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ガルディアの町 - 宿泊

 水量や温度の調整をする魔石の使い方は前の宿と同じだった。

 シャワーが固定型なのはホース部分を作る技術が無いのかもしれないと思う。


「お背中お流ししますわ、クレア様」

「ありがと!」


 最初にクレアとリルファナにわっしゃわっしゃと洗われたわたしは、リルファナがクレアの背中を流すのを湯船から見ていた。


 石鹸も良い花の香りがするものが置かれている。

 また、髪用の石鹸というのもあった。固形だが泡立ちが良くシャンプーのように使えるようだ。


「次はリルファナちゃんね!」

「ありがとうございます」


 随分とクレアもリルファナに懐いたなあ。


 お互いに背中を流し終わると、わたしが真ん中になるように左右に入ってきた。

 別に、お姉ちゃんが端でも良いんだよ。まあわたしが真ん中を陣取っていたせいもありそうだし、いいけど。


「お姉ちゃんとお風呂に入ると、遺跡を探検した日を思い出すね」

「あー。3ヶ月ぐらい前だっけ」

「血が落ちないって文句言ってたよね」

「え、どこかのホラーですの?」


 リルファナは苦手なのか耳を塞ごうとしている。

 血が落ちないって言いながら川でずっと武器を洗っているゲームとかもあった気がするけど、そういうわけじゃない。


「いや、普通に怪我を治したあとの固まった血が落ちなかったんだよ。それで父さんが夜なのに川から水を汲んでくれたんだ」

「……それは大丈夫でしたの?」

「クレアが治してくれたからね」

「結構深かったけど、完全に跡も残らなかったね」


 正確には微妙に治りきってなくてシスターが完治させてくれたんだけど、クレアがいなかったら無事に帰れたかどうかも怪しい。


 クレアが確かめるように脇腹を触ってきて、微妙な感じにくすぐったい。

 傷跡になってしまうと治せないようだけど、すぐに回復魔法をかければ傷跡はほぼ残らないようだ。女性にはありがたいことだけど、いかつい男同士の傷跡自慢みたいなのは出来ないね。


「クレア、くすぐったいんだけど」

「ふふふ」


 クレアが手をわきわきさせている。これは完全にくすぐりに来ている構えだ。


「た、助けてリルファナ」

「御二人とも、仲がよろしいですこと」


 クレアがしつこいのでリルファナに助けを求めても、笑っているだけで助けてくれなかった。ぐぬぬ。


 お風呂から出たあと、テーブルに置いてあったボードゲームで遊んでみた。説明書も付いている。


 4人まで遊べるゲームで、1ゲーム15分ぐらいで遊べるようだ。順番に駒を動かして自陣にある駒を対角にある陣地に全て入れたら勝ちというゲームで、ハルマと呼ばれるゲームに似ていた。3人用にしたダイアモンドゲームという名前の方が有名かな?


 何度かやったけど、ほぼクレアが1位で勝っていた。リルファナとの2位争いはまあまあ良い勝負だったはずだ。きっと。


 ……こういう理詰めのゲームは遊ぶのは好きだけど、得意ではない。


 こちらの世界(ヴィルトアーリ)には、このような娯楽品が全然無くて夢中で遊んでしまった。町のお店では見かけなかったけど、どこかに売ってたりするのかな?


 ボードゲームもやってみれば結構楽しいし、クレアとリルファナがいれば遊ぶ相手にも困らない。どこかで売ってればいくつか買いたい。

 日本では兄さんたちと何時間もかかるゲームもやったりしたなあ。


 オセロや将棋ぐらいなら自作しても良いかもしれない。


 遊んでいたら夜も更けてきたのでお茶を1杯飲んで寝ることにした。

 窓から外を見ると暗くなっても少しは人がいた西通りとは違って、東通りは人が通らない。高級店やアンテナショップが多くて、深夜までやっている酒場がほとんど無いことが影響していそうだ。


 スプリングを使っているベッドのようで乗ったら弾んだ。

 この感触は久しぶりかもしれない。


「なんか、ふわふわする」


 とはクレアの感想である。


 布団をかぶると石鹸の花の香りがふわっと舞った。



 ――翌日。


「お姉ちゃん、朝だよ」

「……」

「ミーナ様、起きてくださいまし」


 眠り心地の良いベッドと夜更かしで今日はなかなか起きられなかった。

 久しぶりにリルファナの耳へフーをお見舞いされた……。家では結構やられている気もするけど。


 午前3の鐘が鳴る前に、帰りの道中で食べるお弁当を買っておきたいところだ。そのまま宿を出れるようにして朝ごはんに向かう。


 朝食のメニューは、スクランブルエッグ、ベーコン、パン、ゆで卵が飲み物付きで食べ放題となっていた。

 この辺りはどこの宿も似たようなものなのかもしれない。もちろん食材は良いものを使っているようだった。


 食べ終わって、フロントに鍵を返しにいこうと食事処レストランを出たところでアルフォスさんがロビーの椅子に座っているのを見つけた。


「おはよう。もう帰るのかい?」

「はい、買い物も済みましたし、中央広場でお弁当買っていくので」

「なるほど、ミーナちゃんたちが冒険者として活動を始めるのを楽しみに待ってるからね。それと、王都の冒険者ギルドを訪ねてくれれば連絡がつくようにしておくよ」

「分かりました。王都に行ったら聞いてみますね」

「あ、やっと来た」


 ミレルさんが眠そうに目を擦りながら階段を下りてきた。後ろにはジーナさんがついている。

 待ち合わせしていたようだ。


「おはよ……ねむい」

「おはよう、クレアちゃんたちは早いわね」

「早く帰らないと夜になっちゃうので」

「そっか、まだ野営はしてないのね。村で練習しておくと良いんじゃないかしら」

「ん、最初はテント張るの大変だった」

「テントは視界が通らなくなるし、見張りは外にいるようだから3人になってから使わないことも多いけれどね」

「マジックバッグがあるなら用意はしておいたほうがいいと僕は思うよ」


 そういえばテント買ってないや。お弁当を買ったらギルドで見ていくことにしよう。


「じゃあ僕達は朝御飯を食べて、王都に戻るよ」


 アルフォスさんたちは食事処レストランへ入っていった。


「ギルドでテントを見てから帰ろうか」

「うん」

「分かりましたわ」


 前回と同じように各自で好きなお弁当を買った。海苔弁に似たものを見つけたのでそれに決めた。


 冒険者ギルドの前で待ち合わせし、2階の雑貨屋を見に行く。

 ギルドの店は基本的に休みの日と深夜帯以外はずっと営業している。


「見張りがいるんだと2人用ぐらいでいいのかな?」

「狭くても3人で寝転がれる大きさが良いと思いますわ。他のパーティと合同で依頼を受注することもあるかもしれませんし」


 店員さんに聞くと、2人用テントは3人で使うにはかなり狭いそうだ。素直に意見を取り入れて3人用テントを購入した。


「買いたいものがあれば、まだ寄れるけど何かある?」

「大丈夫」

「特に無いですわ」


 2日で往復出来るし、お金も随分入ったので何かあればまた来れば良いかな。

 欲しくなったら翌日にはお届けとかされていたというのに、この世界(ヴィルトアーリ)にも随分染まってきた気がする。


 帰りはレダさんの呪歌が無いのでゆっくりになる。草原と断層に森と見慣れた景色だ。

 急ぐ必要もないので、休憩しながらのんびりと帰った。


 海苔弁の海苔の下には鰹節に軽く醤油がかかってた。出汁がとれるから鰹節があるなら欲しかった……。

 また次回だね。覚えてるか分からないけれど。


 2人はサンドイッチにしたらしい。リルファナも珍しく野菜系のパンを食べていた。


 前回と同じように、夕方になる前には村に到着した。

 念のためなのか自警団の見張りは、継続しているようだ。


「「ただいまー」」

「ただいま帰りましたわ」


 ……もう、ここが自宅という意識が強くなったなあ。

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