第伍話 カササギ祭り
山岸達は周囲を警戒しながら、千体の下町を探索していく。
「本当に惨いものね。あの短時間でこんなに綺麗なトンネルを作るなんて。破片ですら見当たらないじゃない」
「本当に人智を超越するような存在だよな。でも、それ以上に天井が凄い事になっているんだが。これじゃまるで天の川みたいじゃないか」
案内人の2人にとってはいつもの光景のようらしく、母親は笑顔でその説明をしていた。
「大丈夫、害はありませんよ。地上じゃ、光の妖精の存在も珍しいでしょう。でもね、8月の数日間だけ地上に出て求愛のダンスを踊るんです。昔の人はそれに感銘を受けて、お祭りを開催したそうですよ」
「小町も知ってる!凄い有名なお祭りなの!お祭りの間はカップルの願いが叶う期間って言われてて。バレンタインデーみたいにお互いに贈り物をすると更に効果が高まるって!」
「じゃあ、寿彦さん良かったわね。私達、毎日がバレンタインデーみたいなものだし。偶然、その日に贈り合ってる可能性もあるわよね?」
「その度に3倍返しをしないといけない俺の身にもなって欲しいよ。誰だよ、こんな話を広めたのは」
そう言いながらも嫌そうにしないのを見て、青葉は笑みを溢していた。
「でも、それを考えると。下町って比良坂町の伝承とか文化に密接してる場所でもあると言う事だよな。何となく、上と下は違うみたいなイメージを持っていたけど案外繋がっているのか」
「だろうな。だとしたら、あの怪物の対策方法もこの下町に眠っているかもしれないと言う事だ。案内人、他にはどんな伝承があるんだ?俺達も下町の事が知りたい。俄然興味が湧いてきたんだ」
隼や颯の言葉を聞きつけ、案内人の息子は少し考えた後口を開いた。
「だとすれば、有名なのは鍛冶場職人か。大体、武器職人って言うのは下町出身者が多い。血統でなくとも、技術を代々受け継いでいて。運び屋の助けをしている所も多いと聞く」
その時、皆気づいた。颯の弓や初嶺の刀は此処下町で生まれ、黄泉や愛が改良し実戦で使えるようになるまでしていた事に。
「通りで仕事が早い筈だ。外部に仕事を委託してたって事になる訳だし。後で3人にも話を聞いてみよう。何かの手がかりが掴めるかもしれない」
そのあと、鍛冶場に案内され。その事実が本当である事を知る。
その時、息子だけが彼らに従事していたが先程、連絡があり愛と初嶺が此方に向かうという事で母親だけ上に向かうようだった。
そのあと、封筒を持った愛と初嶺と合流する。
しかし、ある人物がいない事に隼は首を傾げた。
「あれ?Dr.黄泉は何処に?望海達と同行しているの?」
「黄泉先生は肆区の方々と一緒に調査に向かわれました。昨日、区の間に地下通路を発見したとかで。下町との関係性を探るそうです。それと、お待たせしました。検査結果も出ましたので共有させてください」
山岸は愛から書類を受け取り、ある文字をみた瞬間。目を見開いた。
そのあと直様、皆の手を引こうとする。
「嘘だろ!毒!?早く此処から出ないと!」
「落ち着いてください。触れさえしなければ害はありません。実験の結果。蒸発するとガスを発生させるという事も分かりましたが、幸運な事に地下は湿度が高い。1番危険なのは、怪物が外に出てきた時です」
「今、北部の中心街で除染作業を行なっています。此処にも次期に団体スタッフが派遣されるそうです。今は情報収集を行うのが先決かと」
「そうね。皆には知らせてあるんでしょう?なら、私達は自分の行動範囲で出来る事をするだけよ。問題なのは...」
「怪物の次の目的地って事だな。このままいけば協会付近に到達する。旭達がいるとはいえ、心配だな。一声かけておこう」
そのあと、山岸は旭に連絡をかける。
しかし、違和感のある雑音が入っていた。と言うか、中々通話が出来ない。旭にしては珍しいと首を傾げていた。
「済まない、返答が遅れた。旭だ、山岸だろ?何かあったのか?」
奥から、三味線や手拍子の音も入る。室内で宴でも開いているのかというほど周囲は騒がしかった。
「みどり君、ちゃんと狙ってよ!」
「分かってるよ。こ、こうか?」
「フォームがなってない!投扇興はそんな簡単なゲームじゃないんだよ!谷川さんと変われ」
「何、お座敷遊びしてるんだ!お前らマイペース過ぎるだろ!」
山岸にツッコミを入れられるものの当の旭は余裕そうな表情を浮かべ笑っていた。
「いや、思ったより夢中になっちゃってさ。担当場所が花街になってるのを知らなくてな。聞き込みがてら、店に入ったら鞠理が酒飲んで遊戯に巻き込まれたって訳だ」
「次、旭の番だよ!このままだと谷川さんが勝っちゃうからね!」
「それは困るな。じゃあな、山岸。今良い所なんだ、何かあったらまた連絡してくれ」
「えっ!?ちょ、嘘だろ!切れたんだけど!何なんだあいつら、マイペースっていうか。えぇ!?自由過ぎるだろ、金持ちのボンボンって皆こんな感じなのか?」
動転する山岸が皆珍しいのか、この状況にも関わらず皆笑いを堪えているようだ。
「本当にヤバイなら俺達が駆けつければ良いでしょ?旭さんだって馬鹿じゃない。粗方予想はしてた筈ですよ。しかも、下町で情報収集してるって事は」
「青い肌の行方を追っているって事だしな。俺は旭達を信じるよ。いや、何と言うか。お金持ちだからなのか分からないけど、夜遊びというか俗っぽい事が似合うよな。悪友って言葉がアイツらには良く似合うよ」
タイトルの「カササギ祭り」は仙台の七夕祭りを意識して名付けています。中華圏では七夕がバレンタインデーの代わりになるようですね。
個人的に仙台は古着屋が多い印象があります。何ででしょうね?
最近、困った事に旅行と日常生活の境界が曖昧になってしまって緊張感がないんですよ。何処に行ってもロフトとか東急ハンズを覗いてしまって。普通に文房具とか見ちゃうんですよね。ポケモンセンターとかもあると行っちゃうんですよ。絶対、希輝の手持ちにミロカロス入ってるだろうなと思ってました。仙台でも同じ事をしてましたね。
次回から話の流れて的に2話づつ読んで頂く方が好ましいという事で予定を変更して1日2話投稿にさせて頂きたいなと思っております。
18話+最終回+解説で完結予定です。よろしくお願いします。