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疎外感(前編)

「……客が来ていたのか。しかも、この2人とは……まさか、ソフィに余計なことを言っているんじゃないだろうな」


「あら。自分の妻に向かって、随分な言いようですこと。私たちはソフィア様に、後宮で生き抜く方法をお教えしていただけですわ。誰かさんが後先考えずに振る舞ったせいで、ディアナ様がソフィア様を取り込もうとなさっていて。それを止めてあげたのですから、むしろ感謝してほしいものですね」


扉を開けたジルヴェストは、渋い表情で口を開いた。その言葉を聞いたアドレイドは、平然とした顔で言い返す。眉間のシワを深くしたジルヴェストに向かって、シェリルは笑顔で追撃した。


「そうね。ジルがいつも側にいてあげられればいいんでしょうけど、皇帝としてはそういうわけにもいかないでしょう。どうせ巻き込まれるのなら、彼女も対抗策を身につけておくべきだわ」


「……確かにそうだが、だからといって……ソフィアは故郷を離れたばかりで、まだまだ心細い時期だろう。あまり負担をかけるのは……」


明らかに苦々しい様子で、彼が呟く。ソフィアは内心不思議に思った。


「負担になんて、なっていません。アドレイド様とシェリル様が教えてくださったことは、これからの私に役立つことばかりですし……オルグレンを離れたことも、私は後悔していませんから」


思いをそのまま口に出して、彼女は笑う。


「そもそもジルとの婚姻も、お父様に相談されて私が自分で決めたことです。王女の責務として、いつか他国に嫁ぐことは分かっておりましたし……今ならその決断は正しかったと、胸を張って言うことができます。優しい方々に恵まれて、ジルにも愛してもらえたので」


明るい笑顔を向けられて、ジルヴェストは言葉に詰まった。そして深いため息をついて、ソフィアの側に歩み寄る。


「……そうか。お前がそう言うのなら、まあ、いいだろう」


彼が彼女に手を伸ばすのと同時に、2人の女性は顔を見合わせて席を立った。


「それではソフィア様。私達はお邪魔虫のようですから、早々に退散いたしますね」


「もしも気になることがあれば、部屋を訪ねてくださいな。あなた様であれば、いつでも歓迎いたします。……娘たちも、またお会いしたいと申しておりましたしね」


そんな言葉を残して、2人はさっさと部屋を出ていく。残されたソフィアは、すぐ側にいるジルヴェストの顔を見た。彼はどこか気まずそうな表情で、閉まった扉の方を見ている。


「……お2人は、ジルの幼馴染なんだっけ」


ポツリとソフィアが言葉を落とした。その声には少しの寂しさもあったが、それ以上に羨ましさが込められていた。

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