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レイラの誤算(中編)

と、狙いをつけたまでは良かったのだが。レイラは中々、表立っては動けなかった。それもこれも、ディアナが彼女の行動を牽制(けんせい)してくるからである。生家の立場上、彼女を無視して勝手に動くことができないレイラは、日々イライラを(つの)らせていた。


「ああもう、あの女のせいで後手に回ってばかりだわ! こんなことをしている間にも、コンドレンとミルワードは着々(ちゃくちゃく)と、田舎娘を抱き込もうとしているっていうのに……!」


後宮で最も力を持つのは、正妃であるアドレイド。次いで第1側妃であるシェリルである。いくらディアナでも、彼女たちの行動を(とが)めることはできない。それを良いことに、彼女たちは早めに寵姫と接触したらしいと聞いて。レイラの苛立ちは、最高潮に達していた。


「何が第3側妃よ! 時流も読めないくせに、権力を振りかざして!!」


レイラとディアナは共に派手好きで、示し合わせてもいないのにドレスや宝飾品が被ることがよくあった。その上、並び立つと物凄い美貌なので、対外的には「姉妹のように仲が良い」と思わせている。しかし実際には生家の力で劣るレイラが、常にディアナを立てるような言動をしているだけだ。なので自室では、彼女は誰に(はばか)ることもなく、本音を口に出している。そんな彼女に、アドラム家から付いてきた使用人は、(おく)することなく声をかけた。


「まあまあレイラ様。どうせ今は寵姫様も里帰りして、ここにはおられないのですから。お会いになるのは、彼女が帰ってきて、落ち着かれてからでもよろしいでしょう」


「……そのことだけど、本当に里帰りだけなの? 何か他に、理由があったりしないでしょうね」


レイラはその使用人を()めつけて、低い声音で問いかけた。使用人は全く(ひる)まずに、話を続ける。


「そうですねえ。何かお有りになるとしても、レイラ様が期待されているようなことではないかと。この間も、下級貴族が寵姫様の離婚要請を上奏(じょうそう)したら、陛下はその書類を無言で突き返されたそうですから。今回の里帰りにはアッシャー家の方が同行されたようですし、どんなことがあっても無事に帰ってこられると思いますよ」


その言葉に。レイラは深いため息をついて、椅子の背もたれを握りしめた。


「……そう。それなら尚更(なおさら)、寵姫様と仲良くなっておきたいわね。彼女が帰ってきたら、すぐにディアナ様に手紙を送るわ。こうなったら貴女の主催でもいいから、早いうちに寵姫様と接触できる場を整えておいてくださいって」


「かしこまりました。……上手くいくとよろしいですね、お嬢様」


「何言ってるの。上手くいくに決まってるでしょ。私はあんな女とは違う。無駄に敵を増やしたりなんて、しないんだから」


レイラはそう言って不敵(ふてき)に笑う。使用人は口を閉じて、主に向かって深々と頭を下げた。

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