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最弱職のはずの魔法戦士のわたしが冒険者になりました  作者: 忘れじ草
第1部

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町へ

 ソルジュプランテ王国ハウリング伯爵領。


 フェルド村のある場所らしい。初めて聞いた。


 ついでに、フェルド村から一日の距離にある町はガルディアの町というらしい。


 なんでそんな情報を今更ながら仕入れているかというと、ガルディアの町に行くことになったのである。


 本来は父さんの仕事なのだが、わたしとクレアで手紙を何通か冒険者ギルドまで持っていくことになった。


 父さんは定期的に町にいって手紙を出している。そのついでに町で必要な村の用事も引き受けていた。

 父さんの両親はいないと聞いているので、アルフォスさんたちや冒険者時代の知り合いと手紙のやりとりぐらいはしてるのかな。


 今回、なんでわたしたちが手紙を運ぶことになったかというと、クレアの誕生日に父さんが張り切って腰をやってしまったのだ。


 わたしがクレアに髪飾りをプレゼントしたことに対抗したらしい。クレアに杖でも作ろうとしたのだろうが、丸太を運ぼうとしてぎっくり腰になった。思いつきでいきなりはじめるからだ。


 普段であれば父さんが治ってからか、緊急なら他の大人が行くことになっている。


 わたしもクレアも前から町に行ってみたいと話していたこともあるからか折角だし2人で行って来いと言われた。社会勉強も含まれているのだろう。


 もちろん街道であれば安全だとはいえ、本来なら子供だけで町までお使いに行かせるようなことはしない。

 だけど、わたしであればこの付近の魔物ぐらいなら遭遇しても倒せるので町まで行っても大丈夫だろうということになったらしい。


 ハウリング伯爵領内では、山賊やそれに類する存在もほぼ見られない。定期的に兵士が領地内を巡回していることが大きいそうだ。


 ハウリング伯爵は、領民に対しても善政を敷いており支持も厚い。


 寝たきりになっている父さんに呼ばれたと思ったら、そんな話だった。母さんもわたしたちが町を見てくることに賛成しているらしい。


「ミーナ、どうせなら冒険者ギルドで登録してこい。この前の金貨を換金したら、ギルドに預けておけば無くす心配もなくなるし、冒険者なら村の中で剣を持っていても問題無い。ついでに宿屋もそこで聞けば良い」

「お父さん、私も登録していい?」

「金を預けるだけなら商業ギルドでも出来るが。……クレアは冒険者になりたいのか?」

「うーん、まだ分からないけれど」


 ちらりとクレアがわたしを見る。


 そういえば何も言っていないのにわたしが冒険者になることは確定してる気がするよね。


 村の仕事に興味を示さないし、剣の稽古ばっかりしているから仕方ないかな。最近はわたしも冒険者になろうかなって思ってるんだけど、はっきりと言い出すきっかけが無いだけなんだよね。


「……そうか。まあいいだろう。ただし、今回は登録だけだからな」

「うん、ありがとう、お父さん!」



 今日は町へ行く準備をして、明日の朝から出発する予定だ。


 準備と言ってもマジックバッグに食料と水、配達する手紙、着替えとお金を入れるだけで済む。万が一を考えると野宿対策に毛布か代わりになる外套も入れておくべきかな?


 この前の探索で貰ったマジックバッグは2つともベルトポーチ型。


 これはベルトにさげておけば盗まれにくいし、当たりの部類だと思う。どちらもぱちっとはめるタイプのスナップボタンで留めているが、小の方は銀色、大の方は金色のボタンだった。


 マジックバッグの性能を確認したところ、ポーチの口に2割ぐらい入れば何でも入れられる。


 ポーチの口を開けて触れることでゲームのリストのように中身の確認が出来て、その状態で出したいと意識すると手に取ることが可能だった。


 重さについては目に付いた重そうなものを目いっぱい入れても何か入ってるなと感じるぐらいで片手で持てる。

 ゲームのアイテムストレージのようになっているのかもしれない。時間が止まるような保存機能は無いが、これだけでも便利なバッグだ。


 リュックサックや手提げカバンのような大きなマジックバッグだと出し入れしやすいというメリットがあるが、移動の邪魔になりやすいという欠点もある。

 馬車なども使う商人や兵士などの遠征には大きいバッグの方が使い勝手は良いだろう。


 小の方でも海外旅行用の大きいスーツケースぐらいは入るんじゃなかろうかというぐらい入った。


 大の方の容量はよく分からなかった。口が小さいからテーブルや椅子は入れることが出来ず試せなかったのだ。野菜の収穫期なら調べられたかもしれないけど。わたしの剣は入った、明らかに小さいポーチにするすると入っていくのが面白い。


 ちなみに興味本位で試したらマジックバッグに何かを入れたマジックバッグを入れることは出来ない。

 何も入っていないマジックバッグなら入れることが出来る。


 1つのマジックバッグにたくさんのマジックバッグを入れ続けて無限バッグみたいなことは出来ないみたいだ。残念。


「小の方はクレアにあげるね」

「え、いいの?」

「いいのいいの。アルフォスさんたちの同行を譲ってもらったお礼も兼ねてね。冒険者にならなくても便利そうだし」


 このバッグひとつあるだけで買い物やちょっと物を運ぶだけでも便利に使えそうだ。


 バッグ一つで大金貨1枚ってかなり格安で譲ってもらったんじゃないかとも思うのだけど、町なら有り触れた物なのかな?


 その辺りも確認してこようと思う。


「明日は早いからもう寝るよ」

「うん、おやすみ。お姉ちゃん」


 村から近いと言っても早朝出れば明るいうちに着くぐらいの距離だ。朝早くに出ないと外で野宿になってしまう。


 1日ぐらい野宿しても無理ではないだろうが、旅なれていないわたしたちでは不安もある。



 ――翌朝。


 村の出入り口は柵で囲った簡単なものだ。出入り口はここですよという目印程度の簡素さで、柵の先へと目を追っていけばすぐに何も無くなってしまう。


 南の森はウルフやクマなどが、稀に村の近くまで寄ってくることがあるのでしっかりと柵で囲われている。北の森は安全なため無警戒であった。ノーガード戦法である。


 ……違うか。


 ガルディアの町へは、フェルド村の西口から伸びる街道から続いている。途中の丁字路を北へ進めば町、南へずっと行けば国境だ。


 国境には砦があるらしいけど、今回は関係無い。


「気をつけて行ってくるのよ」

「町についた翌日は観光して、もう1泊したら帰るよ」

「せっかくなのだから2、3泊してきてもいいのよ。町は1日で回れるような大きさでも無いわよ?」

「うーん、じゃあ向こうでクレアと決める。もし長くなっても1週間以内には戻るよ」

「ええ、楽しんでらっしゃいな」


 母さんが村の出口まで見送りにきてくれていた。父さんは動けないからね。


 わたしはアルフォスさんたちに貰った防具を装備し、木剣と父さんに貰った鉄剣を2本とも吊るしている。


 木剣も持っているのは魔法剣を使うかもしれないから念のため。ダンジョンで手に入れた剣はマジックバッグに入れてある。


 クレアは普段とあまり変わらない服だが、防刃効果があるクロークを羽織っている。母さんが父さんと村の外へ出かけるときに使っていたみたい。プレゼントした髪飾りは毎日つけている。


 お昼までは森に沿って作られている道を西に歩いてくだけだ。


 クレアと一緒に雑談しながら歩いていく。


 村の西側では北の森がやや南側まで伸びている部分があるため、南北に何度か波打つような道になっている。


 街道の南側は草原で、最南端まで出たら真っ直ぐ西へ道を敷いた方が良かったんじゃないかなと単純に思う。

 昔の人が歩いていた場所をそのまま整地していったんだろうか、何かしらの都合はあったのだろう。


 天気もよく、右を見れば森、左はなだらかに続く草原。


 最初のうちは物珍しかったが、ほとんどずっと同じ景色だとちょっと飽きるね。


「お姉ちゃん、これが魔物避けの石柱なのかな?」

「んー、多分?」


 魔物避けの石柱はわたしと同じぐらいの高さで、上部にはランプのようなものが取り付けられている。


 ランプはほのかに輝いていて、暗くなると効果が切れている証になるらしい。現在では全ての石柱に番号がふられていて、一番近い町の冒険者ギルドか商業ギルドに報告した最初の人はお小遣い程度だが報酬も貰えるようだ。


 この石柱の付近には、魔物が近寄らなくなる効果があるので比較的道は安全なのだ。

 魔物にとっては何となく近寄りにくいぐらいのものらしく、魔物に襲われてから逃げ込んでも魔物が引き返すということはない。


 王国ではこれらを維持するために兵士が巡回するときに魔石を補充している。取替える頻度は高くないが、これをしっかりしている領地ほど統治に対する姿勢が優秀というのが王国内の見方だ。

 逆にいえばそれすら出来ないような領主は、国王から領地の返還を強制されることもあるらしく、国内でさぼってるような領主はいないようだけどね。


 石柱の位置から次の石柱までは結構離れているので目視は出来ないが、道を歩いている限りは点々と立っている石柱を追いかけていくことになる。


 太陽が真上になったころ、次の魔物避けの石柱があるところでお昼を取ることにした。


 次の石柱は5個目となるので徒歩1時間前後ぐらいの間隔で設置されているようだ。徒歩で1時間だと4キロメートルぐらいかな。のんびり歩いているしもうちょっと短いかな。


 この世界ではメートル法が普通に通じるので楽である。

 そもそもわたしの意識では日本語でしゃべっているのに話が通じているので、本当の言語や単位は違って、わたしの中で自動的に翻訳されてる可能性もあるけどね。


 お昼は母さんが作ってくれたおにぎりだ。


 いつだったか残ったご飯で作ったら、母さんが驚いていたので村には存在しなかったらしい。米自体はあったのに何でだろう。村の中で持ち運ぶならパンで十分ってことかな。


「外で食べると美味しいね、お姉ちゃん」

「天気も良いし、ピクニック日和だね」

「ぴくにっく?」


 そうだね、こっちでは滅多に村から出ないんだからそんな言葉無いよね。


 ……食事が目的なのがピクニックだから違うよとか言わないよね。

 

 頭の良いクレアだと言い出しそうで怖い。

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