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鉄壁の運び屋 参ノ式 ー九つの迷宮と盲目の怪物ー  作者: きつねうどん
第三章 土地神
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第捌話 狼狽

「よっし、主要な物はリュックにまとめたし!後はお菓子だけかな」


「光莉、遠足気分でどうするんですか?戦闘も考慮しないと行けないんです。身軽で行けないと」


作戦会議のあと、望海達は一旦拠点に戻り下町に向かう為の準備を整えていた。

そんな時だった、喫茶店の黒電話が鳴る。


「近いから、僕が出るよ。姉貴達は作業を進めてて。はい、喫茶ハルキクです。...花菱さん?分かった、姉貴なら側にいるよ。今変わるから」


珍しい通話相手に望海は首を傾げながらも、受話器を取った。


「はい、お電話変わりました望海です。姫乃さん?どうされました?」


「良かったわ、貴女が直ぐ近くにいて。率直に言うと、都筑が大変な事になってるの。街中に奇妙な足跡があって、犬よりも大きいのよ。皆んな噂してるわ”狼“なんじゃないかって」


本当に率直過ぎて、理解が追いつかない望海だったが。話を掘り下げる為にも「狼」という単語について自分の知識を話した。


「えっ?でも、狼ってまず少なくとも比良坂町には居ませんよね?父から昔、若いオスの狼がいてその子も懸賞金にかけられて駆除されてしまったと悲しいお話を聞いた事があるのですが?」


「えぇ、比良坂町の昔話としても残ってるわよね。だけどね、飛鳥さんや葵さんから聞いたの。都筑の下町には狼を神として祀っている神社があるんですって。しかも今尚、信仰が途絶えていない。望海さん、毎回テストでこの私と競い合ってる仲なら言いたい事分かるでしょう?」


「もしかして、下町にまだ狼の子孫が残っているという事ですか?だとしてもです。私達は比良坂町の地下に眠る大蛇の対応に追われています。行きたいのは山々なんですが、人も足りないですし優先順位はつけないと」


狼狽える望海に危機感を覚え、光莉や児玉も彼女に近寄って来た。

その言葉に姫乃はショックを受ける何処か嬉しそうに返答した。


「あら、なら丁度良いじゃない?貴女の探している大蛇、その狼が倒してくれるかもしれないわよ」


「...え?」


そのあと、計画当初とは違い。急に洛陽に行けなくなった事を希輝達に連絡した。


「オッケー。緊急事態だし、こんな事もあるよ。望海達はこのまま都筑に向かって。洛陽と小坂ならアタシ達も移動出来るし、臨機応変に行こう。折角なら、喫茶店近くの下町も様子見に行った方がいいんじゃない?合流はそれからでも遅くないと思うし」


「ありがとうございます。何かあったらいつでも連絡下さい。ふぅ、急ピッチにはなりましたけど、なんとかなりそうですね」


連絡を終えた望海の視線の先には他のメンバーと、大きな観覧車が見える。都筑のシンボルとして存在しているのだが、昨日の騒動もあり現在は運転休止中のようだ。


「あー、小籠包食べたいな。玉ちゃん、晩御飯でいいからさ。作ってよ」


「光莉は本当に異国の料理が好きなんだな。此処もそう言う店が多いし、尚更食いたくなるか。まずは下町に向かおう。幸運な事に直ぐ側に入り口もあるみたいだしな。急ぐぞ」


下町に向かうと、もう既に姫乃達3人と2人の案内人がいた。


「凄いな、人気者3人に会えるなんて。何だか、ワクワクしてきたよ。初めましてかな?僕の名前は二ノ宮飛鳥。姫乃の友人なんだ。宜しくね」


飛鳥は爽やかなウインクをした後、下町について紹介をし始めた。


「此処には真神(まかみ)、狼の神様を祀る神社があるんだ。とても神秘的で美しい所でね。近くには牡丹庭園もあるんだ。本宮はこの長い階段の下。行ってみると良いよ」


彼女に下へと続く階段に向かうよう催促される。

望海達は首を傾げるも、とりあえず言葉通り向かうようだ。


「けいた、あれってなに?おうちみたいなかたちしてるね」


「あぁ、絵馬の事だね。凄いな、全部狼が描かれてる。本当に信仰されてるんだ」


「しかもこれ、願い事的に火事とか窃盗の類いばかりだ。そう言うのに傾倒した神様って事だよね?」


「前日も火災がありましたし、此処を知る方々が揃って絵馬に書かれたんでしょうね。比良坂町にこんな所が眠っていたとは」


出来るだけ、じっくり見たいのは山々だがいかんせん望海達には時間がない。姫乃は概要と、今後どうすれば良いのだけを伝えた。


「中々興味深いでしょう?近くの看板にこの神社の伝承が書かれているわ。“手綱”を用いて、真神を使役せよ。しかし、真の善人でなければ真神は其奴を罰するだろうってね。真神は賢く、人語を理解し人心ですら見透かしてしまうと書かれているわ」


その言葉に零央以外震え上がった。大なり小なり、自分では不適切だろうと自覚しているのだろう。


「いやぁ、おじさんにはちょっと厳しいかな。神を使役するなんてそんな烏滸がましい事出来ないよ。ほら、望海とか光莉の方が適任じゃないか?」


「無理ですよ!腹黒優等生って周りから言われてるんですから!真神が私を気に入ってくれるとは思えません!圭太、お願いします!」


「ちょっと、僕に振らないでよ。歌舞伎であれだけ悪女を演じてきて僕の心は真っ黒だからね。この中で1番不適切だよ」


その言葉に葵は苦笑いを浮かべた。無理もない。比良坂町の顔と言われる運び屋達が揃いも揃って弱音を吐いているのだから。

そんな中で冷静に周りを見ていた零央を葵は評価した。


「君は、狼さんと仲良くなりたいと思う?」


「れお、オオカミさんにあったことないんだ。だからわからない。でもね、いてほしいなっておもうんだ」


「それはどうして?」


「オオカミさんとれおはにてるから。さいしょね、しんじてもらえなかったんだ。れおのこと。みんなそんなのいないって、てんしみたいだって。でもね、パパとかのぞみおねえちゃんはれおのことみとめてくれた。なかまだっていってくれたんだ」


「そうなの。大丈夫、君は今此処にいる。私達の仲間よ。姫乃さん、飛鳥さん、どうでしょうか?零央君にお任せすると言うのは?」


「圭太さんまでこの有り様だもの、仕方ないわね。ただ、手綱の行方が分からないわ。それ以上に真神の行方も。一回、地上に戻ってその探索に向かいましょうか?」


「そうだね。案内人、移動を頼めるかな?」


青と緑のセーラー服をそれぞれ身につけた少年少女は頷き、皆を地上出口まで戻す事にした。



光莉が「小籠包食べたい」って言ってますけど完全に作者の本音ですね。今シリーズ読んで頂いてる読者の皆様なら周知の事実だとは思いますが作者は基本的に食いしん坊で食べ歩きとか旅行先で美味しい物を食べるのが楽しみな人です。

お土産でお菓子とか買っても後で食べる機会がなくて山積みになってるんですよね。今、函館、新潟、名古屋、大阪、神戸、福岡、沖縄のお菓子がある状態で本当に店が開そうです。

これを書いた後、しばらく横浜中華街に行ってなかったので早速行ってきました。


個人的に横浜や神戸と言った港町や金沢や倉敷と言った昔ながらの街並みが好きですね。和風で統一されてたり異国感を味わえる場所が好きなのかもしれませんね。

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