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プロローグ



俺はゆっくりと瞼を開けた。


「……あれ?」


無意識のうちに呟いていた。

永い眠りから覚めたような、そんな感覚だった。


雲一つない空が視界に映る。

ここは屋外なのかと、今更ながらに驚く。

太陽の光に目を細めながら、体を起こす。


「………は?」


周りが広大な平原であることに気づいた俺は、困惑の声を上げていた。


◇ ◇ ◇


俺の目には、聖剣を構えた勇者が仲間とともに巨大なドラゴンに立ち向かう姿が、鮮明に映っていた。


「うんこんなの無理」


ドラゴンに惨殺される勇者を眺める俺は、思わずそんなことを呟いていた。

まあ、こうなるのも当たり前だ。

このドラゴンはボスモンスターだ。友達曰く、最低でもレベルが60は必要らしいが、俺はLv29で挑んでいる。そりゃあ瞬殺されるのもおかしくない。


「しょうがない。レベル上げするか」


俺は花園蓮(はなぞの れん)。先月、16歳になったばかりだ。

好きなものは、ラノベに漫画。あと、アニメとゲームも好きだ。言わばオタクだな。

そんな俺だが、今は今朝買ったばかりのゲームを攻略している最中だ。


他のゲームで、中ボスに挑むときは大抵Lv80は超えていたが、今回は何となく低レベルのまま挑んでみたところ、この有様だ。

このドラゴンに挑む前までは戦略やアイテムのフル活用で何とかなっていたが、ここまでステータスに差があるとアイテム等ではカバーしきれない。

ちなみに、これで4度目の挑戦である。アイテムなどを揃えるのにも金がかかるため、今の所持金はほぼゼロ。一文無しだ。こんな状態じゃもう挑む気力なんて微塵も湧いてこない。


大きく伸びをしながら、ちらりと時計を見た。

えーっと、5時か‥‥5時!?


もう5時!? じゃあゲームを始めて5時間近く経つのか。毎度思うが、ゲームやってると時間が進むのが早くなるように感じる。錯覚なのだが。

てか5時ならそろそろ義理の妹・(さくら)が帰ってくる時間じゃん!!


桜は俺の一つ年下で、今は中三だ。運動神経は良いのだが、部活動等には所属しておらず、帰宅部だ。

容姿は控えめに言って美少女。髪は茶髪でセミロング。性格は天真爛漫(てんしんらんまん)。学校では女王やら聖女やら女神やら、それはもう大層なあだ名を付けられているらしい。

と、そこで玄関の扉が開いた音が聞こえ、顔だけそちらのほうを向ける。


「ただいま~」

「おかえり、桜」


噂をすればなんとやら、桜が学校から帰ってきた。


「はぁ、疲れた~」


桜がソファにどかっと座り込む。


「ソファで寝るんなら、ちゃんと着替えてからにしろよ~」

「ハーイ」


桜が立ち上がり、リビングにあるタンスの中から着替えを取り出した。


「あ、ごちそうさまでした」


着替えを持ち自室へ行こうとしていた桜がふと思い出したように呟き、弁当箱をカバンから取り出した。それを受け取り、キッチンに置きに行く。


「今日もおいしかった~!!」

「お粗末様だ」


ふむ、ここまで喜んでもらえるのなら、作った甲斐があったというものだ。

そういえば最近の晩ご飯はずっと俺が作っていたな。桜も、たまには外食くらい食べたいだろう。


「今日は久しぶりに外食にでも行くか」


唐突に俺は呟いた。


「ホント?!」

「ああ。最近はずっと俺が作ってたし、ついでに食材を買いに行きたくてな」

「行く!!」


こうして、俺と桜は二人で出かけることとなった。



「美味しかったね、さっきのお店」

「そうか、良かったな」


俺たちはちょうど今、食材を買い終えたところだ。晩ご飯ももう既に食べ終えており、今は帰宅のため、駅へと向かっている。


「う~ん、でもやっぱり私はお兄ちゃんの料理のほうが好きかな~」


そうか?

こっちのほうが断然俺が作るやつより美味いと思うけどな~。

まあ、褒められて悪い気はしないので、口には出さないでおくが。


「お兄ちゃん、ちょっとあそこ行こうよ!」


そんなどうでもいいことを考えていると、桜がいきなり俺の手を取り一つの建物を指差した。

その看板には服のマークの入ったロゴが。


「……服屋?」

「そう! ねっ?」


いやー、正直俺って服選びのセンス無いから、一人で選んだほうがいいと思うんだけど……


「えっと、そういうのは俺にはちょっと……」

「いいから!!」


桜から強引に手を引かれ、服屋の中へと連れ込まれる。



それから30分ほど経った後、俺たちは服屋から出てきた。

結局、俺は桜が持ってきた服を試着するだけだった。桜が自分の服をあまり選ばず、俺の服ばかり持ってきたため、暇なわけじゃなかったが。


そんな俺の手には購入した計11着の服が。

ちなみにそのうちの8着が俺ので残り3着が桜の服と、なぜか服屋に来たがっていた桜より俺のほうが多いという不思議。


別に服なんて畳んであるやつの一番上を着ればいいんだけどなぁ……

正直服になんて一切興味ないのだが、満開の笑みを浮かべたまま俺の服を選ぶ桜を見てしまうと、そんなこと口が裂けても言えない。


「混んでるね……」

「そ、そうだな」


駅に着き、改札を通ると同時に桜がつぶやき、俺がそれに同意した。

今の時刻は7時半。いつも混んでるのは5時からろ6時くらいまでだったはずだが、今日は未だにスーツ姿の大人たちがうようよしている。


「ん?」


桜がいきなり俺の手を握ってきた。


「どうした?」

「いや、何でもない」


満面の笑みで返される。

だが、よく見ると頬が少しだけ赤い……ような気がする。


「熱でもあるのか?」

「ううん、全然!!」


うーん、本人がそう言うのなら大丈夫なのだろうが、つい心配してしまう。


「それより、電車遅いね~」

「ああ、そうだな」


確かに、言われて気づいたがもうそろそろ、電車を待ち始めてから15分ほどが経つ。

すると、電車特有のあの走行音がこちらに近づいてきた。さらに電車のライトによって線路が照らされる。


「ふぅ、ねみー」


あくびを噛み殺しながら、電車が目の前にくるのを待つ。


その瞬間だった。

背中に強い衝撃を受け、咄嗟に握られていた手を振りほどく。


振り返るとそこには、狂気じみた目をした男がいた。

桜は俺のほうを見ながら呆然としている。


「お兄ちゃ………」


桜が俺を呼び終える前に、俺の全身に激痛がはしる。

視界は真っ赤に染まり、体の感覚がだんだんと消えてゆく。


視覚も、聴覚までもがほとんど消えてしまう。意識もだんだんと薄れていき、なんだか眠くなってきた。


(俺、こんなところで死ぬのか………?)


(いや…………)

(………死ぬわけにはいかない……桜を残して、俺だけ死ぬなんて……)


(絶対に、生き残ってやる)

そして、俺の意識はそこで途切れた。

初投稿です。

そのため、おかしなところが多々あると思いますが、アドバイスなどがあれば教えてもらえると幸いです。

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