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 夕飯も終わり、明日からの方針を決めることにした。

 レダさんが、昨日までの状況を説明していく。


蜘蛛の女王(スパイダークイーン)がいるかもしれない?」

「あくまでも可能性の話だけれど、無いとは言い切れないさね」

毒蜘蛛ポイズンスパイダーを倒しながら、探してみれば良いのよね?」

「ああ、アルフォスたちに頼みたい。マルクもそっちに入りな」

「分かった。が、レダはどうするんだ?」


 レダさんは腕を組んで微笑んだ。


「こっちの新人3人と探索するさね」

毒蜘蛛ポイズンぐらいならいいが、一応は女王クイーンがいるかもしれないんだろ? 危険じゃないか?」

悪魔蜘蛛デーモンを倒しちまったぐらいだ。万が一見つかっても逃げるぐらいは出来るだろうよ」

「まじか……」


 アルフォスさんたちがビックリしている。


「ジーナ、悪魔蜘蛛デーモンは倒せる?」

「1人じゃ無理ね。アルフォスとミレルの3人ならいけるんじゃない?」

「不意打ちされると、面倒だろうけど。今回はマルクもいれて4人だしな」

「昨日、毒蜘蛛ポイズンにやられたんだけどな。アルフォスがいれば治癒は出来るから昨日よりはマシか」

「任せて! というか僕の役割は元々そっちなんだけどね」


 アルフォスさんは、治癒も使えるのか。遺跡の探索では槍を使ってるだけだったから分からなかったけれど、モンクか聖騎士タイプかな?


 とりあえず南の森で毒蜘蛛の数を減らすことにまとまった。というより、現在の情報だけではそれ以外に出来ることが無いのだろう。


「ミーナちゃんたちも参加してるって聞いたから、色々用意してきたよ。適当に使って」


 ジーナさんがマジックバッグをわたしに軽く投げて寄こした。渡されたマジックバッグはリュックサック型だ。


「あ、そういえば、マジックバッグって町で見たらものすごく高かったんですけど……」

「ああ、マルクにミーナちゃんは冒険者になるかもしれないって聞いてたからさ。遺跡で何か見つけたらプレゼントしようとみんなで決めてたんだよ」

「そうだったんですか。えっと、ありがとうございます」


 レダさんもジーナさんから別のマジックバッグを受け取っていた。


「近場の探索とは言え、最低限の装備ぐらい持ってきなさいよね」

「ははは、面目ない。……ギルドから逃げ出すのに必死でね」


 レダさんが短剣以外の武器を持ってるの見たこと無かったんだけど、準備してなかったのか……。



 アルフォスさんたちが帰ったあと、クレアとリルファナの3人でジーナさんから貰ったマジックバッグの中身をチェックしていた。


「片手剣が3つ、短剣が2つ、短杖、盾、ローブ、ブーツとグローブが2つずつ。ええと、他に……」


 クレアが1つ1つマジックバッグから出していくが、装備品が多かった。

 その中で片手剣が3つ入っているのは魔法剣で割る可能性があるからかもしれない。武器が壊れるとまでは言わなかったはずだけど、アルフォスさんが見抜いたのかな?


 装備品が多いのは、わたしたちが町で装備を揃えたことを知らなかったからわたしとクレアの装備を揃えてくれたということか。


「これは薬かな? 何種類か5個ぐらいずつ入ってる」

「これが解毒用の飲み薬で、こちらは怪我に使う薬のようですわね。魔力の回復薬も入ってますわ」


 リルファナは薬剤師のスキルを持っているからか、見ればどの薬なのか見当がつくようだ。

 このままだと分からなくなるので、リルファナに頼んで包みに薬の種類を書いておいて貰うことにした。


 通常の薬はポーションと違い、飲んだり塗ったりしてから効果が出るまで時間がかかる。

 入っていた魔力の回復薬も同様に飲むと徐々に魔力が回復するという物だそうだ。効果量もポーションに比較するとかなり少ない。


「リルファナが作った丸薬と同じかな?」

「わたくしが作ったものの方がきっと効果が高いと思いますの」


 リルファナの薬剤師の効果が乗るから、効果も高くなるのだろう。


「それと2本ほど魔力のポーションが出来たのですが……」

「薬剤師だと作れるんだね」

「蜘蛛の目玉を使って作ってたやつだよ」


 ああ、アレが入ってるのか……。


 リルファナがあまり透明でないガラス瓶に入った薬を出した。クレアが雑貨屋で空き瓶を貰ってきたらしい。


「わたくしはあまり魔力使わないので、ミーナ様とクレア様に1本ずつ渡しておきますわ」

「ああ、わたしも現状だと使える魔法が少ないんだよねえ……」

「そうなんですの?」


 魔法戦士が、ほとんどの魔法が使えるというのはある程度遊んでいたプレイヤーならば常識であった。


 セブクロで最初から基本的な魔法を使えるのは、転職時にレベル80あるからなのだろうと思う。また、当たり前でもあるが生活魔法のように、存在自体を知らない魔法を使うことは出来ないようだ。ゲームには無かった魔法は、本を読むなり、教えてもらうなりして学習する必要があるということだろう。


 わたしのレベルは町で鑑定紙を使った時点で21だったから、とりあえずレベルを上げていくだけでも使用出来る魔法が増えるか確認したいところだ。

 高レベルの悪魔蜘蛛デーモンスパイダーも倒したし1つぐらい上がってたりしないかな?


「では1本はわたくしが持っておきますわ。クレア様にも1本渡しておきますが、作るのは難しくないので、必要だと思ったら気にせず飲んでしまって構いませんわ」

「う、うん。ありがとう、リルファナちゃん」


 リルファナの作った丸薬はまだ乾燥中なので、出発前にポーション以外の全ての薬を3人で均等に分けることにした。


 ……今日はわたしが1人で寝る番だっけ? と思っていたらクレアがベッドに潜入してきた。


 わたしは移動しないからいまだに順番がよく分からない。

 というか父さん早くリルファナのベッド作ってくれないかな? 蜘蛛がどうにかなるまで無理か。



 朝ご飯を食べてから、クレアと防具を身につけていると、リルファナが作った丸薬を持って来て他の薬と一緒に仕分けをしていた。


「丸薬や塗り薬は割れるものじゃないので、すぐ出せるように普通のポーチに入れて置いたほうが良いかもしれませんわね」

「ポーチについてた仕切り板を使おうか」


 ポーチを板で区切り、薬の種類ごとに放り込む。

 しっかりとふたの部分を閉じたら腰に装着し、軽く動いて邪魔にならないか確認する。


「お姉ちゃん、アルフォスさんたちに貰った短杖も持っていった方が良いかな?」

「んー、真っ直ぐだからマジックバッグに入れておいても良いと思うけど、多分使わないんじゃないかなあ」

「それなら、わたくしが持っておきますわ」


 ジーナさんに渡されたマジックバッグごとリルファナが持って行くことになった。蜘蛛や拾える素材とか拾ったりするかもしれないから借りておこう。


 鉄の剣も父さんの思い出の品じゃなくて、アルフォスさんたちが持って来てくれた剣に取り替えた。

 3つとも形や重心が同じなので量産品なのかもしれない。


「おーい、アルフォスたちが来たぞ」


 宿に泊まっていたアルフォスさんたちが到着したようで、父さんに呼ばれたので外に出た。


「お、少し着慣れてきた感じだね」

「少しは冒険者らしくなりましたかね」

「うんうん」


 鎧をくれたジーナさんにそう言われるとちょっと嬉しい。


「……メイド服で戦える?」

「改造してありますの」

「なるほど……かっこいい」


 ミレルさんがリルファナの改造したメイド服に触れて確かめている。何か通じるものがあったらしい。


「やー、ごめんごめん、しばらく武器を持ってなかったからしっくりこなくて準備に時間がかかったさね」


 小さなリュートを背負い、腰に鈍器メイスを下げたレダさんがやってきた。

 服装は、昨日までは違ってポンチョ風の上着に膝丈のパンツと動きやすそうなだけで通常の衣服とほとんど変わらない。リルファナのように改造しているのだろうか。


「久しぶりに見たな、<子守唄の>レダのフル装備」

「ギルドじゃあ、必要ないからねえ」


 <子守唄の>というのはレダさんの称号のようなので、歌系の称号ということは詩人バードか、吟遊詩人ミンストレルかな?


 ほとんどのゲームで、詩人バード吟遊詩人ミンストレルは混同されがちだが、セブクロでは似ているもののしっかりと別の職業となっていた。どちらも呪歌じゅかと呼ばれるスキルを使う職業だ。楽器や歌唱に魔力をのせて広範囲の味方に強化バフや敵に弱体化デバフをかける支援型の役割ロールをもつ。


 詩人バード吟遊詩人ミンストレルが1人いれば付近にいるパーティメンバーにもかかるので、大規模戦闘レイドのような人数が多い戦いほどその真価を発揮しやすい。もちろん複数人いれば別の呪歌ならば重ねがけすることも可能だ。


 また後方支援専門の詩人バードから派生する吟遊詩人ミンストレルは、その語源から大道芸を絡めた近接戦闘も可能であった。派生職であり、どちらも上級職扱いなので、詩人バードに比べて多少のデメリットが発生するが自衛能力を持てるのは大きかった。


 アルフォスさんたち4人のパーティと、わたしたち4人のパーティに分けておいて毒蜘蛛を倒すことになった。

 完全に分かれるのでなく、近場で戦うのだが指揮系統の問題もあるのだろう。


 南の森に入り、8人で奥へと進んでいく。


「この辺りだったか?」


 父さんが付近の木を調べながら慎重に前に出た。


「そうさね。では毒蜘蛛ポイズンスパイダーの掃除を始めよう。アルフォスたちはあたしの音の届く範囲で戦うさね。ミーナちゃんたちは、しばらく音に寄ってきた蜘蛛を倒しておくれ」


 レダさんが、リュートを構え旋律を響かせた。

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