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野営練習

 クレアとリルファナからは、ランダムに魔法付与エンチャントしてしまって構わないと装備を一式渡された。

 やっぱり何も付与されていない装備よりは良いということだ。悪い効果が付与されることはほぼなさそうということもあるだろう。


 それからクレアの髪飾りの鑑定をさせて貰ったら、防御力上昇(小)、幸運上昇(微小)になっていた。


 たまたま石があっていたのか防御力がちゃんとついていたのは良いんだけど、どっから幸運が出てきたんだ……。


「大成功したのでは?」

「ああ、そんなのもあったね。追加付与なんて数回しか見たことなかったから忘れてたよ……」


 理由が分からず唸っていたが、リルファナに言われてピンときた。


 生産時に大成功すると、通常よりも品質が上がり攻撃力などの数値が良くなるのが一般的だ。

 魔法付与エンチャントではそれ以外にランダムで付与効果が追加されることがあった。しかもこの効果は付与するための空き枠を使わない。その代わり、微小しかつかないんだけどね。


 そして、幸運はランダムでしか付けられないという珍しい効果なのだ。


 検証班が幸運の効果を調べたところ、ほぼ全ての行動に関係しているが無理に装備するものでもないと結論付けられている。

 それでも希少価値が非常に高いのでバザーなどでは、目玉が飛び出るぐらいの高値で取引されていたのだ。


 幸運装備を売って大金持ちになるという夢を見て所持金を全て魔法付与エンチャントに費やしている人もいるぐらいなのに、下手すると1ヶ月に1個もバザーに並ばないぐらいの希少価値だったからね。

 セブクロのシステムでの話なので、こっちでは付与出来る素材があったりするかもしれないな。


 そんなことを考えながら、リルファナとクレアの装備にも一通り付与を施していく。


「お姉ちゃん出来た? はい、これ」


 お腹が空いたらしく、お菓子を探しにいったクレアが部屋に戻ってきた。わたしとリルファナにもお茶と焼き菓子を持って来てくれたようだ。


「ありがと。鑑定はまだしてないけど出来たよ」

「じゃあ自分で調べてみる」


 焼き菓子を頬張っていると、クレアが自分のマジックバッグからルーペを取り出した。


 ……もしかして、買ってないのわたしだけ!?


「帽子に熱射軽減と日焼け軽減とか付いてるんだけど」


 すごく、夏に良さそうです……。


 というか紫外線カット効果とかも付与されるのか。


「……それは、わたくしも欲しいですの」

「今なら触媒が残ってるから、メイド服だと……カチューシャにでも付ける?」

「お願いしますわ!」


 カチューシャまで買っていないので、粉砕した触媒を分けておくことにする。


 ある程度、色や透明度で付与される効果に傾向があるんじゃないかなと推測出来るぐらいには分かった。

 それと同じ触媒でも付与する物によって変わることも実証できた。


 靴だと転倒軽減が付与されるけど、衣服だと姿勢制御が付くようだ。名前が違うだけで同じような効果かなと思う。


 リルファナは、薬剤師スキルを活用して薬とポーションを作っている。

 ポーションって一般の薬屋には置いてないぐらい高価なんだよね、あまり周りにはポーションをたくさん持っていることは言わないようにした方が良いだろう。


「体力回復と魔力回復のポーション、あと病気用の薬も作りましたの。満遍なく効くかわりに効果が出るまでに少し時間がかかりますわ」


 ポーションは全て透明で区別がつかないので、ラベルが貼られている。


 他の人の目のあるところでは使いにくいこともあり、普通に売られているように見える薬も作ったそうだ。

 生産スキルのレベルが高いと、あれこれ付与出来るわけで効果はかなり高い模様。


 回復効果やリラクゼーション効果のある飲み薬、怪我用の塗り薬、鎮痛剤、胃腸薬など、北の森で採取した薬草と、町で買った素材で随分と幅広く作っていた。


「それと便利かと思い、虫除けも試作してみましたわ」


 お香みたいな感じで火をつけると殺虫効果のある煙が出るようだ。虫が苦手な臭いも配合しているようで寄ってこなくなるらしい。


 蚊取り線香だね。



 クレアが教会の勉強会に行かない日を狙って、父さんがテントの張り方を教えてくれた。

 と言っても、最近のテントは魔導機を利用している仕組みなので組み立ては初心者でも難しくなく、テントを張る場所選びの方が大事なようだ。


 場所は平らで出来れば土の上であること、水捌けの良い場所が良い。逆に川が近い場所やくぼ地はダメ。森のように木が多い場所なら木の下も良いが、木がまばらに生えているだけの地域では雷に注意が必要。


 テントの組み立て方は、シートを敷いたら支柱を立てる。支柱の部分は折りたたみ式で、開くだけで簡単に組み立てられる。支柱に組んだテントが倒れにくくなるような魔導機が入っているらしい。テントのバランスなどをある程度調整してくれるんだろうか。


 立てた支柱に、広げた防水布を挟み込んでいったら、ハンマーで杭を叩いて地面にしっかり止める。


 これで一般的な四角錐型のテントの完成だ。

 入り口は一箇所だが、他の各面には外が見えるように小さめの窓がある。窓は中側からのみ開け閉め出来るので、一方的に覗かれる心配はない。


 風が強いときや余裕があるときは、かぶせた防水布の端をスコップか何かで土を掘って軽く埋めるようにしておくと安定するらしい。


 他にも、火には特に注意すること。火災の原因になるだけでなく、遠くから発見されやすい。また煙を出していることで狼煙と間違われることもあるとか。

 村や町以外でテントを利用する場合は、必ず見張りは外に立てることなどを教えてくれた。外から奇襲され、テントを倒されると外に出ることすら出来ずに攻撃されることになるからだ。


 父さんは一通り説明し終わると、後は自分たちで納得するまでやれと家に戻っていった。


 家の前で何度か組み立てたり、戻したりと繰り返しているうちに3人で上手く設置できるようになった。

 中に3人で入ってみると道具を出して作業するにはちょっと狭いけど、寝るだけなら十分な広さだ。


 実際に使ってみることも必要だろうから、今日はテントで寝てみることにした。


 貴重品などは持ち込まないし、村の中なら3人でテントの中にいても大丈夫だろう。


 夕飯とお風呂を済ませてから寝袋や毛布をテントに運び、寝袋にくるまる。

 クレアはうっかり踏んだりしないようにか、髪飾りを外して部屋に置いてきたようだった。


 冬も近くなってきて外で寝袋だけでは肌寒い、毛布もかけた。

 しばらくそのまま包まっていると、段々と暖かくなってくる。


 テントのセットに付属していた魔導機のランプは天板が傘のようになっていて、上方向に光が漏れにくい作りになっていた。少し暗いのが欠点だ。


「なんだか、ウキウキしますわね」

「本当ならご飯とかも準備しないきゃいけないんだよね。出来るかなあ?」

「冒険者になるなら慣れておかないとね」

「火を起こす練習とかもしておきたいですわね」


 いずれ野外で料理するのもやってみた方が良さそうだね。

 時間停止系のマジックバッグでもあれば、お弁当を大量に入れておけば済むのにな。情緒は無いけれど。


「着火は生活魔法でいいけど、火の維持とか薪集めも大変そうだね。先に集めるなり買うなりしてマジックバッグに入れておくのも手かな?」


 うーん……、考えると準備しておきたいことが多すぎるな。少しずつ進めていこう。


 ――翌日。


 寝袋で寝たせいか身体が少し強張っていて痛い。


「身体がバキバキですの……」


 クレアはそこまで酷くないみたいだけど、慣れないせいか眠りが浅かったようだ。

 3人で朝食を食べていたら父さんが起きてきた。


 振り返ろうとすると、背中が痛い!


「なんだお前ら、毛布を持ち出してたのに敷かなかったのか?」

「え、敷くの?」

「おう、柔らかいから身体も痛くなりにくいし、温度は地面から逃げるから敷かないと寒いぞ?」


 そうなのかー……。


 練習で分かって良かったというべきなのか、昨日の夜に言ってくれというべきなのか。

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