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来客(中編)

「まあ、あの陛下のことですから……。ソフィア様が何もされずとも、何かしらの対応策は立てていたでしょうね。その場合は、護衛(アタシ)を雇うんじゃなくて……主犯の貴族たちの財産を差し押さえて、ソルベ国への賠償金に当てるっていう形になったと思いますけど」


「……それだとソルベ国への補償にはなっても、私の心は救われなかったでしょうね。今の形で良かったです」


マノンとカトカが、口々に言う。その言葉に、ソフィアは何と返していいか分からず、目を伏せた。


(……私はそんなこと、考えてもいなかったのに)


「別にそれでよろしいでしょう。結果として、カトカ様はこうしてお元気になられましたし。どこにも問題が出ないどころか、状況はむしろ好転しています。それが貴女の行動の結果なのですから、胸を張って、自分を誇っていてください」


側に控えていたベラが彼女の思考を読み取って、横から口を出す。そんなことは初めてで、ソフィアはパッと顔を上げた。ベラはいつも通りの無表情だが、その目には(かす)かな思いやりがあるように見える。


「……そうですね。ソフィア様は、何でも難しく考えておられますが……。貴女はもっと、自由に生きて良いのですよ。故国では、いつもそうしていたのでしょう?」


ナディアまでもが、穏やかな笑みを浮かべて追撃する。少女は戸惑ったように周囲を見た。その目を最後に向けられたカトカは、ニッコリと笑って口を開く。


「ソフィア様は以前、私に同じだと言ってくださいましたね。同じ立場。同じ境遇。……でもね、ソフィア様。私はやっぱり、違うところがあると思っています。それは悪いことじゃなくて、きっと当たり前のことで。どんなに同じ育ち方をしても、人はそれぞれ、違う良さがあるんです。……陛下はきっと、ソフィア様だけが持っている良い所をたくさん知っていらっしゃる。だからこそ、あなただけを深く愛されているのだと思いますよ」


「……や……その……愛って……」


ソフィアは顔を真っ赤にして(うつむ)いた。昨日から悩んでいたことを、全て見抜かれているかのような。そんな会話の流れに、内心では大いに焦りながら。


(何? 何で? 私ってそんなに分かりやすい?!)


そんな彼女の様子を見て。ナディアとベラはコッソリと目を合わせて、同時に苦笑した。昨日から、彼女が何かに悩んでいたことも。2人はとうに気づいている。


(少しやり過ぎてしまったでしょうか)


(いえ、このくらいしないと、ソフィア様はいつまで経っても自覚なさらないかと。いい機会ですので、ご自分が愛されていることをしっかり思い知ってもらいましょう)


2人は声に出さず、目線だけでそんな会話をする。マノンとカトカはその様子を、不思議そうに眺めていた。

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