、そうでしょうとも。陛下は公正な王であり、素晴らしい人格者です。ソフィア様が嫌がるようなことはなさらないでしょう」


その言葉に、(わず)かな違和感を覚えて。ソフィアは一瞬、戸惑った。ナディアはそのことは気にせずに、顔を上げて問いかける。


「お腹は空いていらっしゃいますか? 差し支えなければ、朝のお食事をお運びしますが」


「あ、ええ、はい。お願いします。……というか、自分で取りに行きますよ?」


「いいえ。これは私の仕事です。どうかお任せくださいませ」


ソフィアはベッドから出て、扉に近づこうとした。そんな彼女を静止して、老女が告げる。


「ご安心ください。私は老いてはおりますが、まだ体は動かせます。そうでなければ、陛下に仕事を任されることはありません」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ