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ラーゴの町 - 東区観光

 小雨の降る中、傘を開いて3人で歩く。

 さっき魚介類を堪能したお店に顔を出して、店主さんにも騒ぎが収まったことを報告。その後、教えてもらったお店に向かう。


 町を歩いていると雨が降り出したと急いでどこかへ向かう人、同じように傘をさす人や、店の軒先で雨宿りしている人など様々だ。


「ここですわね」


 貝殻の売っているというお店の場所を書いたメモを見ながら、リルファナが足を止めた。

 シンプルな倉庫のような建物で、大きな扉があるが開いてはいない。


「リルファナちゃん、本当に合ってる?」

「ええ、ここですわ」


 クレアに聞かれ、リルファナがメモをもう1度確認したが、合っているようだ。


 中から作業をしているような音が響いているので、建物の中に人はいるみたい。


「未加工の貝殻だから、職人が買うだろうし倉庫なのかも?」

「一般の人が買えるお店ではないのでしょうか……」

「それならお店の場所を教えてくれたときに、何か言うんじゃないかな。リルファナちゃん」

「ここまで来たんだし聞いてみよう」


 扉を叩いて声をかける。


「はーい」


 思ったよりもすぐに人が出てきた。防水加工のエプロンをつけた中年の女性だ。


「あら? お使い……、というわけでもなさそうね。何の用事かしら」


 普段、この時間に来るお客さんでもいるのかな?

 わたしたちの見た目から、いつもの客とは違うと判断したようだ。


「貝殻を売ってもらえると聞いてきたのですけど……」

「ええと、どこから聞いて来たのかしら? ここで取り扱っているのは土産用の物じゃないけど」

「加工前の物が欲しかったので大丈夫です」

「あら、そうかい。若い子たちだからアクセサリーを探してるのかと思ったよ。入っておくれ」


 勘違いと笑いながら対応に出たおばちゃんに中に通される。

 奥は貝殻を選り分けたり、洗ったりする作業場になっていた。削るような音もしているので、ここで加工しているものもありそうだ。


 貝殻は、全て箱単位での購入となる。見せてもらったところ、1つの箱が大きめのバケツぐらい。

 装飾品用に綺麗なものを選り分けた箱、装飾用からは外された箱、一切選り分けていない箱で金額が変わるそうだ。


「うーんと……」

「選り分けていない箱でお願いしますわ」


 どの程度の品質から薬の材料になるのか分からず、言葉に詰まってリルファナの方を見る。

 代わるようにリルファナが前に出てきた。任せておこう。


 リルファナは2箱購入。

 箱のままではマジックバッグの口に入らないので、袋に詰め替えてマジックバッグに入れていた。


 ちなみに、お店では詰め替え用の袋も売っている。

 箱のままでは重いし、マジックバッグに入れていく業者も多いのだろう。商売上手である。


 薬の材料としては随分と量が多い。他の使い道も考えているのかな。


「ありがとよ!」


 おばちゃんに見送られて貝殻を取り扱っているお店を出た。


「どうしようか」

「少し見て回る?」


 クレアに促され、付近を少し歩いてみて分かった。


 土産屋や飲食店の多かった西区に比べ、こちらは職人向けのお店が多い。

 観光客向けの店は、西門から波止場までの大通りにあるものでほとんどのようだ。


「あんまり見たいお店がなかったね。お姉ちゃん、リルファナちゃん」

「うーん、西区の方へ戻りながら買い物しようか」

「そうですわね、そうしましょう」

「うん!」


 傘に当たる雨の音がやや強くなってきたこともあり、1度通ってきた大通りを見直しながら戻ることにした。


 大通りのお店は、土産屋と魚介類のお店。そして東の諸島の交易品も扱われている。


 東の諸島というぐらいだから和風の物が多いかと思いきや、全く関係なさそうだった。

 ガルディアでは見ない服なども売られている。


「何て言う服だっけ?」

「ええと、サリーですわね」


 諸島からの輸入品と書かれた棚には、インド風の服が並んでいた。もちろん、男性用のクルタと呼ばれる服もある。

 大小さまざまな絨毯なども置いてある。


「東の島ではこういう服を着ているんだね、お姉ちゃん」

「うん、珍しいね」


 生地が違うだけで、普通のワンピースのようなものもあった。

 インドの衣装には詳しくないので、わたしにとっても物珍しいものが多かった。


「なにこれ! すごい綺麗だよ、お姉ちゃん!」


 複雑な模様と、煌びやかな装飾のアクセサリーが並んでいる。

 クレアは、珍しさからペンダントやアンクレットなどのアクセサリーを購入したみたい。


 あちこち見ていたら、スパイスも置いてあったので、何種類か購入することにした。

 フェルド村に帰ったときにでもカレーを作ってみよう。


 アクセサリーはちょっと派手過ぎる気がしてパス。

 クレアがリルファナと顔を合わせてニヤニヤしている。


 ……そうか、これが「お姉ちゃんは食べ物」と言われる所以ゆえんか。


 東区にも宿屋はあるけど、ガルディアに帰る前に商人ギルドに寄る必要がある。

 今日中に西区へ戻って、ギルドに寄ってしまうことにした。



 相変わらずハーミたちがうろうろしている街道を抜けて、西区の商人ギルドへと戻ってきた。

 雨が降っていることもあり、少し暗くなりはじめている。


「冒険者ギルドの紋章があるから、こっちかな」


 昨日とは違う側にある入口から商人ギルドへと入った。


「冒険者ギルドらしいですわね」

「そうだね。こっちの方がなんか落ち着く」


 なんだかんだと、わたしたちも冒険者としてなじんできた証拠だろう。


 依頼の貼られた掲示板や、窓口などが並んでいる。

 他の町と似たような冒険者ギルドらしい配置だ。


「すみません、依頼の報告をしたいのですが」


 窓口で、先ほど受け取った用紙とギルドカードを渡すと、素材の受取なので素材買取のカウンターに回ってくれと指示された。


 指示された通路を抜けると、素材買取カウンターがあった。

 皮や肉といった素材には、汚れや臭いが付いていることも多いので、ほとんどのギルドでは別の部屋や建物で素材を扱っている。


「はいはい。ああ、昼に東区で何かあったってやつか。倉庫から出してくるから待っててくれ」


 素材買取の受付に座っていた若い男性が、用紙を見て呟いた。

 後ろにある倉庫から2つの袋を持ってきた。


「スチールダイルの鱗と肉、翼猫ウイングキャットの翼、毛、牙だね。一応、確認していってくれ。不要品は買取も出来る、というよりギルドとしては売ってほしいな」


 翼猫ウイングキャットの肉は、食べられないので入っていないようだ。どうやって処理しても臭みが抜けないらしい。


 3人で確認したところ、品質は大丈夫。翼猫ウイングキャットの毛もしっかり束ねてあった。


 ワニの肉と翼猫ウイングキャットの翼は、持っていると腐っちゃう可能性があるから買い取ってもらうことにした。

 ラーゴの町としては珍しい素材らしいので、ギルドとしては鱗か牙が欲しかったのだろうけど、自分たちでも使えそうだからね。


 受付の男性には少し残念そうな顔をされたが、ここでは売らないと決めているのだ。


 ササっと用事を済ませて商人ギルドを出た。


「ミーナ様、その素材は何かに使いますの?」

「うーん、現金だとすぐ支払えないみたいだから、素材で受け取ったっていうのが1番の理由かな。縫製で何か作れなかったっけ?」

「一応、翼猫ウイングキャットの素材ならば使い道がありますの。ただ、今の装備だと強化には繋がらないものですわ」

「まあ、それで使ってみれば良いんじゃないかな。いらなければガルディアで売っちゃっても良いけど」


 あまり強い防具ではないのかな?

 一応、防具を作れるなら使い方はリルファナに任せよう。


 鱗の方は、スチールダイルの名前の通り、溶かして鋼にすることもできる。

 見た目はただの銀色のラメが入った鱗なので、鱗の部分はどうなったとちょっと不思議。


 ガルディアに戻ったあと、王都にも遊びに行くなら、月末まではマジックバッグの肥やしだ。


 雨がさらに強くなってきてしまった。

 新しい宿探しは諦め、近くにある昨日の宿屋にもう1泊することに決めた。


 明日はガルディアに向かって出発する予定だけど、雨が止まなかったらもう1泊かな?

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