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遺跡調査 - 準備

 ――翌朝。


 父さんと母さんを中央広場で見送った。

 南門まで行こうと思っていたのだけど、依頼を受けに行くならギルドの近くまでで良いと言われたのだ。


「じゃあまた来月かな?」

「別にいつ帰って来ても良いのよ」

「うん! またね、お母さん」


 2人の後ろ姿が見えなくなるまで見送って、ギルドに入る。

 受付にレダさんはいないようなので、職員に聞いてみるとギルドマスターの部屋で説明すると言われた。


「いらっしゃい。依頼について説明するから座っとくれ」


 部屋に入るとレダさんに座るように促される。

 ソファーに座って話を聞くことになった。


「とりあえずこれまでに分かったことと依頼内容を説明するから、受けるかどうか決めてほしいさね」


 わたしたちが教えた場所へ行ったところ、確かに遺跡があった。付近に似たような遺跡も無いので未知の遺跡だろうと推定されたそうだ。


 小悪魔インプが出入りしていたぐらいだから可能性としては低いが、危険な魔物などが出てきても困るので、念のため入り口を囲って閉鎖。

 翌日から、遺跡の中の調査をすることにした。


 たまたま町にいたC級のパーティに依頼し、内部を探索してもらったところ、地下は異様なほど部屋の数があったようだ。

 すぐに遺跡を探索するパーティを1つ増やし、手分けして探索させることにして、そのまま数日経っている状態らしい。


「ラットや動物系の魔物が少し出現するが、それよりも通路に並ぶ大量の部屋の方の探索に時間がかかってるさね」

「動物系の魔物ですか」

「うん、元々森にいるようなやつも多いさね。どうやらミーナちゃんたちが見つけた穴以外の入り口があるか、どこかで天然の洞窟とつながってしまっているんじゃないかと考えてる」


 依頼内容はまだ立ち入っていない通路や部屋の調査となる。

 最終的に何のために建てられた建物なのか分かるのが理想だそうだ。


 何も無くても1日調査を進めるごとに3人で小金貨1枚。もちろん毎日報告が必要で、短時間だったりさぼっているようなら減額だ。


 夜は町に戻っても良いし、必要なら遺跡の入り口の拠点を使っても良いとのこと。

 拠点に滞在するなら雑用担当の職員が食事の用意や、簡単な買物ぐらいはしてくれるらしい。


「たくさんある部屋の特徴は?」

「あたしも実際に見に行ったけど、この部屋ぐらいの広さで家具は揃っている。食料があれば、ある程度の期間は生活出来るようになっていると感じたね」

「調べた範囲の地図は無いんですの?」

「現地……、入り口の拠点にあるから、依頼を受けてくれれば確認出来るさね」

「依頼の拘束期間とかはありますか?」

「あまり長く休まれても困るけど連絡さえしておいてくれれば、適度に休みを取るのは自由。とりあえず1週間頼みたいさね」

「遺跡で拾った物とかは貰って良いんでしたっけ?」

「冒険者ギルドの規約通り、発見者のものとなるよ。ただし、調査依頼なので何が見つかったか報告する義務はあるので注意しておくれ」


 遺跡探索というのも面白そうだし受けてみたい気もする。顔を見るにクレアもリルファナも受けることに反対ではなさそうだ。


「分かりました、引き受けます」

「ありがとう。このカードを遺跡の入り口の拠点まで持っていけば説明してくれるようになってるさね。受付でこの依頼を受けたって受注処理してもらってから向かっておくれ」


 すでに用意してあったようで、レダさんから銀色のカードのようなものを渡された。

 数字と遺跡調査、3名と書かれている。数字の方でどの依頼を受けているか確認しているのだろう。


 今回のようにギルドが立ち入り禁止を設けた区域の調査依頼や、複数パーティで受ける依頼などでは、このカードが依頼を受注しているグループですよという証明になるらしい。


 ギルドマスターの部屋を出て、言われた通り受付で受注処理をしてもらった。


「必要なものがあれば買ってから向かおうか」

「ええ、雑貨屋で買いたいものがありますの。中で迷うかどうかは分かりませんが、念のため食料も少し買っておいたほうが良いかもしれませんわね」

「リルファナちゃん、ランタンの油と電池もあまり無いよ」

「雑貨屋で買っていこうか」


 言われた消耗品を補充していると、リルファナは針金やロープと短剣などを探していたようだ。

 セブクロには無かった探索スキルを本格的に使うことになりそうなので、必要な道具を購入することにしたらしい。


 感覚的な話になってしまうがリルファナの話をまとめると、探索スキルは足跡などの追跡や罠の有無、不自然な点が無いかといったことに気付くスキルだという。


 更に、探索スキルは野外フィールド用と屋内ダンジョン用の2つに分かれているそうだ。

 基本的に調べる場所、例えば地面が土や草などの天然物であるか、石床などの人工物であるかで使われるスキルがどちらか決まる。


 元々これらのスキルをイメージできる職業であれば探索スキルを持っていそうで、例えば「盗賊」は屋内の探索スキルが高く、「狩人」であれば野外の探索スキルが高いといった感じになる。


 リルファナの場合は上級職の忍者くのいちの影響で獲得していると思われ、どちらも出来るそうだ。



 準備が出来たので東門から、この前遺跡を見つけた場所まで行くことにした。


 場所はリルファナが分かっているようなので任せる。

 どうやら敵の探知や方向感覚といったものも忍者くのいちのスキルじゃないかという話だった。


 ……魔法戦士にも何かないかな。


 探索系のスキルは実感が無いので扱うのは無理そうだけど、気付いていないだけで何か1つぐらいあっても良いんじゃないだろうか。

 魔法戦士っぽいもの、何かないかな?


 遺跡のあった小高い丘のあるところに到着すると、大きなテントが張ってあった。

 遺跡の入り口付近は木の柵で囲われていて、出入り口は革鎧と槍で武装した人が2名ほどで監視している。


 これが遺跡の探索拠点のようだ。

 思っていたよりも貧相だったが悠長に立派な建物を造ってられないだろうし、どれぐらい使うかも分からないから仕方ないか。


「リルファナちゃん、あそこで聞けそうかな?」

「ええ、テントに入ってみましょう」


 3人で大きなテントに入ると、背の高い仕切り板でエリアが区分けされていた。

 テントに入ったところには机がいくつか置かれ、ギルドの職員だと思われる人たちが遺跡調査の内容などをまとめる事務を行っているようだ。


 入って右側の区画も同じように机と椅子が並べられているが、休憩中なのか職員がお茶を飲んでいる。


 その端の方にはカーテンをつけたベッドが2つ設置されていた。今はカーテンは全て開いていて、ベッドも空になっている。

 調査のグループや外で監視していた人が怪我したときに使う治療用のベッドだと思う。


 反対の左側の区画は、雑にベッドが並べられている。こちらは泊り込み組用のベッドだろう。


「あの、すいません」


 誰もこちらに気付かずに事務をしているので声をかけると、近くの白衣を着た男の人が顔をあげた。


「おや、こんなところまでどうしました」

「遺跡探索の依頼を受けたんですけど」

「ああ! そういえばもう1組有望株が来るかもって言ってたな……」


 レダさんに貰った依頼受理中のカードを見せると、白衣の男は、耳の辺りを掻きながら少し考えると書類を取り出した。


「進むとすぐに地下への階段があって、その先は現在ではこれだけ進んでいます」


 手書きの大雑把な地図のようだ。

 階段を下りると正面、左右へと通路が伸びている。それぞれの通路の左右には同じ大きさの部屋がいくつもあった。


 正面の通路から優先して調べたようで、手前から30部屋ぐらいチェックが付いていた。

 右側の通路は同じように10部屋ぐらい。左側の通路は数部屋調べただけらしく2つチェックがついた状態で止まっている。


「パーティごとに方向を分けて調べてもらう方針でやっています。ええと……、ミーナさんたちには左側の通路をお願いします」


 左側の通路は、他の通路と同じであるかを調べただけで、それ以上は進んでいないらしい。


「今日は正面の通路を調べているパーティは休息中で町に戻っています。右側の通路を調べているパーティは調査中ですので出会ったら挨拶ぐらいはしてください」

「調べ方は自由ですか?」

「ええ、それぞれのパーティにお任せしています。探索に行く前と、遺跡から戻ったら報告に寄って下さい。一応調査を休むときも報告するようにお願いします。いきなりいなくなってしまうと心配するので……」

「分かりました」


 他にテント内の現状や利用について聞いた。


 増減することはあるが事務の職員が2名、護衛が4名、治療担当が1名、家事や雑用の担当者が2名。

 遺跡探索の冒険者がわたしたちを含めて3グループになるそうだ。


 ベッドは使用中かどうかの木札がかかっており、空いている場所は自由に使って良いらしい。

 近くにテントを張りたい場合、場所は護衛の人に聞いてくれと言われた。


 食事は朝、昼、晩とテントに戻ってくれば提供してもらえる。保存食が良ければそちらを受け取ることも可能。

 雑用を担当してくれる職員は現在は町に買出しに出ていて夜には拠点に帰ってくるとのこと。


 聞きたいことは聞けたので、早速遺跡の調査へ行くことにした。

 様子見ということで、今日はざっと見る程度でいいだろう。


 調べ方は自由でいいようなので、他のグループとはやり方を変えるつもりだ。

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