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コント「ラーメン店」  作者: howari
3/3

親身的ラーメン店

「麺茹でまーーす!」



「「「茹でまーーす!」」」(店員一斉に)



ヤケにうるさいラーメン店だった。ひと昔前の美容院みたいだと思った。



でも雰囲気は良さそうで、美味しそうなラーメンの匂いが店内に漂っているからとりあえず我慢する。

俺はメニューをジーッと眺めた。



「30番のお客様。この後のご予定は、妻の跡を追うそうです。」



「「「追うそうでーす!」」」



……は?

俺は思わず30番のお客を凝視する。



70代ぐらいのお爺さんだ。最後の晩餐だからか嬉しそうにラーメンを頬張っている。


あのお爺さんが、この後、自殺をするのか?


いや、いや、声揃えて「追うそうでーす!」じゃねぇだろ。誰か止めてやれ。



そんな事を思っていると、店員たちがお爺さんの所に集まって来て何やら話している。お爺さんは涙を流しながら、店員に抱きついている。

説得をしているのだろうか。



席を立ったお爺さんは会計を済ませ、満面の笑みを浮かべながら店を後にした。

その背中に向け、店員たちは親指を上げている。



いい店だなぁと思い、目頭が熱くなった。




そそくさと厨房へと店員たちは帰っていく。そして、一人の店員が俺の元にやって来た。やっとオーダーを聞きに来たみたいだ。



「じゃあ、このお勧めの豚骨ラーメンで」



「はい!承知しました!お客様この後のご予定は?」



「え?あ、彼女とデートですが……」



「デートっすか!お熱いですね!じゃあニンニクは抜いておきますね!」


ウインクをしてほくそ笑む店員。



「あ、あぁ、お願いします」




「50番のお客様、豚骨ラーメン一丁!彼女とデートの為、ニンニク抜きで!!」



「「「デートの為ニンニク抜きで!」」」



周りのお客が一斉に俺に振り返る。恥ずかしくて顔から火が出そうだ。お客たちは失笑している様子。



「お待たせしました!」



ラーメンを持って来た店員が何故か俺の前へと座る。



「食べながらでいいんで、彼女との馴れ初め教えて下さい!」



「は?」



そんな事聞いて、お客の前でうるさく言うんじゃないのか?また赤恥をかいてしまうじゃないか。



キラキラした目で俺を見てくるから、口止めを約束し、つい色々と話してしまった。



「へぇ、彼女甘え上手なんすね!可愛いっすね!」


「そうなんだよなーへへへっ」


「じゃあもうそろそろ結婚考えてるんすか?」


「あぁ、そうだなー結婚はしたいなと思う」


「今日あたりどうすか?プロポーズでも?」


「え……今日?!」


「いいと思いますけどねーサプライズって女の人みんな好きみたいですし」


「そっかー全然そんな話してないんだけど、サプライズでプロポーズしたら喜んでくれるかなぁ?」


「大丈夫ですって!何ならお勧めの言葉知ってますよ?」




俺は決意を胸に、席を立ち会計を済ませた。



店員みんな、俺に向けて親指を上げている。



「ありがとう!」



みんなに向かってそう呟き、店を後にした。




彼女との待ち合わせ場所へと走り出す。

ラーメン店に来た時より、足取りは軽やかだ。

あのラーメン店に行って良かったなと思う。

親身になって話を聞いてくれて。アドバイスもくれて。


今夜、彼女にプロポーズをする!



早る気持ちで走っていた時、横目に救急車が見えた。誰かが倒れている様だ。頭から血を流している。このビルから飛び降りたのだろうか。



チラッと顔が見えた。



さっきの30番のお爺さんだった。



死んでんじゃねぇか!と心で叫んだ。





俺のプロポーズが成功したかどうかは……


言うまでもない。



end

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