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東の森の迷宮探索 - 3階森エリア

 森の中、丸太でできた小屋。

 近付いて外周を1周すると扉が1つと、窓がいくつかあった。


「1部屋だけみたいだね」


 窓から中を覗くと、テーブルと2つのイスが部屋の隅に見えた。

 残りのスペースは、木の床で一段高くなっているだけだ。


「罠はありませんわ」


 扉を開いて中へ入り、床やテーブル周りを調べる。

 隠し階段、隠し部屋、隠し金庫といったものがないか念入りに調べたが、狭い小屋なのですぐに調べ終わってしまった。


迷宮ダンジョンって建築物が作られることがあるのかな」

「魔物の家じゃないよね? お姉ちゃん、リルファナちゃん」

「ええと、もしそうだとしても、中にも外にも使われている形跡がありませんわ」


 ゲーム的に言えば休憩ポイントのようなものだろうか。


 前に読んだ、迷宮ダンジョンについて書かれた本にも、魔物が近寄らず、罠もない場所が存在することがあると書かれていた。


「大丈夫そうなら、ここで休んでいこうか」

「うん」

「分かりましたわ」


 リルファナの盗賊スキルにも、クレアの魔力感知にも特に変な反応はないようだ。ここで休んでも大丈夫だろう。


 小屋の中で夕飯を済ませ、ここで1泊することにした。

 椅子は2つしかないので床に座ったけど、埃も積もっていない。掃除したというのではなく、常に新品の状態が維持されているような印象もある。


 そういえば、慣れない場所で3人だけで野営するというのも久しぶりかな。

 ランタンを使って時間を確認しながら交代で休んだ。


「お姉ちゃん、おはよう。外はずっと明るいから寝づらかったよ」

「おはよう。せめて閉じられる窓なら良かったんだけどね」


 朝食を済ませて更に森の奥へと出発する。


「今日1泊するまで探索したら、報告に町に戻ることにするよ」

「分かりましたわ。また魔法門ポータルを見つけられると往復が楽になりそうですわね」

「あるといいね、リルファナちゃん」


 小屋のある広場を抜けて、森を進むとすぐにウルフを発見した。

 フェルド村付近にいるウルフと同じ魔物だ。蹴散らしながらどんどん進む。


 やはり、魔物がいなかったあの広場は休憩ポイントだった気がする。


 道中、ウルフの亜種であるフォレストウルフや、兎の魔物コニリア、大きなリスの魔物であるワイルドスクイレルなども目撃した。

 どれもセブクロでは初期の魔物であり、強くはない。むしろ、浜辺にいる蟹やファングシールよりも弱い魔物が多い気がする。


 コニリアの肉は、調理も簡単で美味しいので解体して冷蔵のマジックバッグにしまう。


 他の魔物は報告用に1体ずつ確保するだけにした。

 ウルフもコニリアもガルディア周辺にいる魔物だし、素材もそんなに高く売れそうにもない。


 D級の冒険者がこの階まで下りてくるようになれば、すぐに出回りそうでもあるね。


「数は多いですが、弱い魔物ばかりですわね」

「探索は楽だけどね」

「リルファナちゃん、あそこに宝箱があるよ」


 クレアが端の方、木の根元に木箱が置かれているのを見つけた。

 2階の宝箱とは違い、素朴な素材だけど、周囲の環境にあった箱にでもなるのかな。


「あら、罠がかかってますわね。でも、これぐらいならわたくしでも解除できますわ」


 リルファナに罠を確認してもらうと、珍しく罠が設置されていた。


 もし、いつも罠なんてないんだから、これもかかってないだろうと開けたら痛い目を見るところだったね。


 スキルで罠の内容も把握できるらしい。この箱は、不用意に開けると箱の中で爆発が起こるそうだ。

 開けた人にほとんどダメージのない小規模の爆発だが、中身が壊れてしまうという罠である。


 リルファナは木箱をほんの少しだけ開くと、隙間から針金を挿し込んで罠を外した。


「お姉ちゃん、なにこれ?」


 入っていたのは竹。

 先端を斜めに切り落とし、尖っている。


「竹槍だね」

「バンブースピアですわ」


 同時に言ったリルファナと名前が違った。そういえばセブクロでは英語表記だった。

 もちろん強いわけもなく、ネタ装備の1つである。


「……これが槍なの?」


 クレアが竹槍を持って軽く振り回した。


「うーん? あんまり強くなさそう」

「一応、持って帰るね」


 クレアにはしっくりこなかったようだ。まあ、ただの竹槍だからね。

 クレアから竹槍を受け取りマジックバッグにしまった。槍の練習用とかぐらいなら使えるんじゃないかな。


 木立の迷路状になった森を、魔物を倒しながら歩き回る。


「今ここなのですけど、この先が怪しいですわ」


 地図を描いていたリルファナが、何かに気付いたようだ。

 描き途中の地図を見せてもらうと、森の端の辺りに空白ができていた。なかなかたどり着けない場所という感じだ。


「この辺りが怪しいね、リルファナちゃん」

「ええ、ここを目指してみましょう。ミーナ様もそれで構いませんの?」

「うん。明らかに怪しいし、そこで良いんじゃないかな」


 クレアが指さした空白。そこに行ってみることにした。



 途中にいくつか宝箱を見つけたけど、鉄製の装備や古い硬貨など、わたしたちが使うには微妙そうなものばかりだった。


 それと、追加の竹槍も……。


 魔道具マジックアイテムも無さそうだし、換金してしまって良さそうかな。


 キマイラを倒したあとの宝箱が豪華だったのは、ボス討伐報酬みたいなものだったのかもしれない。


「そろそろ地図の場所に着きますわ」


 時間はかかったけど、森の中をぐるぐると回りながら目的の場所に到着。


 地図の空白地帯。

 先日1泊した小屋と同じように、魔物が全くいない広場があった。


 中央には直径5メートルはある大きな木がそびえ立っている。

 大きな木なので目立つため、到着する少し前から見えていたんだけどね。


「大きいですわ!」

「うん、でも木しかないね、リルファナちゃん」

「あ、あそこ。木に大きい穴が開いてる」


 木の根元付近には、人が通れるぐらいの大きな穴が開いていた。

 近付いて確認すると、木の中にぐるぐると下に向かって螺旋階段が続いていることが分かった。


 木の中は、小さな光の粒子がふわふわと飛んでいて明るい。


「4階への階段みたいだね」

「うん!」

「ここからでは下が見えませんわね」

「少し休憩してから下りてみよう」


 小休止を取ってから、階段を下りることにした。



 綺麗にくりぬかれたような木の中。


 木製の階段を下りていくと、道中にも横穴がいくつかあり、その先は必ず小さな部屋になっていた。

 横穴も部屋の中も階段部分と同じで木目のある木製の壁だ。


「何もない部屋が多いですわね」


 念のため、何かないか部屋を確認しながら下りていく。


 途中で2つ宝箱を回収し、最下層にたどり着いた。


 回収したものも微妙なものばかりだが、竹槍と何も入っていない財布を見つけた。

 竹槍の入っている確率が高いのは何なのだろう……。


「途中に小部屋が7つ。ここが一番下かな?」

「ええ、随分と下りてきましたわ」

「うん。上が見えないよ、リルファナちゃん」


 見上げると螺旋階段がずっと続いている。入口は見えない。


 最下層にもやや狭い横穴が続いているが、今までと違い天然の洞窟となっている。

 あちこちに舞っている光の粒子は、この先もあるようだ。見通しが良いのは嬉しい。


 洞窟内は、ミミズが這ったように曲がりくねっていた。


「何かが這った跡がありますわ」


 地面をよく見ると、砂や小石が両脇へと退けられたようになっている。

 通路ほどのサイズの何かが這ったということか……。


 時々分かれ道もあったが、すぐに行き止まりだった。


「この先の広くなった場所に何かいますわ」

「4階に入ってから魔物を見てないし、2階と同じように強い魔物かも。注意して」

「うん!」


 通路の先、今までの狭い通路から、急に広大な空間へと変わっている。


 広間には、とぐろを巻いた大蛇が鎮座していた。

 わたしたちを見下ろす大きさで、独特な赤い模様の入った蛇。


「ブラッドヴァイパー!」

「毒持ちの蛇ですわ」

「分かった!」


 リルファナの説明に、クレアが詠唱しはじめた。


 ブラッドヴァイパー、セブクロでは蛇ダンジョンと呼ばれる場所のボス。

 レベルはキマイラと変わらないぐらいなので、油断しなければ倒せるだろう。


 シャーッというかすれるような威嚇音を出している。

 これ以上近付いたり、下手に動くと襲ってきそうだ。


 わたしは、霊銀ミスリルの剣を構えた。

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