来訪
自宅近くにあるラーメン屋が今月末に閉店してしまうというので行ってみた。
カウンター席のみの小汚い店。白いテーブルはくすみ、汚れが目立つ……と
見渡したところで、そう言えば随分前に一度だけ来たことがあったと思い出した。
なんで通わなかったのだろうか。
まあ、駅と反対方向だし、自宅からの動線にないと言えばそうだが。
漫画が数冊と週刊誌もあったので手に取った。
が、先々月のだ。しかし、それはそれでまあ、面白い。
ちょうど今の騒動が始まった頃のものだ。
表紙には今じゃ珍しくもない『UFO発見!?』の文字が。
「だからよぉ、侵略だっての!」
ガラガラ声のもとに思わず目がいった。他の客。二人。男。
ちょうど最近目撃情報が多発しているUFOの話をしているようだ。
まあ、それも珍しいことではない。もはや未確認飛行物体とは言えないかもしれない。
宇宙人、地球以外の知的生命体の存在は疑いようがない。
世界各地で宇宙船が目撃、それも多種多様な形だ。
「人類は見つかっちまったんだよぉ!
国だけじゃなく、企業もロケットを飛ばしてたからよぉ!
とうとう目をつけられちまったんだ! バカヤロォ!
早い者勝ちさぁ! 今に押し寄せて来るぞ! 侵略、侵略ぅ!」
と、いう説も確かにある。
こぞって宇宙人が地球を訪れ、誘拐、侵略の手はずを整えていると。
すでに各国の大統領らは成り代わられ近々、惑星間のある種の
代理戦争のようなものが始まるなどとネット上で陰謀論が飛び交っている。
確かに、不安の声が上がるのもわかる。
世界各地の摩擦、戦争の火種は俺のような一般市民にも見えている。
UFOは他国の兵器、領空侵犯だ、なんて
外国の政府の情報官がテレビカメラの前で言ったくらいだからな。
前から気に入らなかったところにそのうち戦争を仕掛けたりして……。
まあ、それも先週発売の週刊誌の受け売りだが。
「地球は終わりだよ! おわりぃ!」
「まあまあまあ、他のお客さんもいるんだからさ」
と、そう。まあまあまあ。そんなに悲観的になることもないと俺は思う。
侵略する気の宇宙人がいればそれを阻止しようと考える宇宙人もいるだろう。
バランスだ。宇宙人たちにも色々と主義主張、世界情勢があり
この騒動もきっと上手い形に納まり、そのうち宇宙人と交流なんてことに。
そうなればきっと宇宙の美味い飯とか女を……っと、ラーメンがきたきた。
おお、やった! あのガイドブックの写真よりもチャーシューが大きいぞ!
……うわ、まっず。
「あれが地球かぁ」
「確かに綺麗な星だな」
「こうして離れて見る分にはな」
「ふふっ、しかし信じられないな……」
「おいおい、銀河ガイドブックに書いてあることだぜ?
『美しい地球はもうすぐ終わり。一目見に行くことをお勧めする』って」
「でもどう終わるか書いてないからなぁ眉唾ものだよ」
「どうせ、この星の知的生物が馬鹿やらかすんだろう。よくあることさ」