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おおきなのっぽの古暖炉

作者: 1Q七一(いちきゅうなないち)

 


 ♪大きな のっぽの ふる暖炉

 ♪おじいさんの暖炉 家族の暖炉

 ♪百年いつも 使っていた ご自慢の暖炉さ

 ♪おじいさんの 生まれた朝に 作った暖炉さ

 ♪今は もう 誰も使わない・・


 ある古民家に電気メーカーのエンジニアが訪れた。

 常に新しいモノを開発するのが彼の仕事だが古いモノも好きだった。

 古民家を見て回るのも彼の趣味の一つ。

 経済的に余裕ができたのでいい物件を見つけ、自身でリフォームしたいと思っていた。


「こいつはいいぞ・・」


 彼はその訪れた古民家の背の高い暖炉を一目で気に入った。

 そして建物を購入。

 休日は足しげく通いリフォームに専念した。

 木造の部分はかなりの修復が必要だが、お気に入りの背の高い石造りの暖炉はほとんど手を加える必要がなかった。

 彼はその暖炉を眺めているうちに、あるアイデアが閃いた。


「こいつはウケるぞ・・」


 その暖炉をモチーフとした最新技術の”電気ヒーター”を開発した。

 そのレトロなデザインと、”省エネ、安全”を謳った電気ヒーターは瞬く間に大ヒット。

 メーカーも彼の懐も文字通り大いに温まった。


 しかし世間はそうはいかなかった。

 大国同士の対立。そして世界的な大不況。

 追い打ちをかけるように異常気象が襲い、ある年の冬、彼の国は北から南まで長い大寒波に襲われた。


 想定外の気温の低下。

 いままでのシステムでは電力が供給できなくなり国は対策に追われた。

 いかに最新テクノロジーであろうと電力がないことには機能を発揮できない。

 電気がないと機械も動かないし暖を取ることもできない。


 企業も一般家庭も一気に困窮とした生活を余儀なくされる。

 先進国といえども現代テクノロジーが回らなくなれば、あっという間に衰退していくことを誰もが痛感し始めた。


「悲観ばかりしてもしょうがない・・」


 あの例の背の高い暖炉のある古民家を購入したエンジニア。

 彼はその頃になると古民家を見事リフォームし終え、休日は都会を離れ主にそのご自慢の古民家で過ごした。

 裏山には薪にする枝が豊富にあり、それを拾ってきて暖炉にくべ、一夜を過ごすのが何よりの楽しみだった。


 仕事も滞ってしまい都会にいてもしょうがない。

 彼は古民家にこもることにした。


 古民家にたどり着くと重いコートを脱ぎ、さっそく暖炉に火を灯す。

 もう手慣れたものだ。

 部屋がみるみる暖かくなる。


 ・・あったかいね・・


 誰かの声がした。子供のものか大人のものかはわからない。きっと気のせいだろう・・


 これでいい・・


 彼はそう呟いた。



読んでいただいてありがとうございました。

他にも少し短編を掲載しておりますのでぜひ読んでみて下さい。

感想、高評価、お待ちしておりますwww

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