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鉄壁の運び屋 参ノ式 ー九つの迷宮と盲目の怪物ー  作者: きつねうどん
第二章 地を這う怪物
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第肆話 森羅万象

「なんか、久しぶりだな。青葉をこうして一緒に歩いてるの」


「そう?確かに、昨日も一緒にいた訳じゃないし。と言うか、寿彦さんなんで無線に出ないのよ。貴方に何かあったのかと思ったじゃない」


「別に良いじゃないですか。女の子と電話する時は緊張する物なんです。心の準備が必要なの」


そんな会話を後ろで微笑ましそうに那須野、翼、小町は聞いていた。


「でも、青葉が戻って来てくれて小町嬉しいの!紅一点も大変だし。所で青葉が昨日いた下町はここら辺?」


「そうよ。あっ、いた。2人共、待っていてくれてありがとう。昨日はとても助かったわ。貴女達がいなければ千体は大混乱になってた。感謝しかないわ」


年齢的に親子に見える紺色の制服に身を包んだ2人組がいた。

肝っ玉母さんとそれに気押された息子という関係性なのだろう。


「いいえ!でも、驚いたのよ。青葉さんが復帰するって聞いて、しかも此方に来てくれるって知った時本当にびっくりして」


「何を言っているの。此処は実家の近くだし。私達が通ってた高校があるんだもの。大切な物を守りたいのは当然の事でしょう?当たり前の事をしただけよ」


「青葉さん、俺ちょっとご両親に挨拶してくるよ。それで、お義父さんを泣かせてくる」


「寿彦さん、やめて。うちは朱鷺田さんの家と真逆なのよ。「青葉が男の子だったらどれだけ良かったのに」って幼い頃から良く言われてて。だから、プレッシャーも凄くて。ストレス太りも多かったし。でも、女性である自分を認めて欲しくてダイエットもした。両親からしてみれば気が気じゃなかったと思うけど、無理なダイエットをしていた訳だし」


「でも、山岸が飯作ったお陰で改善していったんだろう?両親も凄い喜んだと思うぞ。その涙も嬉し涙だろう」


「そうね。医者に診てもらっても結局は自分で何とかするしかないし。この下町みたいに迷子になっていた所を寿彦さんが助けてくれた...あら?寿彦さん?何処に行ったの?まさか、本当に挨拶に行ったんじゃないでしょうね?」


しかし、そのあとの事だった。隼が駆け足で青葉達の所に来たのだ。

先程の出来事もあり、慌てているように思える。


「早く、此処から離れて!怪物がくる!」


「皆んな!早く逃げろ!やばいのが来るぞ!」


無線機を持った山岸も慌てて皆を守るように隼と共に下町の入り口から遠ざけようとする。

そのあとだった、地面が細かく揺れ出す。何かの振動だ。

青葉は足が竦むような錯覚を覚え、山岸にしがみついている。


「寿彦さん!何!?何か起こってるの!」


「さっき、颯から連絡があったんだ。怪物が千体に向かってるって。やばいぞ、下町を突き抜けて別の下町に移動してる。ほら、来たぞ!」


感覚的にも地下でかなりの移動速度で蠢いているのが想像出来る。

その光景に隼以外の4人は勿論。案内役の2人も絶句していた。

石畳が浮き上がり、散乱。家屋も瓦が次々に外れ、転げ落ちていく。

何故、こんな物の上で生活出来ていたのかと不思議になるレベルだった。


「お、収まった?いや、何なんすかあれ!どう考えても、やばい生き物でしょ!北部で何があったんすか!」


翼の問いかけに対して、隼は冷静に懐中時計を手にしているようだ。

しかし、そのあと珍しく舌打ちをしているのをみるに危機的状況には変わりないだろう。


「あの影を見て、探索をして約15分ぐらいか。思った以上に動きが速すぎる。チンタラしてたら本当に比良坂町が大変な事になるぞ」


「末っ子君、私達にも話してもらえる?北部で何があったのか?」


その言葉に頷くと同時に、颯も駆けつけ詳細を話した。


「成る程な。じゃあ、正体を全て知ってる訳じゃなくて。影を見たと言う事か。だとしても相当デカいぞ。下町の壁を突っ切ったんだから」


「節子嬢の言う通り、形状は大蛇のような物と見て間違いないと思う。比良坂町は思ったより訳ありの土地臭いな。何でこんな所に移り住んだんだ?」


その言葉に颯は祖父母の事を思い出しながらも、一回頭の隅に置き自分の考えを提示した。


「元々、比良坂町に住んでいたのは青い血の人間だ。芸能家系が犇きあっていたってのは俺達でも良く知ってる。本当だったら其奴らが1番この事を良く知ってる筈なんだ。でも純粋な青い血の一族なんて殆ど居ないだろう?何かしらの血が混じっている。そんな中で、本来の比良坂町ですらも消えてなくなってしまった」


「だとしたらよ。今、必要なのは現在でも青い血に固執して近親婚を繰り返してる存在という事になるんじゃねぇか?所謂、全体からみれば過激派連中にはなるだろうけど」


その言葉に案内人の息子が何か考えたあと、口を開いた。

ただ、本人でも信じられないのか?しどろもどろになりながらと言うのは否めなかった。


「噂で聞いた事がある。何処かの下町で隠れながら青い血の一族が暮らしてるって。でもそれは仕方のない事で、逆なんだ。青い血だから、近親婚を繰り返しているんじゃなくて。近親婚をしなければならないほどの身体的特徴を持っているから、そう成らざる負えないってだけで」


「じゃあ、相手方には相手方でそれなりの事情があると言う事ね。でも、おかしくないかしら?その言い方だと、人前に出られないような容姿という事になると思うけど」


その言葉に山岸は何かに気づいたのか、ハッとしながら慌てた表情で話を続ける。

青い血を持っているという事は、濃い血を持つ颯と同じ容姿である可能性が高い。彼と始めて会った時にみた青白い肌を思い出したのだろう。さらに発想を展開させた。


「青葉、もしかして。青い血の本来の姿は、青い“肌”を持つ人々なんじゃないか?何かの遺伝的要因が合わさって、青い肌の人々が生まれた。でも、それを周囲は奇妙に思い。煙たがっていた。居場所のない彼らは訳ありの土地なのを分かっていながら比良坂町に移り住んだ。でも、そのあと俺達赤い血の人々が来ただろう?遺伝的に緩和していったのは変わりないものの、一部の人間は受け入れられずに今尚。下町に取り残されてる」


隼は青い肌の人間の事を考えながら下を見ていた。

比良坂町に長くから住む、青い肌の人々達。下町は彼らの最後の居場所と化していた。

そのあと、山岸は全体にその事を通達。青い肌の人々の行方を追い。

自身達は目の前にある下町の調査へと向かった。

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