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最弱職のはずの魔法戦士のわたしが冒険者になりました  作者: 忘れじ草
第2部

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出発

 本日は快晴。旅に出るには良い天気だ。


「いってらっしゃいな。気をつけるのよ」

「帰ってきたら娘たちの冒険譚を聞くことになるな。楽しみにしてるぞ」


 村の入り口まで母さんと父さんに見送られ、ガルディアの町に向かって出発した。

 今日の予定は、ギルドで明日の講習の時間を聞いてから宿をとるぐらいなので少し遅めの時間だ。



 道中、馬車が襲われているなんてこともなく無事に町に着いた。

 そんなに頻繁に襲われていたら『大陸一安全な国』とは何なのかと思ってしまっただろうけど。


「ギルドに寄って明日の時間を聞いたら、宿屋を先にとっておこうか」

「うん」

「分かりましたわ!」


 早速、ギルドの受付へ講習について聞きに行く。


「新人向け講習でしたら、明日の午前3の鐘から2階の酒場を使って行っています。午前は依頼の受け方などのギルドのシステムについてで、こちらはこの受付でも簡易になりますが聞くことが出来ます」


 慣れているようで受付のお姉さんはすらすらと説明してくれた。見覚えはないので、今回初めて見る人だと思う。レダさんは受付にいないようだ。


「そのあと、早めにお昼休憩を挟んで午前4の鐘が鳴ったら、依頼遂行時の注意点や野外での過ごし方、魔物との戦い方の基本を座学で行います。また鐘が鳴ってからしばらく待っても受講希望者が現れない場合は、その時間の講習は無くなりますのでご注意ください。それと講習中の出入りは自由となっていますがお静かにお願いします」

「ありがとう、明日来ます」

「はい、お待ちしていますね」


 食事代なども考えると、今の手持ちではちょっと心許ない。ギルドにいる内にカードに入っているお金を少し現金化しておくことにした。

 宿泊費だけでも1人1泊で小銀貨5枚だったはずなので、1週間分だと小金貨1枚と小銀貨5枚になるはずだ。一ヶ月滞在すると小金貨4枚以上になる。朝食以外は別なのでこう考えると結構かかるなあ。


 蜘蛛の女王(スパイダークイーン)の討伐で資金は十分あるので、父さんからの支援は断った。これからは自分たちで稼ぐ必要があるからね。


「買い物とか用事がなければ宿屋に向かうけどいいかな?」

「大丈夫ですわ」

「しばらくはこの町にいるならいつでも買いに行けるよね」


 2人とも買い物は無いようなのでギルドから出て、その足で宿屋へ向かった。

 用事と言ってもわざわざ会いに行くレベルの知り合いはエルフの店員さんぐらいだろうか。しばらく町にいることだし、いずれ挨拶に行こう。


「いらっしゃいませ。宿泊ですか?」

「3人部屋で1週間空いてますか?」

「はい、大丈夫ですよ。朝食付きで長期滞在ですと小金貨1枚となります」


 あれ? 長期だからか少し値引きしてくれるようだ。


「それでお願いします」

「では記帳をお願いします。代筆しますか?」


 代筆は断って記帳する。前とほぼ同じ流れになっているのでマニュアルでもあるのだろう。


「鍵をお渡ししますね。お部屋は2階の奥となります。朝食時は鍵を提示していただければそのまま食事出来ますのでよろしくお願いします」


 受付の人にフェルド村からマルクかジェッタという人が尋ねてきたら家族なので呼んで欲しいと伝えておいた。父さんにもこの宿屋にしばらく泊まると言ってある。

 鍵を受け取って、夕飯にはまだ早いので部屋を見に行ってみることにした。


 2階に上がり部屋に入ると前よりも少し広い部屋のようだ。置かれているインテリアはほとんど同じだが、大きいテーブルもあった。ちょっとした作業ならここで出来そうだ。

 滞在中の部屋の掃除は必要な場合は、フロントでお願いすれば良いらしい。


 クレアとリルファナと明日からの予定を確認しておくことにした。


「明日は講習で、明後日から依頼を受けてみようと思う。受ける内容は、ギルドの講習で話を聞いてからね」

「うん」

「当面の目標は、生活費を稼げるようになることだと思うけどいいかな?」

「はいですわ。宿泊費と食費ですのよね?」

「装備の修理や買い替え、消耗品の代金もかな? 父さんから聞いた話ではD級になればこの宿屋でも生活の維持だけなら難しくないと思う。あまりやりたくはないけど、裏書もあるし討伐系の依頼でもあれば上のランクを受けるって手もありそうだけどね」


 討伐ばかり受けて駆け足でランクを上げるのは良くなさそうなので、お金が明らかに減ってしまった場合の最終手段となるだろう。

 預金だけで数ヶ月は生活出来るので、多分その心配はないけど。


「家を借りたりはしませんの? 普通なら宿屋よりは安いですわよね」

「うーん、リルファナの製薬とか、料理がしたくなったら拠点も必要かなと思うけど、クレアが成人したらわたしはいろんな国に行ってみたいんだよね」

「半年あるし、お父さんも訪ねて来やすいと思うから借りられるなら家を借りても良いんじゃないかな?」


 拠点が出来てしまうと、動きにくくなる可能性があるんだよね。

 宿屋暮らしだと家事はほとんどしなくても良いがお金がかかる。料理はどこかで厨房を借りないとだが、この宿屋の食事処レストランはほぼ24時間営業なので借りられないだろう。

 家を借りると家事は自分たちでする必要があるけど、自由度は高くなる。


 海凪わたしも東京で1人暮らしを始めたときは、新しい大学生活に加えて家事までしなければならなくなって最初はとても大変だった。家事をすること自体は嫌いではなかったのは救いだったかもしれない。

 クレアもリルファナも家事は一通りこなせるし、手分け出来るからそこまできつくはないと思うけど。


 メリットとデメリットが混在するので、絶対に借りたくないというわけでもないんだけど。


「家を借りるのにいくらぐらいかかるか分からないし、とりあえずしばらくは宿屋かな? 仕事を始めてみてから考えようか」

「分かった」

「分かりましたわ」

「それと依頼の報酬なんだけど、必要経費を除いて人数割しようと思ってるんだけど」

「うーん、宿屋とか食費とかの代金を分けると毎回清算するの大変だからお姉ちゃんにその辺りは任せたいかな」

「そうですわね。それにわたくしの報酬はミーナ様が受け取るのが普通かと思いますの」


 確かに毎回清算するのも面倒か。日本のように人数割した個別払いとか出来るような店はほとんどないだろうし。

 リルファナの報酬はリルファナのものでいいとわたしは思うのだけど、体裁を考えると人前では渡さない方が良いのかな。この辺りは町の常識がよく分からないや。


 奴隷がお金を持ちすぎてると逆にリルファナが疑われるなんてことがあるかもしれないし、勝手が分かるまで気を付けよう。


「分かった。前の報酬もあるだろうからすぐには困らないだろうし、今後の報酬はしばらくわたしが管理することにする。買いたい物とか、装備や消耗品で買った物があったら必ず言ってね」


 依頼と依頼の間に消費する分もあるから月1回ぐらいお小遣いみたいな形で渡すのがいいかな?

 少し考えておこう。


「それから3人が持って来たものを確認しておこうか。各自でバッグに詰めてたから持ってるものが分からないかもしれないし。と言ってもわたしは装備と魔法付与エンチャントの材料ぐらいしか持ってきてないんだけどね。あとペンとメモ帳」


 セブクロの書き溜めした紙束も持ってるけど、これは言う必要がないだろう。リルファナとも相談しながら書き上げたので随分量も増えている。序盤の効率的なプレイ方法とかは、初期組のわたしよりも後続のリルファナの方が詳しかった。


「私は、装備と筆記用具と本を全部持ってきたぐらいだよ」

「わたくしは、裁縫道具をお義母かあ様から預かりましたわ。製薬用の道具も持って来ています。あとは装備と小説ぐらいですわね」


 そういえば、リルファナはわたしの筆記用具を使っていたので個人では持っていなかったんだ。後で買っておこう。


「あ、そうそう、出るときにお父さんから預かったんだ」


 クレアがマジックバッグからペンダントを取り出した。


「どうしても困ったら、これを領地の伯爵のところで見せて相談しろって。2つあるから片方はお姉ちゃんに渡しておくね」

「ハウリング伯爵ですわね。ええと、このペンダントの紋章はどこの家でしたかしら? 手紙を出せると聞いたときも思いましたが、お義父とう様は随分大きいコネを持っていますのね」


 父さんのコネって領主様だったのか……。


 クレアからペンダントを受け取ってバッグに入れた。これを無くすと大変なことになるのでは?


「なんか私とお姉ちゃんが持ってないと意味がないようにしてあるって言ってたよ。よく分かんないけど」


 そう聞くと試したくなるもので、リルファナに持ってもらってみたけどペンダントの見た目は変わらなかった。リルファナでも大丈夫なのか、見た目では分からないような細工があるようだ。

 セキュリティみたいのが入っているのならあまり気にしなくても良いか。使うか分からないし。


 これからの予定の確認も終わりにして、夕飯を食べにいくことにした。


「お姉ちゃん、リルファナちゃん、またピッツァ食べたいから3種類頼んで分けようよ」

「いいですわね! 確かメニューにはお肉のピッツァもありましたわよね」


 今日の夕飯はピッツァに決まりだ。

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