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夜(中編)

ベッドの中で、ジルヴェストの腕に抱え込まれる。彼の美しい顔を間近に見て、ソフィアは内心ドギマギした。


「陛下……? その、何故このようなことを……」


「いけませんか?」


彼は彼女の目を見つめて、低い声で問いかけた。彼女が慌てて、首を横に振る。


「い、いえ! そんなことは……」


その言葉を聞いて、ジルヴェストは満足げに笑った。


「……ふふ。貴女は、本当に可愛い方ですね。確か、名は……ソフィア、でしたか?」


「は、はい。覚えていてくださったんですね」


「貴女は私の妻ですからね。当然です」


「いえ、でも……後宮には、何人ものお妃様がいらっしゃるのでしょう? 陛下はその方々のお名前を、全て覚えていらっしゃるのですか?」


「ええ。別に、大したことではありませんから」


彼は笑顔で頷いた。彼女は彼の顔を見つめて、感心したように息を吐く。


「流石、皇帝となられた方は違いますわね。私の元を訪ねてくださったのも、気遣いの内ですか?」


「いいえ。単に私が、貴女に会いたかっただけです」


輝くような笑みを浮かべたジルヴェストに引け目を感じて、ソフィアはそっと目をそらした。


「……私は、何の取り柄もない女です。陛下のような方にそう言っていただけるのは、光栄なことですが……もう、このようなことはおやめください。勘違いしてしまいますわ」


「勘違い、ですか?」


彼が首を傾げる。彼女は苦笑を浮かべた。


「私は、オルグレンが帝国を裏切らないという証明のために嫁がされました。いわば人質のようなものです。陛下もそのことはご承知のはず。どうか私のことは、放っておいてくださいませ」


「……故国に、好きな男でもいましたか?」


彼が目を細めて、地を()うような声で問う。彼女はキョトンとした顔で答えた。


「いいえ? 確かにオルグレンは、他の国よりも王家と国民の距離が近い環境ではありましたけれど……私は男性と愛を語り合うよりも、外で遊ぶことの方が好きな女でしたから。こうして2人きりで話をするのも、陛下が初めてですわ」


「そうですか。では永遠に、そのままの貴女でいてください」


彼は明るい笑みを浮かべて、彼女の頭を撫でながら告げた。彼女は戸惑ったような様子で、彼の方に視線を向ける。


「え、ええと……? では、その……少しでいいので、外に出してもらえますか? 私には、部屋の中で出来るような趣味がなくて……」


「……おや。まだ自覚が足りないのですか? 貴女はもう、私の妻となったのですよ。後宮の外に出るなどということを、許すわけにはいきません」


彼は笑顔で、彼女の要望を却下した。彼女は内心、不思議に思った。


(……さっきと言ってることが違わない? この人は、いったい何を考えているの?)

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