第参話 大河
「皆様、協会からご足労頂きありがとうございます。それでは、ご案内致します」
北部の中心街である大友に足を運んだ隼達3人は地下の運び屋の案内の元、下町へと足を踏み入れた。
【コード:5000 承認完了 鬼火を起動します】
「思ったより暗いな、忍岡の比じゃねぇぞ。本当にこんな所に人が住んでのか?」
確かに颯の言う通り、照明がなければ1m先ですら状況を把握するのは難しいだろう。
初嶺は壁際に手を触れると凍えた煉瓦がそこにはあった。
聴覚に自信のある隼は耳を澄ませ、情報を探るようだ。上や真横から水の流れる音が聞こえてくる。
案内役である、青い帽子の少年に声をかけると此方に振り返った。
「はい。ただ、地上では大きな川が流れているでしょう?ここは、その川を利用した下水道兼貯水地になっているんですよ。それ以上に下水道を挟んで男女別々に暮らしているという有り様でして。他の下町も特徴的ですが、ウチも負けず劣らずと言った所ですかね」
「君の他に仲間はいるの?」
「後、2人ほど。此処から先の商店街に通じる入り口が僕達の集合場所です。公園も側にあるんですよ。皆さん!静かに!」
そういうと3人はピタッと足を止めた。
初嶺が2人に目配せするものの、理由がわからないのか揃って首を横に振っていた。
そのあとの事だった、1匹のネズミが現れる。
「何だ」と皆、気を落ち着かせた所に大きな影が一瞬現れネズミを飲み込んだ。
自分達の知らない所で「バキッ、ポキッ」という咀嚼音がする。
4人は身体を震わせながらも後退りした。
「退避!退避!」
颯が慌てて2人の背中を押し、地上出口まで誘導する。
その思いに応えるように焦った様子で、すぐさま逃走を開始した。
「隼、見えましたか?私は影しか無えなかったのですが?」
全力疾走したのか?息も絶え絶えになりながらも彼は呼吸を落ち着かせようとする。
「ゲホッ、ゲホッ。いや、流石に暗すぎて正体までは見れなかった。だけど、何だ?姿形は分からないのに不気味な事だけは理解出来るんだ。颯先輩の書庫にだってあんな物が記載されてる本なんてなかった」
「未知の生物、そう言うしかねぇだろうな。案内人、別に以前から不審な生物がいた訳じゃないんだろう?」
「はい、と言うより。先程のネズミもそうでして。下町は住民の為に環境整備を長年してきました。野生動物が入り込む事自体が珍しい事でして。地上と兼任して運び屋業をされている方も噂で耳にしますが少なくとも地上との出口が少ない此方ではあり得ない事かと」
「成る程。じゃあ、一連の騒動でどっかから侵入経路が生まれて動物達が入り込んでしまったと言う事か。俺達はその穴を塞ぎに行かないといけない。颯先輩、初嶺」
「あぁ、再度行くしか無さそうだな。最悪、下町で起こった事が地上にまで影響する可能性がある。2人とも気を引き締めていけよ」
4人で慎重に元の場所に戻ると何事もなかったように静まり返っていた。初嶺が率先して前に出ると何かに気づいたのか、手招きをしている。
皆で其方に向かうと何か引きずった跡のような物があった。
初嶺は自身の胸ポケットから何かのキットを取り出し、先程の生物の体液であろう物を採取した。
「後でDr.黄泉や愛さんに鑑定してもらいましょう。手がかりは多いだけ良いかと。だとしても、怪物の行方が見当たりませんね。この短時間で移動出来る物なんでしょうか?」
「或いは全長自体が長い可能性がある。あれは頭で胴体は別の所にあるのかも」
その隼の言葉に颯は顔を真っ青にした。
「おい待てよ。比良坂町の面積分かって言ってるのか?縦横約20km、400㎢しかないんだぞ。そんな奴がこんな狭い敷地をウヨウヨしてるってのかよ!あり得ないだろ!」
「そうですね。この怪物の長さが400mだと仮定して町の端から端まで移動するとしましょう。移動速度にもよりますが、2時間あれば移動可能かと」
「いや、それは言い過ぎ...とも言い切れないか。困った事になったな。地下にこんな魔物が潜んでいるとは。颯先輩、まず俺達は怪物の侵入経路を封鎖しないといけない。それ以上に行方を掴まないと」
そのあと、異変に気づいたのか?案内人の仲間達とも集合。この迷宮の調査に向かった。
「此処が行き止まりであってる?」
「はい、そうなんですが。これは見事な穴が空いてますね」
煉瓦などの痕跡も何処へやら?迷宮の端まで来たのにも関わらず、ぶち抜かれたように穴が空いていた。
颯はコンパスで方角を探ろうとするが、ある事に気づき顔を真っ青にした。
「不味いぞ、隼。方角的に千体に向かってる。先回りしないと大変な事になるぞ」
「分かってますよ。それ以上に山岸先輩達に連絡しないと。人数が多いとは言え、怪物相手に太刀打ち出来るとは思えない」
「と言うより、私達は皆で協力して怪物の足止めと体力を削ぐ事が一番理想的な立ち回りではないかと」
「そうだな。肆区にも運び屋がいるし、下町もある。それまでに何とか体力を削って、弱らせねぇと勝ち目はない。俺達は俺達の出来る事しよう。隼、お前は直ぐに千体に向かえ。俺は連絡を入れてから、後で合流する。初嶺はそのまま愛達と合流するんだろう?」
「はい。結果が出次第合流します。それではお2人共お気をつけて」
その言葉に2人は頷き、行動を開始した。
大阪に続いて、札幌というか小樽に行った時の話をしようと思います。去年の11月頃、雪が降る前に行っておこうという事で北海道に行ったんですよ。飛行機を利用するので当日の天候が気になるじゃないですか?なので札幌の天気“は”確認したんですよ。
「晴れなら大丈夫そうだな」と安心していたんですが、作者は北海道の広さを舐めくさっていました。場所によって天候が異なる事を初めて学びましたね。
小樽に到着した夜「なんか、寒いな。北海道だから仕方ないか」とそのまま眠りについたら翌朝、ホテルから見える小樽運河の屋根に雪が積もってまして。ホテルの従業員の方も驚いていたので丁度初雪の日に小樽に来てしまったんですよね。
そのあとは酷い物でほぼ雪で視界がホワイトアウト状態。雪に慣れてない関東民の作者は興奮の悲鳴をあげました。それ以上に「これ、電車大丈夫かな?飛行機も心配だ」となりまして小樽から新千歳空港まで1時間以上かかるので電車が動いている内に移動しておこうとなりました。
ただ、雪が降ってたのは小樽だけで札幌は晴れてるんですよね。新千歳空港も問題なく、動いていました。
運が良いんだか、悪いだかよくわかりませんでしたね。