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【閑話】 アディとシェリィの内緒話

王宮のざわめきは、やがて後宮にも波及(はきゅう)する。手紙の返事が来ないことに、ディアナが苛立ちを(つの)らせていたのと同じ頃。シェリルは再び、アドレイドの部屋を訪ねていた。


「……本当に、困ったことになったわね」


「そうねえ……」


顔を見合わせて、2人は同時にため息をつく。アドレイドが遠い目をして、話し始めた。


「ジルったら、随分と浮かれているみたいね。私達の時は、会いに来てもくれなかったのに」


「まあ、私達もそれが当然だと思っていたから。お互い様なんじゃない?」


シェリルが苦笑を浮かべている。2人は、ソフィアとジルヴェストの関係に口を挟む気などない。が、しかし。それだけでは済ませられないのも、事実だった。


「アディ。公爵様は何と?」


「男の子が生まれても、コンドレン家はアーサーの後見人を続けるんですって。私にも、協力しろって言ってきたけれど。……おかしなものね。まだ生まれてもいない子のことで、こんなに気を()むなんて」


「全部ジルが悪いのよ。彼が完璧な皇帝じゃなくて、ただの男の顔をしてるから……お父様が心配するのも、無理はないわ」


「だからって、ねえ。今から動くのは、どうかと思うわ。ソフィア様は初めてのことばかりで、ただでさえ大変な時期なのに。お腹の子に何かあったらどうするの」


「何かあってもいいと思っているんじゃない? 姫も世継ぎも、私達の子供だけで足りていると思っているのでしょう。……ソフィア様は、皇帝の血を引いているかどうかなんて関係なく、どちらであっても可愛がると思うけど」


シェリルはそう言って、楽しげな笑みを見せた。寵姫(ソフィア)の子供は、王宮では歓迎されない存在なのかもしれない。けれど、シェリル自身は違う。彼女にとって、ソフィアは大切な友人だ。だから純粋に、無事に子を産んでほしいと願っている。そして。


「……そうね。ソフィア様にとっては、大好きな人との子供だというだけで……それ以上の意味なんて、ないでしょうから」


そう言って柔らかく微笑んだアドレイドも、シェリルと同じ気持ちだった。王宮にいる彼女たちの父親は、ソフィアの人柄を知らないだけだ。たとえ生まれるのが、男の子であっても。それが彼女の子であれば、悪いことにはならないと。2人はそう考えていた。


「まあ、本格的に動くのは子供が生まれてからでいいでしょう」


「そうね。今はまだ、口を出すべき時ではないわ。静かに見守っていてあげましょう」


お互いの意思を確認し終えてから、シェリルがゆっくりと席を立つ。コンドレンとミルワードの懸念(けねん)は正しい。彼女たちも分かっている。いざという時は、ジルヴェストを止めなければならないと。けれどきっとその時は、ソフィアも味方についてくれる。そう確信できるだけで、2人の心は軽かった。

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