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鉄壁の運び屋 参ノ式 ー九つの迷宮と盲目の怪物ー  作者: きつねうどん
第三章 土地神
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第仇話 白銀

【コード:000 自動承認 ナビゲートを起動するね!】


「零央のナビゲートがこんな所で役に立つとはな。だが、話の中にあった手綱は何処にあるんだ?」


「もしかしたら、他の下町に手がかりがあるかもしれないよね。私、ちょっと皆んなに連絡してみるよ」


光莉が最初に山岸の方に連絡を入れると中々、出る気配がなかった。


「向こうも忙しいか。旭の方は出てくれるかな?」


すると直ぐにかかるのだが、声が遠い。

裏でヒソヒソと話しているように思える。


「おい、山岸。俺の所にかかってきたぞ。何で無視するんだよ」


「言っただろう?女の子と会話するには心の準備が必要だって。ほら、朱鷺田。光莉さんだぞ。ちゃんと返答しないと」


「えっ、ちょっと待ってくれよ!」


「おいこら、野郎ども。3人まとめて、後で説教な」


その言葉を聞いて、児玉が苦笑いを浮かべた。


「光莉さん、失礼しました。宜しければ、マッサージでも致しましょうか?」


「いやぁ、良いかな。今はお前達を縛り上げる手綱が欲しいかな」


笑顔でそう言う光莉に望海は笑いを堪えていた。


「手綱?もしかして、光莉の姉さんも気づいたのか?今何処にいる?」


「さっき、都筑の下町に行ってたんだ。そこの神社にさ、真神っていう狼の神様がいて祀られてるんだよ。使役する為には手綱が必要なんだ」


そのあと、無線越しで3人は会話を始めた。


「旭、折角だし集合しないか?協会近くはどうだろう?もうすぐ、槍と手綱の用意も終わる」


「そうだな。そう言えば、希輝は何処にいる?彼女に槍を渡しておきたい。大事な物なんだ。怪物を仕留める為のな。というか、今危ないんじゃないか?」


「え?」


次の瞬間、光莉だけで無く皆の足が震え出す。怪物の登場だ。

しかし、今回は意味合いが違うようだ。

案内人の2人が目を見開き、空中を指さしている。


「な、なにあれ!」 「黒い。ナマズ?」


地下を突き破り、顔を出すのは蛇にも似た巨大ナマズだった。

何かを欲しているのか?口をパクパクさせ餌を待っている。


「ひっ、なんですか!?あの怪物!あんな生物が比良坂町の地下に!」


「これにどう対処しろと言うんだよ!何mあるんだ!この怪物!」


頭身の部分だけでももう既に10m近くあるのだから、全長はその何倍もあるだろう。

周りの人々が、恐怖する中。1人だけ、皆の前に出て立ち向かおうとする存在がいた。それが零央だった。


【コード:000 自動承認 浮遊を起動するね!】


「零央君!やめてください!幾ら何でも、無謀過ぎます!」


引き止めようとする望海に対して、児玉は目を泳がせ何も言えずにいた。

零央さえも対処出来なければ、本当に誰もこの怪物に手出しは出来ないだろう。目に涙を溜め、絶句するしか無かった。

自分の息子の限界を垣間見て、父親として何も出来ない自分の不甲斐なさに落胆を通り越して絶望していた。そんな時だった。


『ワォーーーーン!!』


何処からか、心に響くような遠吠えが聞こえる。

そのあと、周囲はダイヤモンドダストが現れ白銀の世界へと包まれた。


「アギャアアアアア!!」


次の瞬間、怪物が悲鳴をあげる。それですらも、望海達は耳を塞ぎ恐怖していたが零央は吸い寄せられるようにジッと真神を見ていた。

真神は怪物に噛みつき、その大きな身体にしがみついている。

怪物はもう無理だと判断したのだろう。地底深くへと潜って行った。


「オオカミさん?」


「えっ、ちょっと!零央君!玉ちゃん、良いの行かせて!?危ないんじゃ」


「いや、怪物は一時期とはいえ去ったんだ。今は零央を信じてやろう」


零央の目の前には白銀の毛並みの一匹の狼がいた。

真神はジッと、自分と同じ(あお)い瞳を持つ零央を見つめている。


『成る程、本来であれば存在せぬ代物か。(われ)と同じく、あり得ぬ存在よ』


「ちがうよ。れおはここにいる!みんなといっしょにここにいるんだ。オオカミさんもれおといっしょ、いていいんだよ」


そう言うと真神は零央に寄り添い、側にいるようだ。

認められた相手、そう言っても差し伝えないだろう。

そのあと、零央は彼の背に跨り。望海達の方へと来た。


「姉貴、早く手綱を用意しないと。逃げる事はないと思うけどね、念のために」


「そうですね。それにしても、神秘的というか何というか。あれ!?ちょっと!零央君!」


「パパ!れお、さきにおみせにいってるね!オオカミさん、いこう!」


零央の瞬間移動により、瞬く間に移動してしまった。


「聞き分けの良い零央が子供みたいにはしゃいで...花菜ちゃんにも報告しないとな。これは良い兆しだ」


その一部始終を見ていた姫乃達はこう提案した。


「まず、手綱を受け取る相手と弐区に向かう人材は必要だわ。二手に分かれましょう。私達は真神の様子も気になるし、そのまま弐区に向かうわ」


「分かりました。では、私と圭太で向かいましょう。光莉と児玉さんはそのまま協会方面へ向かってください。後で合流しましょう」


そのあと、光莉と児玉は協会付近へと向かうが何故か目の前に刀を突き出されてしまった。

制服には赤いバッチがあるのを見るに、地下の運び屋である事は明白だろう。

額に鉢巻きをし、険しい顔を見るに武人、軍人気質なのが目に見える。


「め、珍しいな。地下の運び屋がここにいるなんて」


「普段は地下にいるとて、稀に地上に顔を出す事もあろう。拙者の名は曲輪内(くるわうち)。仲間がお呼びだ。案内する」


「何か、凄い人に会っちゃったね。曲輪内家って結構名門の家じゃなかったけ?」


「ここら辺で屋敷を構えてるって噂だな。一族も初期から住み着いてて。武士とか軍人も輩出するお堅い家だって言われてるな」


そんなヒソヒソ話をしながら、2人は合流地点へと辿り着く。

そこには山岸と旭が待機しているようだった。他メンバーは各下町の被害状況や周辺住民の避難誘導などに追われているのだろう。

それぞれの手には槍と手綱が握られていた。


「光莉さん、これ使って俺たちを縛り上げないで下さいよ。無駄遣いしてる暇ないんですから」


「分かってるよ。さっきさ、真神に会えたんだ。零央君に懐いてて一緒に弐区の方に向かって行った。やっぱり、他の下町も危険な感じ?」


「一時的ならまだしも、何度も被害を与えれられたら流石に厳しいかもな。ここら辺はまだ。沢山運び屋もいるし。避難経路も確保出来るけど、他の所はそうもいかないだろう。だが、真神に会えたって言うなら安心だな。それと希輝にもコレを渡しておいてくれ。必ず力になってくれるはずだ」


「分かった、洛陽か小坂辺りで渡しておく。まだ、この戦いは終わった訳じゃない。気をつけろよ。地理的に肆区まで来たらまた壱区に戻ってくる可能性があるしな」


その言葉に山岸も旭も双方苦笑いを浮かべた。


「勘弁してくださいよ。先輩達が無理なら俺達だって対処出来ないだから。比良坂町ってもしかして、地獄みたいな所だったりするのかな?ずっと、コレが当たり前みたいな感覚だったけども」


「何言っているんだ、山岸。毎日が戦場みたいなもんだろ?今更なんだよ。それじゃあ、後は頼みますよ。俺達は俺達でやらないといけない事もあるんでね」


そのあと、2人はそれぞれ自分達の担当場所へと戻って行った。

光莉や児玉はそのあと、弐区へと向かう。そこでもまた、衝撃的な物を目にする事になった。



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