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東の森の迷宮探索 - ダンジョンシーカー

 リルファナの怪我は大したことないようだが、ブレスがかかった場所を確かめる。

 更に念のため、クレアに詰めてもらった癒し(グアリジョーネ)のコインを使っておいた。


 軽い火傷のようになっていた肌も、元に戻ったので大丈夫だろう。


魔法門ポータルが開いていますわ」

「ここって9階じゃなかったっけ?」

「ええ、そのはずですわ」


 9階に生息している雑魚敵とするにはドラゴンスカルは強すぎる。

 今までなかった変な仕掛けがあったりもしたし、ボスだったのだと思う。


 ここが迷宮ダンジョンの最深部なのだろうか。


 リルファナの言うとおり、広場の中央には青色の魔法門ポータルが開いていた。

 向こう側の景色は9階入口にあった小屋が映っている。


 クレアの方を見ると、全員を治療していたようだ。


 重症だった少女は地面に寝かせられている。

 他の4人も疲労で座り込んでぐったりとしていて、まだ話すのは厳しいかな?


「お姉ちゃん、助けてもらったから、解体したのは全部くれるって。放っておくと消えちゃうから解体しちゃって良いみたい」


 クレアの方を見ていたからか、クレアが近付いて来た。

 治療は終わっているようだけど様子を見ておきたいようで、それだけ言うとクレアはすぐに戻っていった。


「ん、普通に分けて良かったんだけど……。まあ、解体しちゃおうか」

「竜の骨ですわね!」

「現状では使えるか分からないけど、使い道は多いよね」

「ええ、ドラゴンソード系、ドラゴンボーンアーマー系にもなりますし、粉は薬の材料にもなりますわ」


 動かなくなったドラゴンスカルを、魔法剣をかけた短剣で解体していく。


「むむ、簡単には切れませんわ」


 リルファナが解体用の短剣で骨を小さくしようとしたが、刃が通らないようだ。

 死霊特攻ゴーストキラーの能力がついた短剣に持ち替えて切っていた。


 ゲームだと1匹倒してもドロップは1個とか2個ということも多いけど、現実となった今では大きい魔物であればそれだけの量が手に入る。

 骨の魔物だから、どれだけ解体しても骨しかないのは悲しいところでもあるけど。


「うーん、爪は骨とは別かな?」

「一応、分けておきますわ」


 ドラゴンスカルの爪の部分。

 骨と同じくすんだ白色なのだけど、攻撃に使われるだけあってとても鋭い。



 解体を終えて、広場の入口にいるパーティと合流した。


「助かった。治療までありがとうな」


 前衛に立っていた男性が腕を軽く振った。こちらの怪我もクレアが治したようだ。


「すごい回復力ね。クレアさんが来なかったらソーニャは死んでいたかもしれない」


 少女の横に座っている神官戦士さんが、寝込んでいる少女を見ながら言った。

 治療の反動で眠っているのだろう。


「おっと、自己紹介していなかったな。俺はザッカリー。俺たちは『迷宮の探究者(ダンジョンシーカー)』ってチームのパーティだ」


 やはり、迷宮の探究者(ダンジョンシーカー)のメンバーだったようだね。


「あたしはククララ」


 神官戦士さんが兜を外した。

 少女のような外見だが、大きな丸耳というドワーフの特徴がうっすらとある。


「ドウランだ。本当に助かったよ」


 青いローブを着ていたシーエルフさんだ。

 魔術師にしては、がっしりとした体格で装備次第では前衛職と間違えるかもしれない。


「マオです」


 道着姿の獣人の少女はぺこりと一礼した。


 マオさんの道着、よく見ると何かしらの強化効果がかかっているようで、薄っすらと魔力を帯びている。

 見ただけで分かるということは、レアリティの高い装備なのだろう。こちらの世界に来てから、高レアリティの装備を身に着けている人を初めて見た。


「それとこれがソーニャ。このパーティのリーダーなんだが……」

「重症だったんだから起こしちゃダメだよ」

「ああ、分かってるよ」


 ザッカリーさんが紹介しながらソーニャさんを軽く叩くと、ククララさんにたしなめられた。

 小柄なソーニャさん自身よりも大きな盾が置かれている。セブクロであった盾使い(シールダー)だろうか。


「嬢ちゃんたちはどこのチームなんだ? あいつをあっさり倒すレベルで、思いつくチーム名がなくてな」

「チームには入ってないです、ええと……」


 わたしたちも名乗る。


「聞いたことがないな。ヴァレコリーナのパーティとかか?」

「いえ、ガルディアを拠点にしています」

「ん、ガルディアはB級すらほとんどいない町だろ……?」


 ああ、そうか。

 ドラゴンスカルをあっさり倒してしまったので、A級だと思われているのか。


「わたしたち、C級冒険者なので」

「あれだけの技の使い手が、そんな低いわけないだろう」

「ええと、……これ」


 ギルドカードを見せた方が早いことに気付いて取り出す。


 確認したザッカリーさんと、ククララさん、ドウランさんの目が点になった。


「……まあ、助けてもらったのは確かだからな」

「そうね」

「うむ」


 細かいことは考えないことにしたらしい。


 中年以上の冒険者であるなら、兵士などから冒険者になったりして実力に対してランクが低いことある。

 けれど、わたしたちの歳で、そういうことはほぼないからね。


「礼の方は依頼扱いで、ガルディアのギルドに報告と報酬を渡しておくんでいいか?」

「はい。お願いします」


 ラーゴの町と同じように処理してくれるようだ。特に断る理由もない。


「俺たちはソーニャが起きたら、そこの魔法門ポータルから帰るが、嬢ちゃんたちはどうする?」


 うーん、10階に降りる階段みたいなものは見当たらないんだよね。

 いつもと違って、宝箱もないのが謎なんだけど……。


「ええと、ここ以外の探索って終わってますか?」

「ん? ああ、終わってるぜ。この部屋は明らかにやばそうなのが居座ってたから最後にした」

「ってことは次の階層はないのかな?」

「うーん、別の場所に道ができることもあるから、ないとは言えないな」


 ザッカリーさんが親切に色々と教えてくれた。

 さすが迷宮ダンジョン探索をメインにしているチームだけあって、経験からの情報も多い。


 ここがまだ9階であることや、宝箱がないことから、別の場所に通路が開いた可能性が高いんじゃないかということだ。


 他の冒険者がここまで下りてくるのはまだ先になりそうだから、数日ぐらい空けても先を越されるようなことはないだろう。


 クレアも回復魔法を連発したようだから、1度帰って休んでおく方が良いか。

 護衛が必要そうではないけど、ソーニャさんが起きたとしてもまだ本調子じゃないだろうし。


「ええと、一緒に町まで戻ることにします」

「そうか。じゃあ見張りぐらいはするから、ゆっくり休んでくれ」


 魔法門ポータルが開いたので、この広場は安全だろうということだ。


「万が一、またあいつが出現しても、嬢ちゃんたちならすぐ倒しちまうだろうしな」


 ザッカリーさんが笑いながら言った


 今日は野営の準備をして、休むことにする。


 マジックバッグの野菜がまだ残っていた。どうせ戻るなら全部使っちゃっても良いだろう。


「材料が余ってるので、みなさんもどうぞ」


 スープを作って、迷宮の探究者(ダンジョンシーカー)のパーティにもおすそ分けすることにした。

 ククララさんとドウランさんはテントの前で休んでいる。ソーニャさんを中に寝かせているはずだ。


「わざわざありがとうね」

「美味い」


 ドウランさんは一口飲んだあと、黙々と飲み続けていた。

 気に入ってくれたのだろうか。


 ザッカリーさんとマオさんは広場の入口を見張っていた。

 マオさんは猫の獣人で、気配の察知能力が高いらしい。


「スープを作ったので、どうぞ」

「おう、ありがとうな」

「ありがと。ん、これって醤油……?」


 マオさんは醤油を少し使っていることに気付いたようだ。聖王国の出身なのかな?

 猫耳が嬉しそうにピンと立っている。


「はい。聖王国の調味料だそうですが、ガルディアや王都でも買えますよ」

「そうなんだ」


 夕食後、戦闘後も他の人の治療や、ソーニャさんの様子を見ていたクレアを先に休ませる。


「竜の骨って薬にもなるんだ?」

「ええ、上級のポーションですわ。他にトレントの葉や聖水などもいるのですぐには使えませんけれど」

「聖水は錬金術だったっけ」

「そうですわね。回復魔法スキルも使える必要がありましたが、クレア様なら作れるようになると思いますわ」

「クレアのスキルは今どれぐらいなんだろう?」

「染料がほとんど作れるようなったようなので、もう見習いのレベルは超えていそうですわね。それより上のレシピを覚えていないので、どこかで探す必要がありますわ」

「ガルディアか王都にあると良いんだけど」

「王都に行ったときに探してみると良いかもしれませんわ」


 竜の骨の話から雑談まで、リルファナと話していると、マオさんが近寄ってきていた。


「……あの、ちょっと良いですか?」


 見張りを替わったタイミングだったようで、ククララさんとドウランさんが広場の入口付近に座っている。

 ちらっと見ると、ザッカリーさんがテントに入るところだった。


「なんですか?」

「えっと、もし知ってたらなんですけど」


 マオさんが深呼吸する。

 猫耳は横に寝ている。緊張、いや不安なのだろうか。


 そして一気に言葉を吐き出した。


「もしかして、日本という国を知っていますか?」

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