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背中を押さないで

――魔王の部屋の前



 無駄にでかい扉前で俺は棒立ちしている。

「入ったら、おしまいだよね~。仲間の誰かと合流するまでここで待ってるか……」

「ゆうしゃ……」

「うわっ、だれっ!?」


 廊下の奥から声が響く。

 目を凝らしてみると、そいつは魔王のお付きだった。


「お前は、魔王の付き人。まさか、お前が俺の相手を?」

「滅相もない! 私は弱小魔族。とてもではありませんが勇者の相手なんて……」

「だったら、何の用?」

「お願いの儀がありまして」

「願いだと?」


「お察しの通り、魔王様は一対一での対決を所望しているのだと思います。そのために四天王を分けたのでしょう。私としては、あの方の願いを叶えてあげたい。だから、このまま一人で扉の先を進んで頂きたいのです」


「しかし、それは……」

「勇者。あなたは魔王様の意を汲み、仲間と別れ、単身でここまで来たのではないのですか?」

「え……まぁ、そうですけど……」

「ならば、何卒、何卒!」

「……もし、嫌だ。仲間を待つ~って言ったら?」


「その時は刺し違えてでも、あなたを扉の向こうへ!」

 付き人は懐からギラリと光る刃物を見せた。

 普通なら雑魚同然の付き人も、今の俺ならあっさり殺されてしまう。



「わかった。君の魔王を思う心に応えよう」

「さすがは勇者! では、扉をお開けください」

「扉を、開けるの?」

「はい」

「どうやって?」


「え? 押せば開きますが」

「いや、扉が大きいだろ。重くて開きにくいんじゃないかなぁ、と思うわけでありますよ」


「いえいえ、見た目は重そうですが軽い素材でできてますから、子供でも開けられますよ。それに勇者ならば、たとえ重くても簡単に開けられるでしょう?」


「ふぅ~……そうだな、開けられるとも。だが、開けた先に魔王がいるわけだな」

「ええ」

「やはり、開けない方が、いいんじゃないかな?」

「え、なぜ?」


「この扉が開けば、血で血を洗う戦いが始まってしまう。もちろん、君の主を傷つけることになる。それは恐ろしいだろう。そのような恐ろしいことが起きて良いものか……」


「ふふ、勇者という者は本当に優しき存在のようで。ですが、たとえこの先にどんな恐怖が待っていようと、私は如何なる出来事も受け入れる準備ができております。では、さぁ、さぁさぁ」

「え、ちょっと、背中押さないで。ちょっと、待てって。や、やめろ~!」


 ずんずんと背中を押され、身体ごと魔王が待つ扉の向こうに放り込まれてしまった。

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