プロローグ
「あっははー、気持ちは嬉しいんだけどね。リョー君ならもっとヒロインみたいな人じゃないと釣り合いとれないっしょ」
そう言って苦笑いしながら、姉ちゃんは家へと戻っていった。
……振られてしまった。勿論、それを予想していなかった訳ではない。
と言っても、別に俺が彼女に嫌われてるとかそういう訳ではない。何ならしっかりと好意も感じていた。……これは俺の妄想などではなく純然たる事実だ。
ただ、彼女は自分を駄目だと、この世界の脇役でしかないと、本当に思い込んでいるのだ。
それもこれも俺と、
「おや、良太ではないか。確か、今日は優子に告白するとか言っていなかったかい?」
今俺に話しかけてきたこの女性、皇 七花さんのせいである。
そもそも俺、古川 良太と七花さん、そして姉ちゃんこと須野原 優子は俗にいう幼馴染という関係性だ。俺だけ一歳年下だが、物心ついた時から高校生になるまでずっと一緒に居る。
そして、この七花さんは昔からずっと優秀だった。腰まで真っすぐ伸びた艶やかな黒髪、美しいという言葉はこのためにあるのかという顔立ち、170cm程度の高めの身長に、出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいるモデルのようなスタイル、常に学年1位の学力に、みんなをまとめ上げるカリスマ性まで、姉ちゃんが良く言うまさに『ヒロインみたいな人』だ。
更に俺も、ダークブラウンのショートヘア、有難いことに上の下程度には整った顔立ち、これも有難いことに180cmとそこそこの長身に、幼いころから姉ちゃんが好きで釣り合う男になろうとした結果の細マッチョ体型、同じ理由での学年上位の学力に、どんな人にもフレンドリーに接するコミュ力を手に入れているので、姉ちゃんの中では俺は『主人公みたいな人』らしい。
因みに姉ちゃんはというと、オレンジベージュのふわふわとした可愛いセミロングの髪、優しさと厳しさを持ち合わせた可愛いという形容詞がぴったりと当て嵌まる顔立ち、160cmを少し下回るくらいの小柄で可愛い身長、モデル体型というわけではないが女の子らしい可愛いスタイル、七花さんに負けず常に学年3位の可愛い頭脳、性格もとても優しく、しかし厳しさも持ち合わせているし、けどやはり暖かく包んでくれる、とても可愛い性格。まじで全部が可愛い、困った時にからかいながも助けてくれるのとかまじほんと愛の女神さまかな?って感じだし成績発表の時に表ではいつもの3位だって気にしてない感じで言いながら裏ではすごく悔しがってるところは戦乙女のように気高いしたまたま帰り道で俺と手が触れあって赤面しながら髪をいじる様は世界遺産だったし結婚した(強めの幻覚)。
……にも関わらず幼いころから七花さんと比べられてきた姉ちゃんは、自らを『脇役』だと、俺には相応しくないと思っているのだ。
それだけなら俺はこんなに急いで告白しなかったが、さっきも言った通り姉ちゃんは俺の事を『主人公』、七花さんのことを『ヒロイン』だと思っているのでくっつけようとしてくるのだ。
とは言え
「ええ、告白はしたんですけどね。もっと相応しい人がいるって振られちゃいまして」
「成る程な。せっかく良太がへたれるのを止め告白したというのに……。優子にも困ったものだな」
と、七花さんが特に俺に興味を示さないので、姉ちゃんの空回りでしかないのだ。
「直接言葉にして伝えても駄目だった以上、どうにか姉ちゃんの意識を変えるしかないんですよね……」
「優子の意識を変える、か。……そうだこういうのはどうだろう?」
俺がそう言って何かいい方法はないかと考えていたところ、七花さんがある提案をしてきた。
「良いですね、それ!」
俺はその提案を聞き、すぐに取り入れることにした。
見てろよ姉ちゃん、絶対に姉ちゃんが俺のヒロインなんだって分からせてやる……!
翌日、姉ちゃんの家まで迎えに行った朝。
「というわけで、姉ちゃんキラキラ計画のスタートだ!」
「いや何がどういう訳!?」
姉ちゃんの声が響き渡り、俺たちは姉ちゃんのお母さんに怒らるのだった。