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東の森の迷宮探索 - 9階の報告

 ガルディアへの道中も迷宮の探究者(ダンジョンシーカー)のメンバーと色々と話をしていた。


「嬢ちゃんたちは、まだ9階を調べるだろう?」

「はい、ザッカリーさんたちは調査を続けないんですか?」

「しばらくガルディアにいるつもりだが、ソーニャとククの装備をなおさないとだからな」


 店の多い王都と違ってガルディアでは、手の空いている鍛冶師がいるか分からないので、装備の修理にどれぐらいの時間がかかるか見通しが立たないようだ。

 ちなみにククララさんは名前が呼びにくいとのことで、パーティメンバーや親しい人からはククやララと呼ばれているらしい。


「今回の報告では、9階の地図は提出しないことにしました」

「俺たちの調査再開と同時に提出する予定だから、先に調べたいなら早めにな」

「ありがとうございます」


 ソーニャさんたちはこの先の探索を、わたしたちに譲ってくれるつもりのようだ。


「助けていただいたお礼というだけでなく、マオのこともあるのですよ」

「マオさん?」

「ええ、今までは切羽詰まったかのように探索ばかりしていたのですが、昨晩ミーナさんたちと話してから随分と落ち着いたようで。あのような笑顔を浮かべているのは初めて見ました」


 後ろを見るとマオさんは、リルファナとクレアと笑いながら話をしていた。猫耳がぱたぱたと揺れている。

 時々、マオさんがこちらをチラチラと見てくるので、どうやらわたしの話を吹き込まれているようだ。


「何を話したのかまでは聞いていませんが、良い方向に心境の変化があったのでしょう」


 日本から来た仲間を見つけたことで、少し気が楽になったのだろう。


 マオさんの笑顔を見て、ソーニャさんもほほ笑んでいる。

 どうやらソーニャさんは面倒見が良い人みたい。中規模チームのサブリーダーともなると、それぐらいの能力はないとやっていけないのかな。



 ガルディアの冒険者ギルドに到着。


迷宮ダンジョンの報告に来ました」

「ではギルドマスターの部屋までお願いします」


 迷宮の探究者(ダンジョンシーカー)のチームはかなり詳細まで報告するため、毎回ギルドマスターの部屋まで通されるそうだ。


 わたしたちは迷宮の探究者(ダンジョンシーカー)の後を追っていっただけだから、報告することもほとんどない。

 夕飯のときにでも、個別にレダさんに報告するぐらいでも大丈夫だと思う。


「あたしはドウランと鍛冶屋を探してくるよ」


 ククララさんとドウランさんは、このまま装備を修理してもらえそうな店を探しに行くようだ。


 うーん、ソーニャさんたちとはここで別れて窓口で迷宮ダンジョンの報告と、家の鍵を受け取って帰ろうかな?

 ガルディアにいる間のマオさんの滞在先も聞いてあるし、少し経ったら遊びに行くことにしても良いだろう。


「ミーナさんたちもお願いしますね」


 考えを読まれたようで、ソーニャさんに呼び止められてしまった。


「えっと、わたしたちが報告することってほとんどないと思いますけど……」

「ドラゴンスカルの仕掛けは、私たちには分かりませんので」

「なるほど」


 わたしたちじゃないと報告できないことがあるんじゃ仕方ないか。


「お帰り。おや、ミーナちゃんたちも一緒かい?」

「探索中に一緒になりまして」

「そうかい。座って少しだけ待ってておくれ」


 ギルドマスターの部屋に入ると、レダさんは書類仕事をしていた。


 来客用のソファに座って少し待つことになった。

 数分でレダさんは書き終わった書類を脇に置くと、向かい側に座ってメモを取り出す。


「お待たせ! じゃあ報告を頼むさね」


 ソーニャさんたちに任せて聞いていると、エリアの詳細な地図や魔物の種類や動向までしっかり報告していた。


「それで、……9階層の奥地にドラゴンスカルが出現しまして」

「なっ、……げほげほ」


 飲み物を口に含んだ瞬間だったので、レダさんが盛大にむせた。

 今まで20レベルぐらいの魔物の話をしていたのに、突然3倍以上のレベルを持つ魔物が出てきたのだ。びっくりするのも当然だろう。


「失礼……。なるほど、それで通りがかったミーナちゃんたちと共闘したってところかな?」

「いえ、全滅しかけているところを助けていただきました……」

「ん? 迷宮の探究者(ダンジョンシーカー)のメンツなら倒せなくはないだろう?」

「それが不思議な仕掛けがあり、戦闘の途中から手も足も出ず……。仕掛けの内容については、ミーナさんたちの方が詳しいのでお願いします」


 おっと、オーブのギミックを解説するときがきたようだ。

 解説といっても、ドラゴンスカルの近くにあるオーブに対応したステータスが上がるだけなので、そんなに話す時間もかからない。


「ふむふむ……。赤がSTR(筋力)、緑がAGI(敏捷)、青がINT(知力)、茶がVIT(体力)と」

「なるほど、オーブの色と能力値が対応しているのですね」

「ところで……、なんでこの色なんだい?」


 レダさんとソーニャさんがメモを取っていたが、レダさんがメモを取りながら呟いた。


 なぜ、この色か。


 確かにセブクロで表示される色のイメージでしかない気がする……。

 わたしが色で覚えていただけで、理由ってあるのかな?


「それと鑑定紙にあわせてDEX(器用)LUK(幸運)もあるとしたら何色になりそうさね?」

「赤は火属性を表していますわ。火の神、カルファブロ様は戦神でもありますわね」


 リルファナが横から解説を加えた。なるほど、属性に対応しているのか。

 そう言われてみれば、ゲーム中は教会の本棚で神様関係の話や、それに関わる設定を読めたような気もする。


 知識を表す水属性。速さを表す風属性、頑強さを表す土属性といった感じになるだろうか。


 とは言え、火属性はいくさだけでなく、鍛冶や力強さ、攻撃魔法といった高熱とか攻撃的なものも表す。

 もちろん、他の属性もそれぞれ1つだけを表すわけではない。


「リルファナちゃんが言う通りなら、DEX(器用)は闇属性の黒や灰色で、LUK(幸運)は光属性の黄色か金色かな?」

「ふむ、考え方はあるわけさね」

「能力値を色で表現するのですか、考えたこともありませんでした。そのような仕掛けも今まで見たことがありませんでしたね。これは、チームでも共有しておくべき情報ですね」


 ソーニャさんが頷きながら、しっかりとメモを取っている。

 レダさんとソーニャさんが納得したので、ドラゴンスカル戦のギミックの話は終わりかな。


「こんなところかね。しかし、ミーナちゃんたちはあちこちで人助けしてるさね」

「そうなのですか?」

「『王国の旅人』の連中にも泣きつかれてたさね」

「すごいですね……」


 誰だろう?


「あれ? ミーナちゃんはアルフォスのチーム名聞いてないさね?」

「そういえば、聞いた覚えがありませんでした……」


 そんな名前だったんだね。

 まだ父さんたちが4人だったときに作ったチームのはずだ。


 ちなみに、どちらもA級冒険者であるアルフォスさんたちと、迷宮の探究者(ダンジョンシーカー)を比較すると、戦闘能力はアルフォスさんたちの方が上らしい。

 スケルトンの王との戦い方を見ていると、確かにアルフォスさんたちの方が強かったように思えた。


「それと装備の修理だが、もし見つからないようなら、この店を訪ねてみるといい」


 報告も終わり部屋を出るとき、レダさんが小さな紙片に何やら書きつけてソーニャさんに渡した。


「良いのですか?」

「ああ、慣れてるパーティが、先を探索してもらえるとギルドとしても助かるからね」

「ありがとうございます」


 1階の受付で、救助依頼という扱いでソーニャさんからお金を受け取った。


 その額、白金貨3枚。


「あの、多すぎませんか?」

「戦闘地域での治療費も込みですし、これぐらいだと思いますよ」

「俺たちもそれなりに稼いでるから気にすんな」


 ザッカリーさんも納得しているようだし、多すぎるというわけでもないようだ。

 問題ないというなら断る理由もない。そのまま、受付で白金貨1枚ずつ3人のギルドカードに入れてもらった。


「それとマオ。2、3日は休みだし嬢ちゃんたちが良ければ少し遊んで来たらどうだ?」

「え、えっと……」


 ザッカリーさんに提案されマオさんがこちらを見た。


「じゃあ遊びに来る? 部屋もあるし泊まっていっても大丈夫だけど」


 明日1日は休みにして、明後日から迷宮ダンジョンに戻ろうかと思っている。


「じゃあ、お邪魔します」


 マオさんが嬉しそうに頷いた。



 1日分の食材を買って家に帰る。


「え、大きい」


 家の前で、マオさんが目を見張っていた。


「レダさん、……ええと、ギルドマスターの家を借りてるんだよ」

「ああ、それで」


 報告しているとき、わたしたちへのレダさんの態度が緩かった理由が分からなかったのだろう。

 知り合いだったのかと納得したようだ。


「マオさんもいればいつもと違う展開になるね」


 クレアはすでにボードゲームをやる気満々である。


「こういうゲームも、たくさんあったんですね。町を歩いていても全然目に入ってなかったです」

「種類はたくさんあるんだけど、売ってる店自体は少ないかな? 王都にもいくつかあったよ」

「そうなんですか。今度探してみようかな。こういうゲームはドウランが好きそうです」


 いつも通り、マオさんにもボードゲームの布教をして、1日家でゆったりと過ごした。

 マオさんは日本でもボードゲームをプレイしたことないらしく、ほとんど勝てていなかったけど、それでも楽しそうだ。


「お邪魔してます」

「おや、いらっしゃい」


 夕飯の準備を済ませたころ、丁度レダさんが帰ってきて笑ってこう言った。


「ミーナちゃんは友達ができるのも早いさね」

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