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決戦の日

――決戦の日



 決戦の日までに誰かに相談しようと思ったが、皆の期待の籠る声を裏切られず、今日になってしまった……。


 魔王城の前に広がる平原には、両軍合わせて二百万近い兵士が蠢いている。

 俺はその光景を見ながら、ぽつりと女魔導士に提案をする。



「なぁ。なんだか、天気が崩れそうだから、決戦は明日にしないか?」

「何を言ってるの、勇者? 快晴じゃない。こんな時に冗談言わないで!」


「冗談というか、なんかいや~な予感がしてさ。な、男盗賊。勘の良い、お前もそう思うだろ?」

「たしかに不穏な感じがするけど、二百万の兵士と魔王城の前。その城には魔王がいる。不穏に感じて当然だろうし」


「いや、そういう不穏じゃなくて……なぁ、男戦士。戦いには時というものがあるだろ。今ではない感じがするんだよな~、俺は」

「そんなことはない。今日こそ、決戦の日。すでに、兵や将は準備を終えている。いまさら、時を延ばすなどあり得ぬ」


「まぁ、そうですね~。でもでも、女法術士。このまま激突したら、多くの犠牲が出るよ。もう一度、作戦を練り直すとか、ね? ね?」

「勇者様……お優しいのですね。ですが、今日の犠牲を最後に、明日を掴み取りましょう!」

「明日、ですか。そうね、明日があれば、うん……」



 いかん、このままだと確実に死ぬ!

 いつ力が戻るかわからないけど、少しでも時間を延ばさないと……。


「えっと、今からどういう感じになるんだったっけ、女魔導士?」

「もう、とぼけちゃって。しょうがないなぁ。私たちを先頭に置いて中央突破。一気に魔王城へなだれ込む作戦でしょ」


「誰だよ、そんな無謀な作戦立てたのは!?」

「え、勇者じゃない。一週間前に、少しでも犠牲を少なくするために、私たちを中心に一気呵成に攻め込もうって」

「そうだった。一週間前の俺の馬鹿……」


 ヤバい。このままじゃ決戦の火蓋を切ると同時に、俺が事切(ことき)れる



「ちょい待ちっ。作戦変更っ、作戦変更しよう!」

「いまさらそんなこと……」

「まぁ、聞いてくれ。魔王は手強い。城には四天王もいる。ここは俺たちの体力を温存して、決戦に望まないと」


「じゃあ、どうしたいのよ?」

「人間・魔族の両軍がぶつかり合う中、俺たちは迂回して魔王城に直接乗り込む。ど、どうだ?」

「私はいいけど、みんなはどう?」


「俺はそれもありだと思うぞ」

「僕は最初からその方法がいいと思ってたけど」

「そうかっ、そうだよな。女法術士は?」


「私は反対です」

「なんでっ!?」

「その作戦だと、兵士の方々の多くが犠牲になってしまいます。勇者様だって、それがお嫌で中央突破という無理を押す作戦を選んだのでしょう?」


「はい、まぁ、そうですけど……え~っと」

 言い訳を振り絞れ、俺!


「たしかに、犠牲は、多い。でも……そうだなぁ、えっと、あれだ」

「あれ?」

「確実に魔王を仕留めることが優先だ。そのためには俺たちがなるべく無傷で、魔王城に辿り着かないと」

「ですが……」

「犠牲は多い。その通りだ。だが、女法術士も言ったろう。今日の犠牲を最後に、明日を掴むためには仕方ないんだ。万が一、僅かの差で負けようものなら、その明日が無くなってしまう! 辛いことだけど、ここは……すまない」


「勇者様……わかりました。多くの犠牲を払う作戦。私たちはその罪を背負い、未来ために頑張ります」


「ん、わかってくれたか。それじゃ、各隊に伝令を頼んでっと。俺たちは迂回し、ゆっくり魔王城に向かおう」

「え、そこは急がないと勇者様……」

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