表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
155/265

霧の枝 - ガルディア到着

 王都からガルディアへは見通しが良いので、ラミィさんの護衛やコアゼさんとの移動で大体の方向は覚えた。

 街道から少し外れて、発見した素材を採取しながら南下しガルディアへと戻る。


「通った時に気になったものもいくつかありましたわ」

「急ぎだったからね」


 コアゼさんとは急ぎだったので、気になった素材があっても採取している暇がなかった。

 そういう時に限って、意外と見つかりにくいものが目に付いたりするものだ。


 薬草など目に付いた素材を採取しながら、3日後の夕方にはガルディアに到着した。

 自生しているハーブや果物でもないかと思って探してみたけど、美味しく食べられそうなものは見つからなかったよ。


 リルファナは思っていたよりも色々と採取できたみたい。クレアも錬金術に使えそうな素材を集めていた。


 家の鍵も受け取る必要があるし、ついでに冒険者ギルドに寄って報告を済ませてしまおう。


 ギルドに入るとレダさんが受付にいた。こちらに気づいて手招きしている。


「おかえり。随分と早かったけど、どうだったさね?」

「魔物の方は大した強さじゃなかったです。倒し方さえ分かればアルフォスさんたちでも簡単に倒してましたし」

「そうかい、危険な魔物じゃなくて良かったよ」


 レダさんがほっと一息ついた。心配してくれていたようだ。


「他に何か面白いことはあったかい?」

「探索したところ、ヴァザカレード文明時代の遺跡だったようです」

「ほう。調査は王都の方でやるだろうけど、情報ぐらいは寄越すように言っておくかね」

「これが依頼完了の用紙です」

「ん……、満額で出ているってことは何かあったのかね」


 スケルトンの王の話はここですることでもないだろう。

 細かいことは夕飯のときにということで、依頼完了の手続きだけしてもらった。


 アルフォスさんからの報酬は白金貨1枚。


 これは大金貨で換算すると100枚となる。クレアとリルファナの預金に大金貨10枚ずつ回しておくことにした。

 まだ余裕もあるし、フェルド村に帰ったら少し家に入れておこう。


 帰り道で夕飯の材料を買って、レダさんの家に帰る。


「ちょっと疲れたよ」


 クレアが疲れたように椅子に座った。


「慣れない場所でしたし、迷宮ダンジョンみたいなものでしたわね」

「予定になかった遠出だったこともあるかもね。少し長めに休もうか」


 今回の報酬もあり、しばらく無理に依頼を受ける必要もない。

 緊急の依頼が無ければフェルド村から帰った後も、依頼を受けずに付近の町に遊びに行くのもありかもしれない。


「うん。6月は雨も降りやすいよね、お姉ちゃん」


 この辺りの気候は、6月半ばは雨が降りやすくなる。


「梅雨ですの?」

「うーん、そんなにずっと降るものでもないかな」

「リルファナちゃん、ツユって何? 雨期とは違うの?」


 そうか、梅雨は特有の言い方なので通じないのか。

 でも日本や地球の言葉でも通じる言葉もあるんだよね。何かしらの自動翻訳が働くのか、転生者プレイヤーが使っている間に意味が定着したのかのどちらかだろうけど。


「地域によって使う言葉が違うだけで、雨期のことですわ」

「そうなんだ」


 話を聞いてみると6月に雨が降りやすいのは、ヴァレコリーナ北部ぐらいまで。

 南西部に位置するラディス島では雨期は無かったそうだ。ソルジュプランテとヴァレコリーナの間には山が多いので、気候も少し変わるのだろう。


「レダさんも帰ってくるし、何か作ってくるね。クレアは休んでていいよ」

「うん。ありがとう、お姉ちゃん」

「わたくしはお茶を入れてきますわ」


 夕飯の準備に、地下に置いた冷蔵庫を開けると卵がまだ残っていた。

 トレンマ村で貰った卵で、そろそろ1ヶ月を過ぎている。ちゃんと火を通すなら冬場で2か月ぐらい大丈夫らしいけど、どうなんだろう。


 何個か割ってみたが変な臭いもしないし、わたしの調理スキルによると食べられる気がする。

 買ってきた豚肉とキュヴォロ(キャベツ)を使って、豚平焼き風にしよう。


 生地を薄く焼いて、豚肉を広げソースと一緒に乗せる。

 その後、溶き卵をかけて焼き上げれば完成だ。青のりやかつお節は家になかったので省略。


 リルファナは紅茶を入れると、クレアのいる隣の応接室へ持って行った。

 最近はソファがある応接室を居間にしているのだ。もちろんすぐ使えるようにあまり散らかさないように気を付けている。


 レダさんが帰ってきたので夕飯となった。

 テーブルに豚平焼きを並べる。


「聖王国のコノヤキに似ているけど、ちょっと違うさね」


 珍しそうにレダさんはお皿の上の料理を眺めていた。

 父さんも知っていたし、コノヤキ(お好み焼き)って結構有名なのかな?


「大きいスケルトン? 迷宮ダンジョンで見かけたって報告がたまにあるけど、見たことはないさね」

「大きい剣を両手に持っているのに、かなり素早くてお姉ちゃんでも苦戦してたよ」

「ほう。どう倒したんさね?」

「えっと、小屋みたいなところに誘導して……」


 クレアが倒した方法を説明すると、レダさんは楽しそうに聞いていた。


「洞窟内とは言え、あんな街道の近くに遺跡が埋まっていたなんてねえ」

「遺跡の状態も悪くなかったことを考えると、最初からあそこにあったと思いますわ」

「もしかしたら他にも遺跡が埋まってるかもしれませんね」


 位置としては、霧の枝のちょうど真ん中あたりだ。

 王の墓とはいえ、あんなところに墓だけを作るだろうか。近くに住居などがあってもおかしくはない。


「さて、ミーナちゃんたちは明日になったらフェルド村に帰るさね?」

「父さんとの約束もあるので、そのつもりです。ついでに少し長めに休もうかと」


 フェルド村にいても暇になりそうだし、数日でガルディアには戻ってくるつもりだけどね。

 もしかしたら、戻った後に周囲の町に遊びに行くかもしれないことも伝えておく。


「分かったさね。手紙の配達ぐらいは頼むかもしれないから、良ければ出かけるときにギルドに寄ってほしいさね」


 今日はレダさんも家で寝るようだ。

 やっと最近はギルドの仕事が落ち着いてきたみたい。



 ――翌日。


 母さんに渡す醤油を買い足してから町を出た。

 父さんが町で買ってるし、村で仕入れるようになるみたいだから、いらないかもしれないけど。そのときは自分で使おう。


 フェルド村の手前で森の中にウルフを見つけた。

 魔物除けの石柱があるとはいえ、通りがかりの人が襲われるため危険だ。念のため討伐して皮などを回収しておく。


 日が落ちる前にフェルド村に到着すると、先月作っていた倉庫が完成していた。

 2階建てで遠くからでもよく見えるので、醤油のための倉庫の割に大きいと思う。まだ出来たばかりのようで、壁に塗られた保護のための透明な塗料がぴかぴかと反射している。


「大きいね、お姉ちゃん」

「うん、どうせだから醤油以外も色々置けるようにしたのかな?」

「あら、野菜を積んだ荷車が入っていきましたわ」


 多分、農家で採れた野菜なども倉庫に置いておくようにしたのだろう。

 今までは収穫した野菜は各農家で管理していた。しかし、複数の野菜の収穫が重なる時期は、自宅だけでは置いておけない家などもあって、周囲の家に頼んだりと面倒だったはずだ。


 少しだけ変わった村の風景を眺めながら家に入る。


「あ、お母さん、ただいま」


 母さんが夕飯の準備をしていた。父さんは見当たらない。


「あら、お帰り。聞いていたより早かったわね」

「思ったよりすぐ帰って来れたんだよ」


 作る量を増やさないといけなくなったので、母さんは棚から野菜を出し始めた。

 こういうときに電話とかがあれば予め連絡しておけるんだけどな。


 クレアは手伝うつもりのようで、手を洗っている。


「おう、早くても来週かと思ってたけど、もう帰ってたのか。……これだと足らないな、もう1回行ってくるか」

「手伝うよ」


 父さんも戻ってきた。両手にコメの実を抱えているので収穫してきたようだ。

 わたしたちの分も必要となってしまったので、もう1度採りに行くようだ。わたしも手伝いに一緒に畑に出ることにする。


「ミーナがいるならついでにいくつか収穫してしまうか」

「なら、わたくしもお手伝いしますわ」


 雨期の前に収穫したいものも多いようで、今日の夕飯はいつもより豪華になりそうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ