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鍛冶 - 武器試作

 午後も鍛冶を続けるというと、クレアは調べたいことがあるので図書館に行ってくると出かけていった。

 レダさんの家から図書館は目と鼻の先だ。


 わたしとリルファナは、練習ということでリルファナの持っている短刀を真似して作ってみることにした。


「これを叩いて延ばせばいいのかな」

「やったこともないですが、なんとなく感覚では出来そうですわね」


 カルファブロ様の炉の効果とスキルの効果で身体が自然に動きそうだ。


 金槌で叩く場合、2人で行うのが一般的のようでリルファナがいると2人で作るように動こうとする。

 手伝いがいない場合は1人でも作れそうではあるので自動で補正がかかるのだろう。


 熱して金属を柔らかくして、リルファナと交互に叩いて形を作っていくということを繰り返す。


 大雑把に叩き上げたところで、別の少し柔らかく作った鋼を包むようにして打っていく。


 力を加えても折れない鉄の板は、柔らかく曲がりやすいということだ。逆に曲がらない鉄の板というのは、しなることがなく折れてしまうということでもある。しかし硬さの違う2種類の鋼を使うことで、簡単に折れないし曲がりもしない刀身になるようだ。


 その後、しっかりと刀の形に作り上げ、切っ先を整える。

 刀身に鋼を作ったときに出てきた砂のようなものを塗り、熱して水に入れる。じゅーっという音と共にもうもうと水蒸気が上がった。


 これは焼き入れという工程だろう。

 急激な温度差によって刀身に反りが出来て、お手本にした刀と同じ形となった。


 普通なら早くても数日はかかるであろう作業なのだが、2時間かからないで仕上がってしまったようだ。しかも、形を思い描けばほぼ同じ形で作り上げられる。


 代わりに精神的な疲労感が圧し掛かる。なんだかすごく疲れてぼーっとしていた。


「これは、魔力の消費がすごくかかりますわね……」


 どうやら、魔力の消費による疲労感のようだ。

 初めて疲労感が出るまで魔力を消費したので自分では気付かなかった。


 リルファナの作った魔力回復のポーションを飲みながら行うことにする。

 リルファナのスキルレベルだと初歩的なポーションは作ることは難しくないので大量生産してある。ただ今のところ使うことが無いからストック数がすごいことになっているんだよね。


「今更だけど、……つばつかはどうしよう?」


 日本刀は鍔と柄は別に作るものである。もちろんわたしたちの今の工程で出来上がったのも刀身部分のみだ。


 鍛冶をしてみたいと思ったノリで進めていたせいで思い切り忘れていた。


「……そういえば、刃が欠けてしまった刀のものが使えるかもしれませんわね」


 リルファナが、マジックバッグから短刀を1本取り出した。蜘蛛騒動のときに刃が欠けてしまったものだ。


 炉の設置時に辺りに置いた使い方の分からなかった道具で器用に分解していく。この辺りも鍛冶の範疇に入るのでスキル補正で自動で行えるようだ。


「出来ましたわ!」


 短刀とはいえ部屋の中で振り回すには狭いので、軽く握って小さな動きで確かめている。


「外で確かめてみないとですが、とりあえずは使えそうに思えますわね」

「わたしの剣もダメにしたやつを分解しておこう」


 ジーナさんに貰った鉄の剣も1本ずつ打った鍛造で作られたものなので鍔や柄は別の部品となっていた。

 わたしのイメージでは、西洋剣って鉄を溶かして型に流し込んで作るものの方が多い気がするんだけど、そうでもないのかな?


 次にわたしの鉄の剣を作ることにした。ここは鋼の剣と言った方が正しいだろうか。


 刀と同じように作ることになったが、西洋剣の方が手順が少なく簡単だった。魔力消費もさきほどよりも少なく感じる。

 試すだけなら簡単なこちらを先に作るべきだったかもしれない。


 完成形をイメージすれば同じように作れるので、鋼の剣も破損前とほぼ同じ形に仕上がった。


霊銀ミスリルもいけるかな?」

「作れるとは思いますが、わたくしは鍔と柄がもうありませんわね。ミーナ様はもう1組ありますわよね?」

「うん、剣にしてみようか」

「分かりましたわ!」


 買ってきた霊銀ミスリルの鉱石を説明書を見ながら延べ棒(インゴット)状にする。

 魔力のポーションを飲みながら作業を進めることにした。


「そういえばポーションにもリキャストタイムがあったはずですが、どうなってまして?」


 セブクロでは、ポーションやスキルを使うと再使用するまでに少し時間を置く必要がありリキャストタイムやディレイタイムなどと呼ばれていた。

 これらはゲームではよくあるシステムだ。


 ポーションについては、大量に用意したポーションを連打するように使うことで、強敵を強引にクリア出来ないようにするための措置だと思う。

 ゲーム的な都合であるならば、このシステムは無くなっている可能性もあるだろう。


「うーん、どうかな。満腹感が多少はあるから、大量には飲めないと思うけど……」


 ポーションは大きめの瓶に入っているので意外と量が多いし、飲むのにも時間がかかる。ただ飲んでる量を考えると満腹感を感じにくくはなっているようだった。

 1瓶飲むとコップ半分ぐらいの水を飲んだ気分になるぐらいかな。


「その辺りがペナルティということですの?」

「副作用が無ければ、そうじゃないかな。2本目以降の回復量が減るという可能性もあるけど検証しにくいね」

「緊急時に大量に飲むかもしれませんものね。検証しておけると良いのですが」


 そんなことを話しながら霊銀ミスリルの剣が一本仕上がった。


「綺麗ですわ」


 霊銀ミスリルは一見すると銀色の長剣だ。しかし少し動かすと光の当たり方で様々な色に輝いた。


「これは、派手過ぎて使いにくいな……」


 霊銀ミスリルの武器は特注オーダーメイド品だそうだから無いわけじゃないんだろうけどD級冒険者が持っていると目立つ気がする。


「そうですわね、街中では抜かないほうが良さそうですわ」


 しかもこの剣、1番期待していた魔法剣にはあまり長くは耐えられない気がする。鉄の剣よりは随分良いんだけど、作り方の問題なのだろうか。


「身体が自動で作ってるようなものなのでスキルレベルの方かもしれませんわね」

「なるほど。でもスキルを上げるには量産する必要があるし、刀身以外の部品がいるから難しいかな」

「たくさん作るには時間もかかりますわね。それに作れたとしても、霊銀ミスリルどころか鋼でも流通させるには品質が良すぎますわ」

「うーん。何か考えないとか」


 いくつか作れば良いだけならアルフォスさんたちに贈ってしまうのもありだと思う。


 だけど、セブクロはネットゲームなので同じぐらいのバランスだったら下手すると数百作らないとスキルレベルは上がらないんだよね……。

 魔法スキルのレベルアップに必要な回数はセブクロと同じだったし、生産スキルも同じと見てもおかしくはない。


 少しでも数を稼ぐという意味では、いくつか鎧でも作るかと考えてみたが、それは難しいと感じた。

 革細工のスキルも必要そうなイメージが湧いたので、内側に使う素材の加工が出来ないから無理ということだと思う。


「あ、自分のレベルが足らないという可能性もあるかな」

霊銀ミスリルは最上級職の装備でしたわね」


 もしかしたら最上級職になれる80レベルまで上がれば剣を壊さずに使えるようになるかもしれない。


 クレアはたまに鑑定紙を使ってステータスを確認してるようだけど、わたしは面倒で確認してないんだよね。

 蜘蛛の女王(スパイダークイーン)やウルトラキャノンを倒したし、そろそろレベルを確認しておいても良いかな。


 パパッとステータス画面でも出せればすぐ分かるのに、疑問が浮かんでも推測でしかやっていけないので面倒で仕方ない。

 リルファナがいるので1人のときよりは知識も増えたし、相談や確認はしやすくなったのは良いことだけど。


 ……昔の転生者プレイヤーはどうしてたんだろう?


 英雄と呼ばれた時代は転生者プレイヤーも多く交流も多かったようなので、わたしたちのように手探りでやってても問題無かったんだろうか。


「ただいまー」


 1階から声がした。クレアが帰って来たようだ。

 午後1の鐘は鳴ってたのは聞こえたけど、地下にいるから時間がさっぱり分からないな。


「お姉ちゃんたちまだやってたんだ。そろそろ午後2の鐘がなるよ」

「え、もうそんな時間ですの!」

「やっぱり鍛冶は時間かかるね」


 クレアに霊銀ミスリルの武器を見せたらびっくりしていた。1日で作り上げたって言われたら流石に驚くか。


「夕飯の食材を買いに行こうか」

「まあ、そんなことだろうと思って買ってきたよ」


 クレアすごい。


 クレアの買ってきた材料は明日の朝の分まで揃っていた。

 今日は時間もあるし煮物やちょっと手の込んだものでも作ろうかな。ミニエイナで買ってきたキッチン用具もあるからね。



「ヴィルティリア文明について調べてみてるんだ」


 夕飯を食べながらクレアが図書館で調べていたものについて聞いていた。

 そういえば、携帯炉の説明書がヴィルティリア文明の文字と聞いて興味がありそうだったっけ。


 今日はあまり収穫が無かったみたいだ。本の数はたくさんあったようなので、また時間が空いたら調べに行ってみると言っていた。


 夕飯を済ませたあと、危険は無いと思うが念のため炉をキューブに戻しておく。

 わたしが展開して設置したけれど、リルファナが閉じることも出来るようだ。


 それと、作った武器に魔法付与エンチャントしておくことにした。魔法付与エンチャントは鍛冶に比べてすぐ終わるので楽だ。


 大雑把な付与の傾向は分かるようになったので攻撃力や耐久性の上がる媒体を使うことにする。


 必ずでもないのだが、どうやら媒体の色が付与される補正効果オプションの傾向と関係しているようなのだ。

 武器に対して使う場合は、赤いクズ宝石は攻撃系が付くことが多かった。


 耐久性はまだよく分かっていないけれど、今のところ透明度の高いものが付きやすいという結論になっている。


 ミニエイナで加工前の宝石も買ってくれば良かったかな。お店ではアクセサリーを取り扱っていたから採掘はされているはずだ。

 ウルトラキャノンで随分稼げたが、まだ冒険者として収入が安定したとは言えないので価格次第では買わないけどね。


 とりあえず鍛冶については新しい武器が必要になるか、スキル上げの目処が立つまでは一段落とすることにした。

 クレアの装備も作れそうなものが思いつけば作りたいところだけど、杖を金属で作ったら重過ぎるよね。


 また明日からは依頼を受けていこうと思う。

 現状だとマジックバッグの運搬力とリルファナの探知能力、D級依頼の対象の魔物が弱いおかげで討伐依頼が稼ぎやすい。


 あと10日以内には家に1度帰らないといけない約束があるし、C級までは近場の討伐依頼を中心に受けていくことにしよう。

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