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東の森の迷宮探索 - 元廃墟の探索

 変化のあった廃墟のエリアに入る。

 建物は、新築のようになっているようだけど、建物の配置は変わっていないようだ。住人や生物の姿も見当たらない。


「町の中だけ変化しているようですわ」


 建物には入らずに外をざっと回ってみたが、全ての建物が復元されていた。

 道も心なしか綺麗になっている気がする。


 町の囲いから外れている建物は、すぐ近くにあってもそのままだった。


「像が増えていますわね」


 建物以外には曲がり角など、ところどころに石像が増えていた。

 神像にも見えるが、見覚えはないので六大神ではなさそうだ。


「ザッカリーさんがボスを倒すことで迷宮ダンジョンが変化することがあると言っていましたが、ここまでとは思いませんでしたわ」

「こんなに変化することもあるんだね、リルファナちゃん」


 少し小高くなった場所に、2階建ての建物が見えている。

 1番広そうな建物だし、1番怪しいここを最後にしよう。 


「手前から調べていこう」

「はいですわ」

「うん!」


 復元された建物に入ってみてすぐ気付いたが、屋内に家具などはないみたい。

 苔むしていた床や崩れかけていた壁が、時が巻き戻ったかのように修復されているだけだ。


「ここは休憩に使った家だね」

「落ちていたゴミだけでなく、煮炊きの跡も消えていますわ」

「ここが変わったときに消えちゃったのかな? リルファナちゃん」


 クレアの言う通りだろう。

 どちらにしろ、あれから数日経過しているので、迷宮ダンジョンの自動修復機能で消えていた可能性も高そうだけど。


「綺麗になっただけで特に何もありませんわね」

「探す場所もほとんどないね、リルファナちゃん」

「ええ、床下や壁にも何もなさそうですわ」


 リルファナが探索スキルを使って調べても隠し扉などはなさそうだ。

 空洞でもないかと、コンコンと軽く叩いてみるが、ぎっしりと詰まったような音が返ってくる。


「次に行こう」

「ええ」


 どんどん建物を調べていく。

 どこも空っぽの建物で、残るは2階建ての建物だけとなった。


「残りはあそこですわ」


 小高くなっているため、階段を上がり建物に近付く。


「この階段ってあったっけ?」

「ぼろぼろの状態でしたが、何かあったような跡はありましたわね」

「そうなんだ」


 リルファナは、色々な細かい部分まで覚えていることが多い。


 調査中に変わったところ、不自然なところを考えると自然と脳裏に浮かぶことがあるらしい。

 これも探索スキルの影響ではないかという話だった。うらやましい。


 階段を上がり、2階建ての建物に入る。

 玄関の部分には靴箱のようなものが設置されていて、左右の奥へと続く廊下にも燭台が設置されている。


「あれ、この家は家具があるね。お姉ちゃん、リルファナちゃん」

「うん、ここはよく調べよう」

「何かあると言っているようなものですわ」


 部屋に入ってみるとリビングや書斎に見えた。ソファや本棚、大きな花瓶といった家具もある。

 細かく調べながら右奥へ進むと、2階へ上る階段があった。


「お姉ちゃん、どうする?」

「反対側を先に調べようか」


 廊下は反対側も同じような広さだったはず。

 2、3部屋しかないので、1階から調べてしまおう。


 反対側は、台所が併設された広い食堂だった。


「テーブルや椅子はありますが、特に変わったところはありませんわね」

「鍋まであるね」


 鍋はあるが、包丁などの道具や皿までは置いていない。

 他の部屋も細かい道具までは再現されていなかったので、気にするほどでもないか。


 食堂を抜けると廊下の最奥の手前に出た。


「あら、地下がありますわ」

「反対側にも階段があったか。うーん……」

「普通の家と同じみたいだし、地下は倉庫じゃないかな? お姉ちゃん」


 先に行ってみないと実際にどうなってるか分からないし、行ったり来たりしても仕方ないか。2階より先にこっちを調べよう。


 リルファナを先頭に階段を下りていく。下りた場所が少し広くなっていた。

 すぐ横に扉があり、鍵が閉まっている。


「あら? 珍しいですわね」


 リルファナが道具を出し、鍵穴に針金を挿し込んだ。

 しかし、顔をしかめるとすぐに針金を抜いてしまった。


「これはダメですわね。どこかに鍵か、開けるための仕掛けがありそうですわ」

「リルファナちゃん、開けられないの?」


 リルファナがあっさりと引いたため、クレアが質問した。

 どうやら魔力的な仕掛けで保護されているようで、強引に開けることができないタイプの扉らしい。


「扉の防御を上回る魔力で破壊してしまうことはできるかもしれませんが、最期の手段にしたほうが良いと思いますわ」

「だって、お姉ちゃん」

「ですわ、ミーナ様」


 なぜ、わたしに念を押すのか。


 扉を眺めていると、デフォルメされた骨とハートの絵が、薄っすらと描かれていることに気付いた。


 何かのヒントだろうか。


 地下室には入れなかったので、2階に上がる。


 2階はベッドのある寝室がいくつか続いた。

 ベッドとサイドテーブルぐらいで調べるところも少ない。


「ここが最後だね」

「何かあると良いのですが……」


 1番奥の部屋に入ると、物置のような部屋だった。


 タンスや本棚、ベッドまで様々な家具が雑多に置かれている。

 他の部屋と違い、ペン立てや写真を飾る壁掛けのような細かいものまであった。と言っても、ペンや写真自体はないのだけど。


「罠はなさそうですわ」

「鍵、鍵」


 先にリルファナがざっと調べて罠がないことを確認。

 3人で家具を1つ1つ調べていく。


「お姉ちゃん、リルファナちゃん。かわいいのがあった!」


 クレアが何か見つけたのか叫んだ。


 ……かわいいってなんだ?


「ぬいぐるみ?」


 デフォルメされたドラゴンスカルのぬいぐるみが、なぜか衣装棚の中に鎮座していた。

 よく見ると、骨っぽさは糸で再現しているだけで、形自体はリルファナが作っていたような竜のぬいぐるみと同じような作りみたい。


 クレアは抱き上げたそうな顔をしているが、罠があるかもしれないと触らないようにしているようだ。


 この階のボスであったドラゴンスカルのぬいぐるみ。明らかに怪しい。


 まずはリルファナに調べてもらう。


「ふかふかですわ」


 リルファナが両手に抱えるぐらいの大きさ。


「罠は……?」

「え? ええ、大丈夫ですわ」


 これは、何も考えずに抱えたな。

 まあ、リルファナなら触れようとした瞬間に分かるのだろうけど……。


「リルファナちゃん、私も!」

「はいですわ」


 リルファナに渡されクレアが抱えている。


 ぬいぐるみを見ていて、地下室の扉に描かれた絵を思い出した。


 そうか、これも骨だ。


「クレア、ちょっと貸して」

「うん!」


 ドラゴンスカルのぬいぐるみを受け取り、強めの力をかけて中に何か入っていないか調べる。

 その中央、ドラゴンスカルが骨になる前であれば心臓がありそうな位置。綿ではない、硬い感触があった。


「ここに何か入ってるみたい」


 いきなりぬいぐるみを切り開こうとすると何か言われる気がしたので、2人にも確認してもらう。

 わたしも日々、学習しているのだ。


「鍵っぽくはないね? リルファナちゃん」

「小さな箱でしょうか」


 リルファナがマジックバッグから裁縫用のハサミを取り出して、縫い目を切り取った。

 綿の中から小箱だけを抜き取ると、綿を戻し白い糸で縫い付けている。


 修繕までするということは持って帰るつもりなのだろうか。

 まあ、2人に任せよう……。


 取り出した小箱は、アクセサリーを入れる箱のように上側が開く。


 予想通り、中には小さな銀色の鍵が入っていた。


 一通り調べて他に何もないことを確認したあと、地下室の入口へと戻る。


 試しに鍵穴に発見した鍵を入れてみると、ぴたりと合った。


「これでいいみたい」


 扉を開くと小さな部屋。

 左右には棚、樽が置かれている。食糧庫だろうか。


 そして部屋の中央には、己を主張するかのように魔法門ポータルがドンっと開いていた。


「向こう側は小さな島でしょうか」

「変な建物もあるね、リルファナちゃん」


 魔法門の景色は、周囲が砂浜で少し向こうには草原が広がる。

 草原にはドーム状の小さな建物が見えていた。


 パッと見た感じでは1階に似ているような気もするが、見たことのない景色だ。


「行ってみよう」

「うん!」


 ここで、魔法門ポータルの中の景色を見ているだけでは何も進まない。


 ゆっくりと魔法門ポータルをくぐった。

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