表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/110

4. 義弟との出会い

フルーリリ 6歳

エリック  5歳

今日はうちに弟がくる。



もうすぐ着くとの先ぶれが入り、ソワソワと落ち着かない様子をお母様に叱られていた私は、我慢が出来ずに部屋を飛び出し玄関へ急ぐ。


私が姉と呼ばれる立場になる。


可愛がれるような弟か妹が欲しい、そんな子供じみた思いは決してない。浮かれてなどいない。

精神年齢がこの世界で最年長になるかもしれない私が、そんな事に心揺さぶられるはずがない。


それでも家族が増えるなんて、私フルーリリ6年間の人生の中ではビックイベントだし、カスティル家にとっても祝うべきことだ。


弟になる子は5歳らしい。

私はこの世界年齢6歳だが、5歳の子供にとっての一年差はとても大きいはずだろう。私ですら大きな大人に見えるに違いない。

小さな子供に歓迎の意を表すのは、大人として当然のマナーだ。急いで向かわなくては。


廊下を走らない!と、遠くから怒るお母様の声が聞こえたような気はするが、弟を歓迎するという大人のマナーの方がはるかに優先されるべきことだ。




初めて顔を合わせた少年を、一目見て固まった。


――天使がいる!!

月の光のような涼しげな銀髪を背中に流し、紅の瞳に怯えを含みながら、小柄な身体を更に縮こませるように佇んでいる。

こちらを遠慮がちに見つめるその瞳の紅は、秋に実る甘酸っぱい果実ピピリーの色だ。

なんて美味しそうな――いや。なんて自然から愛された眼を持つ天使なんだろう!


あらゆる角度から天使を見るため、ぐるぐると少年の周りを走り回る。

硬直していた少年―エリックを庇うかのように母がスッと間に割って入る。


「リリ、ご挨拶なさい」

いつもより低い声でお母様が言う。


やばい。淑女の行動を咎められる。

お母様のお小言は必要以上に長いのだ。

危険を察知した私は、出来るだけ優雅に見えるよう礼をとる。


「こんにちは。はじめまして。カスティル家長女、フルーリリと申します。エリック、これからよろしくね。」


にっこりと笑いかけると、少し安心したようにエリックも礼を返す。


「エリックと申します。カスティル家に迎え入れていただけた事、光栄に思います。宜しくお願い致します」


5歳の天使が恥ずかしそうに、ぎこちない様子でささやかに微笑んだ。





この天使なエリックが、カスティル家の養子となった理由は。


昨年魔法を必死に学んでいる間、私に婚約者が出来たのだ。


婚約者のカール・バージェント。

彼は、伯爵家の長男でバージェント家の跡継ぎである。カスティル家のひとり娘の私が結婚して家を出ることで、他家より、優秀な跡継ぎ候補を養子として受け入れることになった。それがエリックだ。


カールと私は政略上での婚約ではあるが、カールは優しそうな子で不満はない。

まぁ精神年齢おばあちゃんを超えた私には、幼い少年との婚約は犯罪めいていて後ろ暗さはあるが。


しかし貴族というものは、自分で選べぬ道を進まなければならない時もある。


いちおうこの世界での年齢5歳(当時)。

だが見た目若くとも、精神年齢おばあちゃん超えである私をあてがわれるとは可哀想に…と不憫に思う眼差しをカールに送る。

丸くつぶらな瞳で見返されたが、子供だから厳しい現実が見えていなくてもしょうがない。


せめてお互いを尊重しつつ、互いに誠実であろうと、テレパシーを送っておく。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ