表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
195/265

ソーニャからの相談

 夕食中、ふと思い出して魔木まぼくを倒して道を決めていたことを話した。


「不思議な倒れ方をしましたわね」

「お姉ちゃんがやると、当たりの道にしか倒れなかったね」


 今思えば、そのおかげでソーニャさんたちを助けられたんだけどね。


「魔力を持つものには不思議な効果があるものも多いですけど、そのような話は聞いたことありませんね」

「あたしも聞いたことないさね」


 マオさんもレダさんも知らないようだ。


 セブクロにもこのようなアイテムはなかったはず。


 ……そういえば似たアイテムで、次の階層へ進むための階段の方角を向くというコンパスならあったかな?

 指し示すのは1番近くの階段であり、あくまでも方角だけだった。そのせいで、建物内など壁の多い場所や、階段が複数ある場所では、ほとんど役に立たなかったけれど。


 クレアやリルファナにはできないことを考えると、わたしが無意識に何かの魔法を使っている可能性が高そうだと結論付けた。



 翌日は休み。

 マオさんも含めた4人でガルディアのお店を回った。


 ラミィさんのお店やボードゲームのお店、冒険者が立ち寄るお店など気になった店に立ち寄る。

 野営のときにあると便利な道具や、迷宮ダンジョン探索のコツなども教えてもらったりと冒険者としても有意義な1日だった。


 そして、午後2の鐘が鳴る前には、マオさんは宿に帰っていった。


「久しぶりに楽しかったです」

「ガルディアに戻ったら、また顔を出すよ」


 マオさんたちは、装備の修理が終わるまでガルディアで休憩するそうだ。

 王都に帰ってしまえば、会う機会も減ってしまうだろうし、ちょくちょく顔を出すことにした。


「クレアちゃんもまた遊びましょうね」

「うん!」


 人見知りなクレアが、1日でマオさんに懐いていた。


 わたし自身も、色々とよくしてくれる人が周囲に多い気がする。

 転生者や転移者が、この世界(ヴィルトアーリ)の住人に友好的な態度を取る場合、好感度が上がりやすいとかあったりしてね。


 夕飯の前、マジックバッグの整理をしてから3人で迷宮ダンジョンのどこを探索するか話し合っておく。

 ソーニャさんに9階の地図を写させて貰っているので、いくつかアタリを付けておきたい。


「9階もいつも通りなら、リルファナちゃんが言ってたように、やっぱり墓地のある方じゃないかな?」


 クレアは墓地エリアを指さした。

 いくつか行き止まりや、壁に囲われたエリアもあるのでその辺りだろうか。


「このパターンは初めてですし、意外と入口に近いところに変化があるかもしれませんわね」


 リルファナはドラゴンスカルを倒したあと、魔法門ポータルで9階の入口へ戻れるようになったところに着目したみたい。

 近道ショートカットの先、入口付近に次の階層への階段があるかもしれないということだろう。小屋の周辺も調べてみる価値はありそうだ。


「ど真ん中の町の廃墟も気になるよね」


 わたしは中心に位置している廃墟が気になっている。

 建物も多く残っていたし、どこかに道が開いたかもしれない。


「結局怪しいところばっかりだね。お姉ちゃん、リルファナちゃん」

「そうですわね。比較や検討できるような情報もありませんし」

「うーん、とりあえず今出た場所を入口から調べていこうか」


 入口付近で変化がないか確認したら、そのままエリア中央の廃墟まで行く。

 そこでも何もなければ墓地エリアを調べることにした。



 翌朝、レダさんの出社と一緒にギルドに向かって、中央広場でお弁当を買ってから出発しようと家を出る。


「あ、ミーナさん。丁度良かったです」


 ソーニャさんがギルドにいた。


「もし、迷宮ダンジョンで回復系の薬や道具を見つけたら教えていただけませんか? 不要でしたら買い取らせていただきたいのです」

「それは構いませんけど、ポーションだけじゃなくて魔道具マジックアイテムも探しているんですか?」

「ええ、どちらでも良いのですが、効果の高いものを探していまして」


 チームか身内に、重病者か重傷者でもいるのかな?


「ええと、どの程度のものを探していますの? ポーションでも良ければ手持ちにもいくつかありますわ」


 治療についてはリルファナの方が詳しい。

 ポーションでも良いのなら、素材さえあればリルファナが作ることもできる。


「ムーンライトポーションという薬を探しています。エリクサーなどの上位の薬でも構いませんが、ほぼ見つかることはないでしょう」

「月光薬ですの? あれはあまり強い薬ではなかったと思いますが……」

「リルファナさんは知っているのですね。調べてみたところ、特定の病に効く薬だと分かりまして」

「ええと、あれは治癒というよりは解呪の効果に近いですわね」

「呪い……ですか? ……なるほど。ガルディアにいる間に、ちょっと調べてみます」


 ソーニャさんも、ムーンライトポーションなら確実に効くと分かって探しているわけじゃないみたいだ。


「とりあえず、治療や解呪の薬か魔道具マジックアイテムが見つかったら知らせますね」

「ありがとう、お願いします」


 とりあえず、もし見つかったら知らせると約束してソーニャさんと別れることにした。


 各自で好きなお弁当を買って、ガルディアの東門から街道に出る。


 街道に出てしまえば、すぐ近くに人がいることもないので、スキル関係の話もしやすい。


「リルファナは、ソーニャさんが言っていたポーションは作れないの?」

「ムーンライトポーションを作るには、満月のときにだけ咲くと言われる花が必要ですの。この辺りにあるかも分かりませんわね」

「それだと難しそうだね」

「ええ、エリクサーの方がまだ作りやすいと思いますわ。ドラゴンの骨も手に入りましたし」


 ドラゴンの骨も素材の1つのようだ。

 簡単に作れそうなら、リルファナに作ってもらって見つかったことにしても良いんだけどね。


「エリクサーを作るとしたら他に何がいるの?」

「ガルディアや王都周辺で簡単に手に入るものを除くと、森の花蜜、岩のしずく、それと妖精の石ですわ。ただ呪いには効果がないと思いますの」


 森の花蜜はエルフがよく使う花蜜だった気がする。岩のしずくはドワーフが精製した水だったかな?

 前者はエルフの薄焼き菓子にも使われるので、ラミィさんに事情を説明すれば売ってもらえると思う。後者もドワーフの職人に頼めば入手できる可能性は高い。


 妖精の石は、随分と前に妖精から貰ったまま倉庫の肥やしになっているものがある。


 別に人助けのためなら使ってしまっても構わない。


 となると、材料は揃えられそうだ。

 時間があるときにソーニャさんに詳しく聞いて、エリクサーが必要そうならリルファナに作ってもらっても良いかもしれない。


「あ、お姉ちゃん、魔木まぼくのやつ、ここでも試してみたら?」

「やってみようか」


 街道を歩いているとクレアがそう提案した。

 なるほどと思い、魔木まぼくを立てて、倒してみる。


「町の方に向かって倒れましたわよ」


 もう少し進んでもう1度。


「今度は、東の方に向かって倒れましたわ」

「魔力も流れてなかったよ、お姉ちゃん」

「変な倒れ方でもないし、効果はないってことかな?」


 迷宮ダンジョンの中でないと効果がないのか、本当に必要としているときにしか発動しないのだろう。


 迷宮ダンジョンの出現により、冒険者がガルディアと往復するようになったせいか、森に入っても魔物を全く見かけない。


 わたしたちも通いなれた道だ。

 特に問題なく9階の入口へと戻ってきた。


「何もなさそうですわね」

「うん。見つからないだけかもしれないけど」

「リルファナちゃんが気付かないものを、見つけられるかなあ?」


 クレアが残念そうにぼやいた。

 リルファナは探知系の能力を持っているからね。クレアだけでなく、わたしもどう頑張っても勝てないと思う。


 3人で入口や小屋の周辺を詳しく調べてみたが、特に変化もなさそうだった。

 魔木まぼくも倒してみたが、クレアに魔力が流れていないと言われた。迷宮ダンジョンだから効果があるというわけでもなさそうだ。


「お昼にしたら、中央にあった廃墟に行こう」

「うん!」

「そうですわね」


 お昼休憩をはさんで、9階に敷かれた街道を歩く。

 地図もあるし、選んだ道もまだ覚えているぐらいの時間しか経っていない。


「この先ですわ」

「リルファナちゃん、あれ」

「え?」


 地図を見ながらリルファナが歩いていると、クレアが先を指す。


 そこには綺麗な門が見えた。


 崩れかかった塀や、外壁が辛うじて少しだけ残った建物ばかりの、廃墟だった小さな町。


 それらが全て、たった今建てたばかりのような状態となっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ