第十一話 実戦!!
すみません、更新が遅れてしまいました。
………と、気合良く締めたのはいいものの、どうしたものか。
ステータスが上がったとはいえ、身体に違和感等は一切感じない。
………うーん、よくよく考えたら、俺って実は戦えないんじゃね?
どれだけハイスペックでも、元が日本の男子高校生ということに変わりはないんじゃないか?
例えば、ガ○ダム VS ガン○ムの戦いがあったとして、片方が超ハイスペックでもう片方がおんぼろだったとする。
そして、搭乗者はハイスペックな方に説明書を読んだだけの初心者が、おんぼろの方にはプロが乗るとする。
その場合、俺はおんぼろが勝利すると予想する。
理由はいたってシンプルだ。
その道のプロは実戦を何度も経験しているが、初心者は経験していない。
たったこれだけの差だ。
しかし、たった一つの違いが勝敗を分ける。
この例は俺にも当てはまり、基本スペックが高いが命がけの争いを知らない俺と、命がけの戦いを毎日のように行っているこのダンジョンのモンスターとでは積み重ねてきた経験が違いすぎるため、圧倒的にモンスターの方に分があるのだ。
ではこの差をどのようにして埋めるのか。
それを今、この天使の先生にお聞きしているのである。
『確かにそういった部分では負けてるかもだけど、そんなの力のゴリ押しでどうとでもなるわ』
あ、そっすか………
つまり、この辺のモンスターとはそれほどまでにステータスに差があると。
………でも、できればもうちょっと言い方を変えて言ってほしかった。
『ハイハイ、そういうのもういいからさっさとレベル上げしに行くわよ』
へーい。
……………
って、チョット待て!!
こんだけステータスが高いとか言われてもよく分かんないだけど。
そもそも俺、本当にめちゃんこ強くなったの?
『そう言ってるでしょ』
うーん、よく分からんが、まぁいいや。
じゃ、レベル上げしに行こう。
◇ ◇ ◇
『花園蓮は10分間探索を行った。
野生のゴブリンAが現れた!!
花園蓮は初めての戦いに緊張しているようだ!!
野生のゴブリンは持っていた棍棒を振り上げ、花園蓮へと襲い掛かった!!
花園蓮の技〈避ける〉が発動!!
しかし完全には避け切れず、棍棒が花園蓮の右肩をかすったようだ!!
花園蓮はビビっている!!』
「うるせーよ、今戦ってんだから静かにしろ!!」
『そうやってツッコめるってことは結構余裕みたいね』
「んなわけねーだろ!!」
『ホントにー? ………って前前前前!!』
「あぁ!?」
振り向いたらそこには、放置されキレてしまったゴブリンがいた。
しかも、既に振り下ろして始めている。
「あ………」
ヤベッ………と言いかけた時にはもう、ゴブリンの棍棒が俺の頭部を捉えていた。
意識が飛びかけるが、なんとか持ちこたえる。
ジンジンと痛む箇所を指で触れると、生暖かい液体のような感触が。
「クッソ………!!」
血で濡れた手を握りしめる。
棍棒で頭を思い切りぶん殴られたにも関わらず倒れなかった俺を見て、ゴブリンが再度攻撃を仕掛けてくる。
上から振り下ろされた棍棒を左に避け、右からの攻撃も辛うじて避けたところまでは良かったものの、3連撃目に対応できずもろに攻撃を食らう。
流石にそれを耐えることはできず、倒れこんでしまう。
「ゲホゲホッ………!!」
痛みをこらえ切れず、血を吐いてしまう。
うつ伏せの状態から必死に上を見上げると、ゴブリンが棍棒を構えており、自分のこの後の未来を想像した俺は、咄嗟に目を閉じた。
しかし、俺が想像する未来はいつまで待っていてもやってこなかった。
恐る恐る目を開く、とそこには、棍棒を俺に向けて振り下ろしかけた状態のまま止まっている、ゴブリンの姿があった。
いや、正確には止まっているわけではない。
ほんの少しずつだが動いている。
だがそれも、目を凝らして見なければ分からない。
とりあえずその場から離れる。
すると、突然時間が元に戻ったかのように、ゴブリンが動き出す。
「な、何だ今の………?」
意識せずそう呟いていた。
ゴブリンは、仕留めたと思ったはずの俺が別の場所に移動したことに驚いているような表情をしている。
というか今気付いたが、ゴブリンから殴られた箇所の痛みが少しだが、和らいでいる。
ゴブリンが奇声を上げながらこちらに突進してきた。
それを、体を捻ることで避ける。
『レン、大丈夫?』
大丈夫だけど、何さっきの?
何でいきなりスローモーションになったんだ?
『それは後で。とりあえず、ゴブリンを倒すわよ』
いやそんな簡単に言われても………
『大丈夫だから、ホラ』
………やるだけやってみるか。
ゴブリンが、今度はただの突進ではなく、棍棒を振り回しながら突っ込んできた。
体を引き締め、避ける動作に移ろうとすると、先程と同じ現象が起きた。
一体どうなってるんだ?
何でスローモーションになるんだ?
とりあえず、ゴブリンのがら空きの腹を全力で蹴ってみた。
その瞬間、ゴブリンの姿が消え、50メートル程離れた壁から轟音が鳴った。
壁に駆け寄ると、そこには瓦礫の山が。
瓦礫の中には、赤い液体と緑色の腕が見える。
そして、ゴブリンが握っていた棍棒が俺の足元に転がっていた。
……………えっ?