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【完結】転生少女の立ち位置は 〜婚約破棄前から始まる、毒舌天使少女の物語〜  作者: 白井夢子
ここからの始まり

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1. フルーリリの目覚め(フルーリリ5歳)

過去編


フルーリリが覚醒した日(5歳)

5歳のとき空に線を描くような雲を見て、飛行機雲だぁ…と呟く自分の言葉にハッとする。

飛行機雲?ひこうきって何?


今私が生きる世界は魔法で空に浮く事はできても、空を飛ぶ乗り物はない。


なのに次々と思い浮かぶ言葉。電車。テレビ。スマホ。パソコン。――どれもこの世界の物ではない。だけど馴染みのある言葉だ。


混乱する中で思い出す。私の前世?を…

田舎だけどわりと裕福な家に生まれて、就職とともに都会へ出て、そこで出会った人と結婚し、2人の子どもに恵まれて、子育てを終えた平凡な人生。

小さなカフェでパートとして働き、お菓子作りやパン作りが得意だったこと、結婚先の家族とソリが合わなくてお付き合いが苦痛だったこと、歳を重ねてどんどん体の不調が増えて人生の重さを実感したこと。


それはもう平凡中の平凡を誇り、平和とも言える人生だった。


そして思い出す、若い頃に読み倒した乙女ゲームの物語。


――これって転生よね?

この魔法のある世界って、もしかしなくても乙女ゲームへの転生では…?


飛行機雲を見上げながら、前回の人生を振り返りつつ、乙女ゲームへの転生を確信した瞬間だった。




…ところで私、何の役を持って生まれかわったのかしら?

散歩を早々に終えて部屋に戻り、マジマジと手元の鏡を覗き込む。


緩くカーブを描く、柔らかく淡い色合いの金髪。垂れ目がちな、アクアマリンのような薄い水色の瞳。ミルク色の白い肌。桜色の頬と小さな唇。


うーん…見た目ヒロインにもなれそうな可愛さだわ。

お父様もお母様も、屋敷の使用人達も皆、天使のような可憐さと褒め称えるし。

フルーリリという名前も、ヒロインっぽい響きがある。

――ヒロイン候補が高いわね。


いやでも。

伯爵家のヒロインって、立場が中途半端じゃない?皆に愛されるシンデレラストーリーを歩むには、男爵家とか平民とかであるべきでは?

それに誰もが振り向くような美しさがあるかと言うと、微妙すぎるわね。冷静に見たら良くて中の上、くらいの顔立ちでしょう。身内の評価なんて過剰評価よ。本気にしたら痛い目を見るわ。


じゃあヒロインを虐める悪役令嬢じゃない?

なんか金髪だし、巻き髪しやすそうな髪型だし。


いや…でも。

悪役令嬢なら公爵家くらいの身分が必要じゃない?

でないとイジメに迫がつかないし、権力を振りかざせないし。伯爵家じゃあ中途半端なイジメしか出来ないわ…。


ハッ!

もしかして悪役の取り巻き令嬢?


ピカーンと雷が落ちたような閃きに衝撃が走る。


そうだわ。そうに違いない。

程よい可愛さ。程よい身分。公爵令嬢の後ろについて、「そうよ、謝りなさいよ!」とか因縁つける役に違いないわ!!


嬉しい役かと言われたら否定しかないけど。ストーリーの進行に必要な役ではあるわね…


不本意ながらそう納得する。




その後、見た目天使の義弟エリックと出会い、その美しさに彼が攻略者であることの可能性を見出す。

そして攻略者(仮)に釣り合う、ヒロインの顔面偏差値に必要なレベルの高さに気が遠くなる。国境に連なる山脈より高い壁だ。リアルな人間が越えられる壁ではない。


人外レベルの美しさを求められることに、乙女ゲームの世界の過酷さを深く痛感する。

きっとヒロインは直視出来ないほどの眩さをもっているに違いない。


改めて鏡の中の自分を見る。

そこにヒロインに必要な眩さがあるかと言われると―やはり否だ。残念だが私は凡庸だ。


これでは――取り巻き令嬢の可能性もない事はないが、それすらに届かない可能性も高い。


通行人A的なモブ以下の可能性も視野に入れておこう。




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