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遺跡調査 - 左通路

 遺跡の入り口の警備員にカードを見せて遺跡の中に入る。


 この前見つけた場所を掘り起こして階段状にしたようで、歩いて出入り出来るようになっていた。


 中は暗いので、ランタンに火を入れて、短剣に照明トルチャの魔法をかけて中に入る。

 照明トルチャをかけた石を投げ入れたときに見えた部屋は、少し広くなっているが下り階段があるだけだった。


 遺跡は石造りで石壁がずっと続いている。天井まで3メートル以上はありそうな高さだ。


 真っ直ぐ階段を下りていくが、高さが随分あるようで普通の建物なら3階分ぐらい下りた気がする。

 下りてきた場所は正面と左右に通路が伸びている。右側の通路はパーティが探索中のはずだが灯りは見えなかった。


 ここも天井がやや高い。

 通路の先は左右に扉が等間隔に並んでいることが確認出来るので情報通りだ。


 それとフェルド村で探索した遺跡のように何かの加護が発生しているような魔力を感じる。

 前に感じているので光の魔力ではないということは分かるのだが、この魔力については何なのか分からなかった。


「左の通路でしたわよね、どう調べますの?」

「リルファナが居れば部屋の中に何かいれば分かるよね」

「ええ」

「なら、最初以外は部屋の中を見ないでまっすぐ最後まで行こう」


 他のパーティは、後ろから襲われるのを防ぐためなのか手前の部屋から順番に調べているようだった。

 わたしたちはその心配がないので、真っ直ぐ進み全形を確認しておく方が良いと思ったのだ。


「それに、この遺跡の用途も何となく推測は出来てるからね」

「お姉ちゃん、分かるの?」

「うん、多分だけど。部屋が等間隔にたくさん並んでるなら牢屋か宿屋、避難所だと思う」

「避難所?」


 この世界(ヴィルトアーリ)では避難所という発想が無いのかな。

 地下の避難所。地上で何かあったときのシェルター代わりなのではないかと思ったのだけど。


 地球ではプレッパーと呼ばれる個人で核シェルターを持つ人もいるぐらいだ。


「そんな大掛かりなものもあるんだ」


 避難所がどんなものか説明するとクレアは納得したようだ。


「牢屋かどうかは扉を調べればすぐ分かりますわね」

「うん、とりあえず最初3部屋を調べて内容が同じようなら、そのまま通路を進んでみよう」


 まずは一番手前の左側の部屋を調べることにした。

 扉は薄い金属のようなもので出来ていて、ドアノブがついている。ノブをひねると簡単に開いた。


 部屋の中は、広めの部屋のようになっている。

 扉の横の壁に、透明な小さい板が入っている箇所があった。スイッチか何かかと思ったけれど、触れてみても何も反応が無い。


 部屋の一部の壁際から石壁の材質のまま繋ぎ目も無く、伸びて台になっている場所がある。高さと大きさからベッドのように見えた。

 同じように机と棚だと思われる継ぎ目の無い石製の家具も設置されている。


「この残骸は椅子か箱だったのかな?」


 クレアが散らばっている朽ちたような木片を杖で突いていた。中身は空のようだ。


「内側からも開けられる構造ですわね」


 扉を調べていたリルファナが、がちゃがちゃとノブを回して確認している。

 鍵穴は無く、外からも中からも鍵はかけられないように見えた。


「少なくとも牢屋じゃなさそうだね」

「ええ、何も無さそうですし向かいの部屋へ行きましょう」


 3人で向かい側の部屋を調べたが、似たような配置だった。

 続いて隣の部屋を調べたが、やはり同じだ。


「どこも同じだし、個室に見えるかな」

「うん、宿屋か避難所っていう場所なのかな?」

「宿屋だとすると、入り口があるはずですわね」

「普通に考えれば入り口は上だろうし、わたしたちが入ってきた崩れてる方が入り口だったのかもしれないかな?」


 後で掘り起こす必要はあるかもしれないが、今は指定されているこの通路を先に調べなければならない。


「扉の間隔が変わらなければ、部屋の数だけ数えながら先へ進もう。何かいたら教えてね」

「分かりましたわ!」


 最初の予定通り、リルファナの探知に任せて先へ進むことにした。



 左右に30ずつの部屋を通り過ぎたところで、少し広くなった場所に出た。

 正面に扉があり、右手に上り階段が見えている。


「なんだかランタンの灯りが届く範囲が普段より狭く感じますの」

「この闇の加護のせいかな?」

「わたくしには何も感じませんけど、ミーナ様は?」

「何か魔力は感じてたけど、闇の加護とまでは分からなかったよ」


 クレアは加護の種類まで分かっていたようだ。逆にリルファナは魔力自体に気付いていなかったのか。

 リルファナの探知能力で気付かないというと、心当たりはあのイケメン(闇の神)に会っているかどうかぐらいかな。


 魔力の属性によって気付きにくいなどの特徴があってもおかしくはない気がする。闇なら特に。


「この扉の先に何か小さいものが2体いますわ」


 3人で警戒して扉を開く。

 かなり広い空間のようで反対側の壁が見えない。足元は石造りではなく、土の地面になっていた。


 大きなネズミが2匹うろうろしていているが、わたしたちが入ってきたことに気付いて逃げていった。

 扉の辺りには、個室にもあった透明の板状の何かがはまっている。これが室内の照明か鍵のスイッチじゃないかと思うんだけど、相変わらず動かない。


「ネズミでしたわね」

「多分だけどケイブラットだったよ、リルファナちゃん」


 レダさんの家の地下に侵入していたウェイストラットとほぼ同じようなネズミだ。

 ケイブラットも魔物ではなく、洞窟や土を掘って生息している動物の一種で、近寄らなければ人に対して害を及ぼすことも無い。


 これだけ広い場所なら放っておいても問題無いが、部屋から出て行くと困るので入り口は閉めておく。


「どこから入ってきたんだろう?」

「あれ以外には何もいないと思いますわ」


 探索してみると、この部屋は何本か木が生えているようだ。どの木も元気が無いように見えた。

 花壇のようなものもあるので花も植えてあったのかもしれないが、真っ暗なので枯れてしまったのだろう。


 中央には小さい噴水と石造りのベンチがあった。

 噴水の水は止まっていて濁った水が溜まっている。先ほどのネズミはこの水を飲みに来ていたのかもしれない。


「お姉ちゃん、休憩場所かな?」

「そんな感じだね」

「でもなんでこんなところにあるんだろう。上は森なんだから外に出れば良いよね?」

「出れない理由があるとか」


 最初の推測通り、ここは外に出れない人向けの休憩室だと感じた。ずっと閉所にいるとストレスになるため、ここで気分を落ち着けるのだろう。

 避難所シェルターの可能性が高そうだ。


 部屋の端の方まで行くと土砂が流れ込み、そこから先は洞窟になっていた。

 崩落したここからネズミが入ったのだろう。


 遺跡ではないので、依頼の範囲からは外れるし調べるとしても後で良い。


 この部屋は扉がしまっていて、ドアノブを回すことが出来ない動物では通路側に出ることは出来ない。

 レダさんも動物がいると言っていたので、壁が崩落した場所がまだありそうだ。


 部屋を出て、ネズミなどが出てこないようにしっかりと扉を閉める。


 うーん、初日なのでざっと見る程度のつもりだったのだけど、どうしようかな?


「ランタンはあとどれぐらい持ちそう?」

「まだ半分の半分ぐらいしか減ってないよ」


 全部で鐘2つ分(6時間)なので、1時間半ってところか。


「階段の上も調べておこうか」

「はいですわ」


 階段は途中で折り返しているが、段数は入ってきたときの半分も無いようだった。

 入り口が地上1階、通ってきた部屋の並ぶ通路が地下2階、このフロアが地下1階といった感じだろうか。


 階段を上りきると左手に扉が1つあるだけだった。


 警戒しつつ中に入ると、大きくて透明な水晶のようなものが中央に置いてある。

 水晶はパネルのようなものにつながれていた。


 また周囲には石造りの机や棚がたくさん設置されている。


「これ魔石だよ、お姉ちゃん!」

「魔石? 電池じゃなくて?」


 魔石、その名の通り魔力が篭もった石だそうだ。

 普通は爪の先ぐらいの大きさの物から、拳大ぐらいの大きさでこれほど大きいものは無いと言う。


 魔道具マジックアイテムは、使用者の魔力を使うものがほとんどで、魔石自体は滅多に使わない。

 大型装置や、古代の秘宝(アーティファクト)などの個人の魔力では不足してしまう場合に、動力源に使われていることがあるようだ。


 目の前にある魔石は2メートルは超えているだろう。これも何かの動力源だと思う。

 あとで調べたところ、魔導機に使う電池も厳密に言えば魔石の一部であるが製造過程から使用方法まで全くの別物らしい。


 電池は今も作ることが出来るが、魔石は作ることが出来ず遺跡などで見つけたものを利用している。

 用途も少なく、それなりの数が見つかるのでそれでも困っていないそうだ。


「この大きさなら、もしかしたらヴィルティリア時代の魔石かもしれないよ!」


 クレアの魔石を見つめる目が輝いている。


 最近、クレアが時間があると古代文明について調べているので感動も大きいのだろう。

 魔法文明時代の最盛期だったヴィルティリア時代なら、これだけ大きな魔石も作れたかもしれないらしい。


 とりあえずこれを調べないといけないよね。

 わたしはパネルの前に立ち、動かないかと調べてみることにした。

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