表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

100/226

奇妙な訪問(後編)

「……それ、どうやって気をつければいいんですか?」


ソフィアが冷や汗を浮かべている。シェリルはそんな彼女を安心させるために、笑顔で話を続けた。


「それは簡単ですよ。飲み物も食べ物も、先に毒見としてベラに食べさせれば良いのです。あの人数であれば、お茶会も立食形式の軽いパーティのようなものでしょうから……それが出来る機会は、いくらでもあるかと」


ソフィアは困り顔になった。でも、それでは。


「……もし毒が入れられていたら、ベラさんを危険に(さら)すことになりませんか?」


シェリルとアドレイドが、同時にソフィアの方を見た。アドレイドが淡々とした声を出す。


「毒見役とはそういうものです。もしもそれで倒れたとしても、ベラは貴女様を守れたことを誇りに思うことでしょう」


ソフィアは目を伏せた。そんなことは、彼女もよく分かっている。それでも。


「私は、私のせいで誰かが傷つくのは嫌なんです」


「……ソフィア様。それなら尚更(なおさら)、毒見はしていただくべきですわ」


低い声で、アドレイドが告げる。シェリルも真剣な顔をして言った。


「そうですよ、ソフィア様。もしもあなたが倒れたら、ジルは間違いなく暴走します。まして命を落としたりしたら……。そのお茶会に同席した者は全員、処罰の対象となるでしょうね」


「そ――」


そんな馬鹿なと言いかけて、ソフィアは思わず口を閉ざした。目の前の女性たちは、本気で彼女に忠告している。そのことは、2人の表情を見ただけで理解できたから。


「……そこまで、ですか?」


結局。長い時間をかけてソフィアが口にできたのは、そんな問いかけだけだった。2人は迷わず頷いて、同時に深いため息をつく。


「ジルのことですから、貴女の前ではそんな姿は見せないでしょうね。でも彼は、貴女のこととなると……皇帝ではなく、1人の男となってしまう。分かりますか、ソフィア様。正妃よりも大切にされる寵姫という存在は、本来であれば争いの火種にしかならないものなのですよ」


アドレイドは鋭い眼差しをソフィアに向けた。ソフィアが真剣な表情を見せる。


「だから、お2人は私に会いに来たのですね? 私がどんな人間か、見極めるために」


「そうですね。私とシェリィは、帝国を支える柱であり……皇帝の無二の友として、彼に忠告することができる。そんな数少ない人物の内の1人ですから」


アドレイドはソフィアから一切目を()らさずにそう告げた。その目を見たソフィアは、唐突に気づく。皇帝に、言うべきことを言える人間。その中には、自分も確かに入っているのだと。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ