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【完結】転生少女の立ち位置は 〜婚約破棄前から始まる、毒舌天使少女の物語〜  作者: 白井夢子
始まりのその先

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13.元婚約者とその恋人②


「それではジュリアさん、どうぞ」

カールとジュリアが黙ったままなので、場をフルーリリが仕切り出した。


――余計に話を切り出しにくい流れを作るよな、こいつ。

冷めた目でフルーリリを見るケネス。



研究室にある小さなソファーセットに、カールとジュリアが並んで座り、その向かいにフルーリリとケネスが2人で座っている。

こんな話し合いを部屋の中でされていれば、研究に集中できるわけがない。

結局ケネスはフルーリリ達に付き合う事にした。自分がいてもいなくても、地獄のような時間を過ごす事には変わりない。色々と諦めて、目の前で始まる出来事を見ていることにした。



フルーリリに話を振られたジュリアが口を開く。

「あの…フルーリリ様。私、改めてフルーリリ様に謝りたくて。この前は取り乱してしまってごめんなさい。でもカール様のこと、本当に悪気はなかったんです。いつか離れなくてはと覚悟はしてたんです」

「ジュリア…」

カールが気遣わしげにジュリアを見る。


「あ。はい。それは以前にも伺いました。それで今日はどんなお話を?」

フルーリリがあっさりと話の先を促す。



――スゲェもん見せられてるな…

ケネスは早速遠い目をし出した。



「あ、あの…フルーリリ様が悲しまれているんじゃないかってずっと心配してたんです。こんなに素敵なカール様とお別れするなんて、私だったら受け入れられる事じゃないですから…!」

「ジュリア、君って子は…」

ジュリアの言葉に感激したように言葉に詰まるカールを見て、フルーリリが口を開く。


「そうですか。私は大丈夫ですよ。どうぞお二人でお幸せになってください。それで他には何か…?」

「え……」

あまりに淡々と話を進めていくフルーリリに、2人は話す言葉を失った。





「話は終わったのか?まぁコイツも何とも思ってなさそうだし、そもそも裏切った奴なんてどうでもいい話だろ」

「ケネス…」


『信じられない、なんて酷いことを2人に言うの?』というような目で自分を見てくるフルーリリに、『お前の対応の方が信じられねえくらい残酷だろうが』という思いを込めて視線を返す。


「それよりあんたら、自分の先を心配した方がいいんじゃないか?ジュリアだっけ?あんたが目指す仕事って、カスティル家の独占市場だろ。仕事を見つけるのは、かなり絶望的になったんじゃないのか?」

「え…?」

ケネスの言葉に固まるジュリア。


「あんたも伯爵家の跡取りだったのに、この件でもう無理になったんだろ?気の毒だよな」

「は?」

「あんたらの婚約って家同士の繋がりだったんだろ。それを簡単に潰すような人間は、普通誰も信用しないだろうし、まぁ当然だよな。なんか妹が婿を取って跡を継ぐって噂になってるよな」

「……」

更なるケネスの言葉に顔色を悪くしたカールは、父の態度に心当たりがあって動揺する。




「大丈夫よ、ケネス。2人には愛があるもの。何もかもを捨ててまで手に入れたからこそ、真実の愛って話になるのよ」

「真実の愛だけで生きてけるのかよ。仕事も地位も無くしてまでの愛なんて、呪いじゃねぇか」

「そりゃ私には無理だけど…でも考えなしにお互いを選ぶわけないでしょう?お互いが幸せならそれでいいんじゃないかしら」

「お前適当すぎるだろ…まぁどうしても生活出来なさそうだったら、この女の仕事先でも紹介してやったらいいんじゃないか?カスティル家の力なら、どこかの職場にねじ込めるだろ」

「それは無理ね」


フルーリリとケネスの会話に、厳しい現実を突きつけられ、カールとジュリアは、ただただ震えるしかなかった。




そんな2人の様子に気づき、フルーリリは2人に優しい声をかけた。

「ジュリアさんは仕事が見つからなくても、永久就職という結婚がありますし、カール様も妹さんがいるから、バージェント家の将来も安泰ですよ。何も問題もないですから、安心してくださいね」



――この2人にとって安心できる要素が何ひとつ無いだろうが…

ケネスはフルーリリを横目で見て、目の前に置かれたお茶に手を伸ばした。もはや何も言うことはない。




我に返ったジュリアがフルーリリに声をかける。

「あ、あの、フルーリリ様。私たちお友達になりませんか?」

「え?」

フルーリリがジュリアの言葉に驚く。



――友達として繋がって、カスティル家に仕事を斡旋してもらう算段か。この女もたくましい奴だな。

ふうんとケネスは事の成り行きを見る。



ジュリアが続けて明るくフルーリリに話しかける。

「平民のケネスさんとそんなに親しいんですもの。私達もお友達になれると思うわ。フルーリリ様はいつも1人でいる事が多いと聞いてるし、これからは私をいつでも頼ってくださいね」



フルーリリは少し考えたあと、にっこり微笑んでジュリアに答えた。

「流石に友人は無理ですけど、知人にはなれるかもしれませんね。私たちはそこから始めましょう?」




ケネスは思う。それははっきりと拒否するのと同じだろう。相変わらず残酷な奴め。




こうして地獄の話し合いは終わった。

肩を落としたカールとジュリアは部屋を出て行き、フルーリリはダランソン先生の会議が終わるのを待ち、ケネスは研究に取り掛かった。

――いつもの日常に戻っていく。



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貴族らしい言葉遣いしながら、自分の好きなように場を仕切れるフルーリリちゃん、好き
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